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母の死

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 祐樹の母、小松原 真紀の葬儀がしめやかに行われていた。雨の強い一日であった。

 祭壇の上に飾られた真紀の写真は満面の笑顔であった。
 真紀が死んでしまった事を祐樹は今も受け入れられないでいた。

 真紀は変質者により胸を鋭利な刃物で貫かれて即死したことになっていた。そのまま、外に飛び出した変質者はたまたま近くにいた女子学生の腹部を切りつけて姿を消した。目撃者の証言によると変質者は真っ赤な服とヘルメット手には刀を持っていたそうだ。
 真紀と黒岩 瑤子を殺害した犯人が、自分になっていた。
 祐樹は複雑な思いに気が動転していた。

 親戚達が、その様子を見て気をしっかり持つようにと声をかけてくれる。 ただその言葉には、本当に心配してくれている思いは感じられない。 
 身寄りのなくなった高校生の面倒を見るのか親戚で押し付け合いをしているようだ。
 親戚の腫物を扱うような態度に祐樹はウンザリしていた。

 祐樹は無言で立ち上がる。

「祐樹!」親戚の男性が名前を呼ぶ。

「・・・・・・ 大丈夫、トイレに行くだけだから」そう告げると祐樹は部屋から出た。
 葬儀場の庭にある大木に手を添えて体を支えていた。雨は降り止まない。
 背中をもたれかけるようにして、体重を大木に預けると祐樹は右腕で両目を覆い気持ちを落ち着けようと試みた。

「祐ちゃん・・・・・・」声がした方向に祐樹が振り返ると目を潤ませた奈緒が立っていた。

「やぁ・・・・・・」力の無い返答で祐樹は答えた。 無理をして少し笑顔を見せた。
奈緒は祐樹に抱きついた。

「奈緒・・・・・・? 」

「おばさんが・・・・・・」奈緒は祐樹の胸に顔を埋めて泣き出した。
 奈緒の肩が震え今にも壊れそうな感じに思えた。

「奈緒・・・・・・ 」祐樹は大木を見上げた。雨は一段と激しさを増した。

 降りしきる雨が祐樹の頬から流れ落ちた。
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