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どうして、出会ってしまったの?
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なんだか教室で騒ぐ同級生の中にいることが辛くなり光は校舎の屋上に移動する。
学校の屋上の鍵が解放されている事をしっている生徒は少ない。この場所は一部の生徒の間では穴場のようになっている。
他の生徒に出来るだけ気づかれないようにして階段を上がりドアを開ける。ドアを開いた瞬間に突風のような風が吹き込んで来て光は目を細める。
「きゃあ」突然の女の子の悲鳴が聞こえるので声の方向へ視線を向ける。そこには風に翻るスカートを押さえる穂乃花の姿があった。
「ラッキー」少しわざとらしくおどけた様子で光ははしゃいでみせた。
「面白くないわよ……バカ」穂乃花は、言葉とおり少しバカにしたようにいう。風は収まったようで乱れた髪を軽く整える。
「バカっていうな……」光は金網に手をかけて校舎の下を覗き込む。生徒達が楽しそうに遊んでいる。皆、普通に学生生活をエンジョイし、普通に遊び、普通に恋をしているのだろうなと考えていた。
友伽里は昨日聞いた光と穂乃花の噂が気になって何も手に付かない状態であった。光と同じくとても教室で友達と会話をする気持ちになれなかった。彼女も屋上で時間を潰そうと階段を上がりドアを開けようとドアノブに手をかける。そこで何やら聞き覚えのある男女が話をする声が聞こえた。
(これは光君と……渡辺さん?)彼女はドアに耳を当てて盗み聞きするような形になってしまった。
「俺さ、昨日の件で気がついたんだ……、俺は穂乃花の事が好きなんだ。きっと初めて出会った時からずっと好きだったんだと思う」
友伽里はその光の言葉を聞いて顔面蒼白になる。
「それは私も同じ……、私も貴方の事が好きよ……、でも……」穂乃花は泣き出しそうな雰囲気であった。
「それなら、いっそ二人で……、誰も知らない所へ……逃げよう!」光は穂乃花の両肩を強く握りしめた。
(いや!いや!いや!聞きたくない!私はこんな話を聞きたくない!)友伽里は大粒の涙を両目に溜めながら階段をかけ降りていった。
「その場の感情でそんな事を言わないで……、そんな事出来る訳ないじゃない……。貴方の……、お母さんも悲しむわ」穂乃花は光の腕を振り払った。
「なら、どうすればいいんだ!俺のこの気持ちは!?」光はフェンスを何度も両拳で叩いた。
「私だって、貴方と一緒に……、でもそれは無理なのよ……」穂乃花はその言葉を残すと屋上を後にした。
「畜生!!」光はもう一度フェンスを思いっきり殴った。
穂乃花両目の涙を誰にも気づかれないように制服の袖で拭った。光の言う通りに二人で何処かに逃げられるなら逃げたい。その気持ちは彼女も一緒であった。でも、それは無理な事。経済力も何の力も無い自分達にそんな事が出来る訳がないし、ましてや世間がそれを許さないであろう。
それを解っていてあんな事を口にした光に対しての怒りも少しあった。
(どうして私達は出会ってしまったのだろう……)彼女は運命というものを少し呪った。
階段の上で少し考えを巡らせていると、突然誰かに背中を押される。
「えっ?」そのまま穂乃花の体は勢いよく階段の下まで勢いよく転がり落ちた。
「キャー!」女子生徒達の悲鳴が響き渡る。
「おい!大丈夫か!せ、先生を呼べ!早く!」近くにいた男子生徒数人が駆け寄り穂乃花の体を抱き上げる。
その頭から大量の血液が流れ出ており、彼女の意識はなかった。
男子生徒が、彼女が転がり落ちてきた階段の上を見上げると、そこには魂の抜けたような顔をした友伽里の姿があった。
学校の屋上の鍵が解放されている事をしっている生徒は少ない。この場所は一部の生徒の間では穴場のようになっている。
他の生徒に出来るだけ気づかれないようにして階段を上がりドアを開ける。ドアを開いた瞬間に突風のような風が吹き込んで来て光は目を細める。
「きゃあ」突然の女の子の悲鳴が聞こえるので声の方向へ視線を向ける。そこには風に翻るスカートを押さえる穂乃花の姿があった。
「ラッキー」少しわざとらしくおどけた様子で光ははしゃいでみせた。
「面白くないわよ……バカ」穂乃花は、言葉とおり少しバカにしたようにいう。風は収まったようで乱れた髪を軽く整える。
「バカっていうな……」光は金網に手をかけて校舎の下を覗き込む。生徒達が楽しそうに遊んでいる。皆、普通に学生生活をエンジョイし、普通に遊び、普通に恋をしているのだろうなと考えていた。
友伽里は昨日聞いた光と穂乃花の噂が気になって何も手に付かない状態であった。光と同じくとても教室で友達と会話をする気持ちになれなかった。彼女も屋上で時間を潰そうと階段を上がりドアを開けようとドアノブに手をかける。そこで何やら聞き覚えのある男女が話をする声が聞こえた。
(これは光君と……渡辺さん?)彼女はドアに耳を当てて盗み聞きするような形になってしまった。
「俺さ、昨日の件で気がついたんだ……、俺は穂乃花の事が好きなんだ。きっと初めて出会った時からずっと好きだったんだと思う」
友伽里はその光の言葉を聞いて顔面蒼白になる。
「それは私も同じ……、私も貴方の事が好きよ……、でも……」穂乃花は泣き出しそうな雰囲気であった。
「それなら、いっそ二人で……、誰も知らない所へ……逃げよう!」光は穂乃花の両肩を強く握りしめた。
(いや!いや!いや!聞きたくない!私はこんな話を聞きたくない!)友伽里は大粒の涙を両目に溜めながら階段をかけ降りていった。
「その場の感情でそんな事を言わないで……、そんな事出来る訳ないじゃない……。貴方の……、お母さんも悲しむわ」穂乃花は光の腕を振り払った。
「なら、どうすればいいんだ!俺のこの気持ちは!?」光はフェンスを何度も両拳で叩いた。
「私だって、貴方と一緒に……、でもそれは無理なのよ……」穂乃花はその言葉を残すと屋上を後にした。
「畜生!!」光はもう一度フェンスを思いっきり殴った。
穂乃花両目の涙を誰にも気づかれないように制服の袖で拭った。光の言う通りに二人で何処かに逃げられるなら逃げたい。その気持ちは彼女も一緒であった。でも、それは無理な事。経済力も何の力も無い自分達にそんな事が出来る訳がないし、ましてや世間がそれを許さないであろう。
それを解っていてあんな事を口にした光に対しての怒りも少しあった。
(どうして私達は出会ってしまったのだろう……)彼女は運命というものを少し呪った。
階段の上で少し考えを巡らせていると、突然誰かに背中を押される。
「えっ?」そのまま穂乃花の体は勢いよく階段の下まで勢いよく転がり落ちた。
「キャー!」女子生徒達の悲鳴が響き渡る。
「おい!大丈夫か!せ、先生を呼べ!早く!」近くにいた男子生徒数人が駆け寄り穂乃花の体を抱き上げる。
その頭から大量の血液が流れ出ており、彼女の意識はなかった。
男子生徒が、彼女が転がり落ちてきた階段の上を見上げると、そこには魂の抜けたような顔をした友伽里の姿があった。
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