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第三十九羽 危険が危ない
しおりを挟むさて。なんとかゴブリンを殲滅することができましたが、私は新たな危機を迎えていました。
「きゅい!」
「ミ、ミルさ~ん?」
なぜかこちらにプルプルとにじり寄ってくるスライムである。……なんでこっち来るんですか?
嫌な予感がびしばしするなか、ミルにヘルプを送ってみるものの未だ最後のゴブリンとの戦いを繰り広げているようで、返事は帰ってきません。……ホントだったら私が助けに行かないといけないんですけどね。
……そうだ、念話です! 念話があれば、意思疎通がでいるはず……!!
『あー、あー、もしもし? 聞こえていますか?』
『わ! 聞こえるよ!』
上手く行ったみたいです。良かった。
『あなたはだあれ?』
『私は目の前に居る人です』
『人?』
そこで怪訝そうな思念が帰ってきた。私が魔物だとわかっているのでしょうか? それで接触を図ったとか?
しかし私の推測は全く無意味なものだった。
『あなたはわたしといっしょのスライムでしょ?』
……なぜに?
『いえ、違いますよ? 少なくともスライムではありません』
『ウソだっ!!』
力強い否定だった。私はとても困惑した。
『……ええ? なんでそう思うんですか?』
『だってそんなに遊んで欲しそうに誘ってるじゃん!』
『……????』
全く意味がわからない。もしかして念話でも意思疎通は無理だったのでしょうか……。種族の間に横たわる巨大な壁に悲しみを感じている間にも、スライムはにじり寄ってきていた。
『あの……ここは危ないので離れましょう? それとこっち来ないで?』
お願いですから。
『ふふふ、それなら誘うのを止めるんだね! 言葉だけでは説得力無いよ!』
『そもそも遊んでと誘ってませんよ!』
まるで獲物の反応を楽しむようにジリジリと近寄ってくるスライムに焦燥感が募る。
「ミ、ミルさ~ん?」
まだダメみたいですね……。
こうなっては仕方がありませんので、魔法でどっかに行って貰おうと思います。風で吹き飛ばせば、ヨシ!
そう思って腕を突き出した所で今日一番の波がお腹を襲った。
「!!?!?」
こ、これはマズい……!! 今魔法を使うと……弾けます!!
私がそんな絶体絶命の状態に陥ってもスライムは通常運転で。
『ふふふー、行くぞー』
『い、今はホントにマズいので! 止めてください!?』
『嫌よ嫌よも好きのうち!』
『あなた本当にスライムですか!?』
実はおっさんが入ったりしていません!? 届く思念はかわいらしいものなのに、思考が非常におっさんくさい。嬉しくないギャップが酷すぎる。
あー!? マズいですマズいです! スライムが体をたわませて飛びかかろうとしています! 対して私は動けない。大ピンチです!
「フ、フーちゃん!! お願い!!」
最後の頼みの綱に願いを託せば、大きな風が一条吹きすさびました。良かった! 居てくれた!
『わーー』
「――――♪」
飛びかかってきたスライムは風に攫われて、楽しそうに吹き飛んでいってしまった。なんとか胸をなで下ろしていると、それが楽しそうに見えたのかフーちゃんも着いていったのが見えました。……まあ不安ですが、さすがにもう変なのが来ることはないでしょう。
そう考えて視線を下に下ろしたところで、何かがポヨポヨ動いていたのが見えた。
……デ、デジャブ。
『む、なにやつ』
「こちらの台詞ですが……?」
顔らしき場所にバッテンの切り傷を残して、葉の着いた枝を咥えたスライムが油断なくこちらを見つめていた。なんだか……歴戦そう……。
危機はまだ終わらない。
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