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世界中の誰よりも

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 彼女は暗くなった病院の広場から光の病室を見つめていた。毎日忙しい日々に追われているが時間の空いた時には無意識に自然とこの場所へやってきてしまう。

 ここにいると時間を忘れてしまい光への想いが強くなっていってしまう自分がいる事を彼女は自覚している。

 事故の後遺症で苦しんでいる光の側にいたい気持ちはあるのだが彼が目を覚ました時に自分は一体どんな顔をしていればいいのかを考えると切なさで胸が張り裂けそうになってしまう。
 彼が事故にあって意識不明と聞いた時は、この世の終わりではないのかというほど彼女は動揺してしまった。 

 やはり自分は光の事が誰よりも好きなのだ。彼の事を愛していると言うことをいやというほど思い知らされる結果となってしまった。
 でも、彼女の事を思うと自分の気持ちを素直に表に出すことなど出来なかった。
 
 しばらく茫然とした状態で光の部屋を見つめていると雨がポツポツと降りだしてきた。
 空から降る雨が少女のその頬を濡らしていく、その中に一人立ち尽くす彼女の涙もまるで誘発されるように溢れ出てきた。
 
 突然、雨が止んだかと思うと視線に赤い物が現れる。
 それは彼女の頭上を覆った赤い傘であった。
 
「酷でえな!お兄ちゃんが大怪我をして入院してるんだからたまには見舞いに来いよ。妹!」その声は穂乃花が何度も夢に見ていた光の声であった。
 
「・・・・・・」穂乃花の両面から滝のように涙が溢れ出す。それを誤魔化すかのように彼の胸に額を預けた。

「えっ、どうしたんだ・・・・・・」なにか憎まれ口でも言い返してくることを予測していた光は彼女の行動に驚いた。

「私・・・・・・、本当に心配したんだ。心配していたんだよ。光君が死んじゃたらどうしようかって・・・・・・」声が震えている。
 
「有難う……、俺は大丈夫だよ。もう普通に生活出来るくらいに回復してきた。それに俺はお前の事も忘れてないしな・・・・・」ちょっとだけ皮肉っぽく彼はつぶやいた。その言葉を口にした光の体に穂乃花が抱きついた。突然の事に光は驚きの表情を見せた。
 
「本当は私だって光君の事を忘れた時なんてなかった・・・・・・。ずっと好きだった。ずっと苦しかった。ずっと一緒に居たかった!」穂乃果は目を瞑り光の唇に自分の唇を重ねた。
 
「そんな事は解かっていたさ・・・・・・・、お前の気持ちも、お前が俺の事を忘れる筈がない事も・・・・・・、俺は穂乃花の事が大好きだ。世界中の誰よりも穂乃花の事を愛している!」そのまま二人は熱い包容を交わした。
 
「うれしい・・・・・・私も大好き!でも・・・・・・」穂乃花の顔が唐突に真顔になる。
 
「でも・・・・・・?」光は何を言われるのか予測不可能だった。
 
「やっぱり、お前って言うな・・・・・・!」彼女はあのCM以上の笑顔を見せた。 
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