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第16羽 生態系
しおりを挟む翼竜の現在位置は、魚の飛びつきがギリギリ届かないであろう高度。
対する私は丁度中間の位置。下の水面と上の翼竜から半分。私が思う丁度良い場所です。
――来た!!
水面に薄らと影が浮かび上がり、それが急速に成長する。私はそれに対処するため、微妙に位置を調整します。
そして水面が膨張し、遂に弾丸が飛び出した。
――まだ、避けない。
今までだったら既に回避行動を取っているような距離。それでもまだ動かない。
引き付けて、引き付けて……。
――ここ!!!
眼前まで迫った魚。巨大さからの質量と速度で以て生み出されるシンプルで強力な暴力。
それを今度は避けるでも受け流すでも無く、受け止める。
私を喰らわんと迫り来る口からはなんとか逃れ、額に着地。
瞬間、全身がバラバラになりそうな衝撃が。
――グ……ゥっ!!、キツ……い……!!
全身が軋む。受け止めた足はへし折れそうだ。でも、上手く行った。飛び上がってきた魚と一緒になって、ぐんぐん昇っていく。
心が折れそうになる苦痛に自身を叱責し、魚を蹴り飛ばして更に加速する。
直線上には――翼竜。
ここに来て狙いが自分だとわかったのでしょう。あわてたように今更対処しようとしていますが……、遅いです。
全身で受け止めたエネルギーと共に翼竜を見据え鬼気を解放する。
――【崩鬼星】!!!
踏み台にした魚のエネルギーと鬼の力が炸裂する。
翼竜の脇腹へとたたき込まれたそれは、しかし芯を捕らえることはなく、弾き飛ばしてクルクルと横に吹き飛ばしていく。
倒せてはいない。それでも
――上は取った!!
上を陣取っている私にブレスを吐くためにはホバリングしなければ無理です。今までのように高速で飛行しながらの攻撃は、首を無理矢理上に向けなければならないためです。そんな飛び方では速度なんてたかが知れています。
チャンスです。このまま押し込みます。
意図しない急回転で目を回したのか頭を左右に振っている翼竜に一気に接近する。
現状こちらに気づいた遠きの対処方法は絞られます。無理矢理上を向いてブレスで迎撃を狙うか……。
今の様に尻尾での迎撃か。
――【狼刈】!!
狼の強襲の如き三連蹴りが翼竜を捕らえる。
尾の切断力などものともせず一撃目で尾の攻撃を弱め、二撃目ではじき返し、最後の一撃で今度こそ撃墜せしめる。
驚愕の鳴き声と共に墜ちていく翼竜は、しかし健在だった。大きなダメージは負っただろう。
それでもすぐさま体勢を立て直し、自らを叩き落とした不届き者を睨み付けている。流石は竜と言ったところでしょうか。
だが、それは魚には関係がなかったようですね。
自らの手の届く範囲に入ったものに貪欲に喰らいつこうと翼竜にさえ身を躍らせる。
翼竜も咄嗟に避けようとするが、やはり間に合わない。
片翼に食いつかれ、重力に引かれて落ちていく。
まだ目が死んでいない翼竜は首を回しブレスを放った。一回二回三回と、遂に耐えきれなくなったのか魚が口を離し、水に引き込まれることは防ぐことができた。
この魚、恐らく火球は弱点です。かなりの防御性能があるのに翼竜が火球を打ち出しているときは水中から出てきませんでした。単純に余計なダメージを避けていたのかも知れなかったですが、反応を見るにどうやら火が苦手で正解だったようです。
なんとか生き残った翼竜。
だがその姿はボロボロだった。咬まれた方の翼膜には無数の穴が開き、飛び方は不格好。
骨にもダメージがあるのかも知れません。
――これならスピードでは、もう負けていない。
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