上 下
13 / 35

自己紹介

しおりを挟む
「いい加減にしなさい!パンが来てくれなかったら危なかったのよ!」レオは腕を組み、両足を肩幅に開いて立っていた。 

 レオの目の前で二人は正座の姿勢で、少しうつむき加減で座っている。祐樹とパンはベッドの上に腰を下ろして座っていた。

「すまん!あまりにもこの漫画が面白かったから、つい・・・・・・」青い服を着た、ダンという少女が手を目の前で合わせて言い訳をした。ボーイシュな声、口調が男のようだった。その手には祐樹の秘蔵の漫画本が握られていた。

「同じく、ゲームが面白かったので・・・・・・ 」白い服の少女は、ソラという名前だそうだ。彼女は言葉には感情がこもっていない。

「まさか、レオが負けそうになるなんて思わなかったから・・・・・・」ダンが小さな声で呟く。その目は部屋の隅に向けられている。

「それは、その油断したのよ・・・・・・!」レオは珍しく恥ずかしそうに顔を赤らめた。腕組みをして天井を見上げている。

「ちょっと、いいかな?」祐樹は状況が理解出来なくて質問をした。

「いいぜ!」ダンが自分の立場をわきまえずに返答する。レオがキッとダンを睨みつける。ダンは視線を逸らして口笛を吹いた。

「彼女達も、レオと同じガイダーなのか?」

「ええ、彼女達の名前はパン、ダン、ソラ。 私と同じガイダーです。私達四人で貴方をお守りします」流暢な口調でレオがガイダー達の紹介を始めた。

「貴方が、シンクロする時に私達の名前を呼ぶと、色々な能力を持ったメタルガイダーに変身する事が可能となります。それぞれの特性を考慮して、貴方が選択してください」

「特性って・・・・・・?」祐樹は素直に思った疑問をレオにぶつけた。

「私とパンの特性は既にご存知の通りです。ダンはスピードを強化します。彼女の武器は銃です」レオの説明が一息つく。
 ダンは右手で拳銃のような形を創り祐樹に向かって「パーン!」とウインクをしながら銃を撃つ真似をした。

「ソラは念動力を発揮します。彼女とシンクロすると不思議な力が使えます」ソラは両手の平を上に向けて少しだけニコっと微笑んだ。彼女は幸が薄そうな感じであった。

「どうも・・・・・・ 」祐樹は頭に手を添えるとペコリと頭を下げた。

「私達は、生まれた時からガイダー候補として教育されてきました。その中で特性・体力・行動力が優秀な四人が選ばれ、地球に来ると同時に、過去の記憶は消去されて、コア・・・・・・、祐樹さんへの忠誠を植え付けられました。私達の存在意義は貴方を守り続けること。私達の命に代えても、貴方を守ります」ガイダー達が祐樹の目の前に膝まずいた。

「貴方に私達の命を捧げます」彼女達は呟いた。

「そんな事が・・・・・・ 」祐樹は唐突な話に驚きを隠せない様子であった。

 部屋の外から、バタバタバタと駆け足が聞こえる。
 祐樹の頭に少し嫌な予感が過った。
「祐ちゃん・・・・・・!」奈緒がいきなりドアを開けた。その光景を見て奈緒は唖然とした。

「・・・・・・ 」少しの沈黙が続いた。

「いや、奈緒これには訳が・・・・・・! 」言った瞬間、祐樹の顔が奈緒の足に踏みつけられていた。

「ここはハーレムか!」奈緒はグリグリと足をひねる。その顔は歯を食いしばり怒りを堪えているようであった。

「奈緒、パ、パンツが・・・・・・」祐樹の視線の先で奈緒の下着が丸見えになっていた。踏まれながらも祐樹の顔が真っ赤に染まる。

「うるさいわ~!」奈緒は躊躇せずに顔を踏み続ける。

「ご主人様!」パンが祐樹のそばに駆け寄る。パンの勢いに驚いて奈緒は祐樹の顔から足を退けた。祐樹は踏みつけられたゴキブリのようにピクピクしている。しばらくしてから、祐樹は起き上がった。

「だいりょうぶ、だいりょうぶ!」祐樹は顔をさすりながらパンに答えた。

「ご主人様って・・・・・!祐樹、この人達は一体なんなの?」少女達を順番に見回す。   
 赤、青、黄、白と部屋の中はカラフルな色合いになっている。また、少女達それぞれが魅力的で、まるでテレビのアイドルが祐樹の部屋を占拠しているのかと奈緒は思った。こんな可愛い娘ばかりをよく集めたものだとすこし感心にも似た感覚に襲われる。

「この人達は・・・・・・、親戚のお姉さん達なんだ」祐樹が思いついたように言い放った。祐樹は鼻の辺りをさすっている。鼻血は出てない様子であった。

「親戚?そんなの聞いたこと無かったわよ・・・・・・ 」奈緒は不審な顔をした。

「母さんが亡くなったから、俺の面倒を皆で見てくれることになったんだよ」祐樹は少し斜め上を見つめた。

「でも、さっきその子は、祐樹のことを『ご主人さま』って言っていたわよ」奈緒は口を尖らしている。

「奈緒の聞き間違いだよ・・・・・・なっ、パンちゃん」ウインクをして、パンに合図を送る。

「はい! ご主人様!・・・・・・あっ!」ダンがスリッパでパンの頭を軽く叩いた。

「ほら、言った!」パンを指差して奈緒は祐樹に詰め寄る。

「いや・・・・・・、昔遊びで、ふざけてメイドごっこしてパンちゃんが僕のことを、『ご主人様!』っていっていたのが癖になっているんだよ! なっ、パンちゃん」

「はい!ご主人様!」もう一度、ダンがパンの頭を叩いた。祐樹の頭の中にメイド姿のパンが微笑む。少し祐樹の鼻の下が伸びた。

「う、うん!」レオが軽く咳払いをした。その途端、祐樹は現実に引き戻される。

「どえらい、マニアックな遊びを子供の頃からしてたのね・・・・・・、まあ、こんな綺麗なお姉さん達と、メイドごっこや、お医者さんごっこしたら、それは楽しかったでしょうね!」

「いや・・・・・お医者さんごっこは・・・・・・」祐樹が否定すると、奈緒は更に激しく睨みつけた。

「・・・・・・ご紹介をして頂いても良いですか? 」レオが終わらない漫才に業を煮やして、口をはさんだ。

「あぁ、御免、こちらは篠原 奈緒。隣に住んでいる僕の幼馴染だ」祐樹の言葉に合わせて、奈緒は軽くお辞儀をした。

「奈緒です。ヨロシクお願いします」少し仰々しい感じがした。

「こちらが、レオ・・・・・さん。・・・・・・一つ上のお姉さんだ」なんとなくレオはお姉さんキャラかなと祐樹は常々思っていた。

「この子がパンちゃん。中学生で妹みたいな感じかな」頬をかきながら祐樹は続けた。適当に設定を頭の中で考えながら紹介をする。

「妹みたいだなんて、ご主人様・・・・・・」パンは頬を赤らめて喜んでいるようだった。 ダンがパンの頭を叩いた。なんだかダンはスリッパがお気に召したようであった。

「それと、こちらがダンさんとソラさん。僕らと同じ歳だ」

「なに、俺達の紹介は適当だな! 」そう言ったのはダン。やはり口調が男のようだった。

「別に、どうでも良いんじゃないの・・・・・・ 」ソラは、相変わらず起伏の無い声で呟いた。

「なんか、祐ちゃんの世界は薔薇色って感じだね・・・・・・ 」少し頬を膨らませて奈緒はムッとしているようだった。奈緒は、今までライバルの存在を意識したことは無い。小さい時から自分だけが祐樹の事を見続けてきたとの自負が奈緒にはあった。
 それが今晩、音を立て崩れていったような気持ちになった。

「皆さん、学校はどうしているのですか? 」奈緒は何気なく疑問を口にした。パンという少女は中学生だから仕方がないが、学校で彼女達の姿を見たことは一度も無い。こんな美女達が学校にいれば知らない訳が無い。

「俺達、学校は・・・・・・ 」ダンがそこまで言ったところで、祐樹が遮るように言い出した。

「あぁ、レオさん達は西高とは違う学校なんだよ! 今は、俺の面倒を見てくれる為に、休学してくれたんだよ」取って付けたような説明だと祐樹は自分で思った。

「中学生も・・・・・・?」奈緒はさり気なく、パンの方に目を送った。パンは、何のことだろうとキョトンとしている。

「なっ、なんだよ」しくじったと祐樹は思った。さすがに、中学生が親戚の不幸の為とはいえ、長期休日を取るのは無理がある。祐樹は少しあたふたとした。

「パンは、アメリカの学校で日本の大学相当の教育課程は既に修了していますので、本当は学校に通う必要がないのです。私達より、彼女のほうが優秀なのです」レオが本当か嘘か解らないような説明をした。なんだかパンが誇らしげに胸を張っているように見える。分かっているのかどうかは疑問であった。

「ふ~ん、そうなんだ・・・・・・」鋭い視線で奈緒が祐樹を睨んだ。あからさまに疑っていますというオーラを発している。

「・・・・・・奈緒は、何しに来たんだよ! 」この話題を変えようと祐樹は口を開く。

「あっ、そうそう、大島神社に、パトカーがいっぱい来ていたから、祐樹の家は大丈夫かと思って・・・・・・」まさか、その原因が目の前にいるとは、奈緒は全く考えてはいない。

「奈緒・・・・・・、ありがとな!」自分の事を心配してくれた事を知ると、少し奈緒の事が愛おしく感じた。

「いいよ、別に・・・・・・、私は帰るけど、変なことしては駄目よ!」腕組みをしながら、奈緒は少し顔を赤らめていた。

「なんだよ、変なことって?」祐樹は奈緒の言っている意味がよく理解できない様子であった。

「その様子なら、大丈夫かな・・・・・・ レオさん、祐ちゃんをお願いしますね」奈緒はレオに向かってペコリと頭を下げた。レオが一番信頼出来ると思ったようだ。

「はい、お任せください」レオはニコリと微笑んだ。

「じゃあね」そう言うと奈緒は祐樹の部屋を退出して家に帰っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

処理中です...