31 / 58
美味しいね
しおりを挟む
約束の土曜日。
川沿いの大きな公園でCMの撮影が始まった。撮影の様子を見ようとたくさんのギャラリーが集まっている。それも俺達と同学年位から中年位の女性ばかり、男性は皆無であった。それもその筈、今回のCM撮影で穂乃花の相手を務めるのは、アイドル事務所アニーズの白鳥純一であった。
彼を一目見ようと女性の皆さん必死の形相であった。
「あのオッサン仕組みやがったな!」アニーズの白川と云えば芸能界音痴の俺でも知っているスーパーアイドルである。その相手役に二世と言えども全く無名の新人がキャスティングされるなど考えにくい。こんな大物と仕事が出来れば穂乃花の気持ちが変わるだろうと思ったのであろう。
が、しかし……、穂乃花は白川には全く興味の無い様子であった。明らかに素人の俺が見てもやる気の無い演技。現場のスタッフもヤキモキしている、大物俳優である渡辺直人の一人娘でなければ、早々にキャスティングの変更になっているであろう。何度もNGを重ねて、時間が押したまま昼に突入した。
空気を変える為にと昼食を取り、一時間ほどの休憩を取る事になった。
「お前、明らかにやる気のないだろう」俺の分まで弁当が用意されていた。なかなかボリュームのある豪華な弁当である。
「お前って言うな。だって面白くないんだもの……」穂乃花は箸を口に咥えて拗ねたような顔をした。CMの時よりよっぽどいい表情をしている。
「もう少し撮影あるんだよな。なんだか長くなりそうだな……」正直いえばCMの撮影など簡単に終わりすぐに帰れるものだと高をくくっていたのだが、こんなに大変な物とは思っていなかった。
「このだし巻き美味しいね」穂乃花は呑気に弁当の味を堪能している。
それに反比例するように、周りのスタッフ達の顔は曇りに曇りきっていた。
川沿いの大きな公園でCMの撮影が始まった。撮影の様子を見ようとたくさんのギャラリーが集まっている。それも俺達と同学年位から中年位の女性ばかり、男性は皆無であった。それもその筈、今回のCM撮影で穂乃花の相手を務めるのは、アイドル事務所アニーズの白鳥純一であった。
彼を一目見ようと女性の皆さん必死の形相であった。
「あのオッサン仕組みやがったな!」アニーズの白川と云えば芸能界音痴の俺でも知っているスーパーアイドルである。その相手役に二世と言えども全く無名の新人がキャスティングされるなど考えにくい。こんな大物と仕事が出来れば穂乃花の気持ちが変わるだろうと思ったのであろう。
が、しかし……、穂乃花は白川には全く興味の無い様子であった。明らかに素人の俺が見てもやる気の無い演技。現場のスタッフもヤキモキしている、大物俳優である渡辺直人の一人娘でなければ、早々にキャスティングの変更になっているであろう。何度もNGを重ねて、時間が押したまま昼に突入した。
空気を変える為にと昼食を取り、一時間ほどの休憩を取る事になった。
「お前、明らかにやる気のないだろう」俺の分まで弁当が用意されていた。なかなかボリュームのある豪華な弁当である。
「お前って言うな。だって面白くないんだもの……」穂乃花は箸を口に咥えて拗ねたような顔をした。CMの時よりよっぽどいい表情をしている。
「もう少し撮影あるんだよな。なんだか長くなりそうだな……」正直いえばCMの撮影など簡単に終わりすぐに帰れるものだと高をくくっていたのだが、こんなに大変な物とは思っていなかった。
「このだし巻き美味しいね」穂乃花は呑気に弁当の味を堪能している。
それに反比例するように、周りのスタッフ達の顔は曇りに曇りきっていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜
湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」
「はっ?」
突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。
しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。
モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!?
素性がバレる訳にはいかない。絶対に……
自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。
果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
学園の人気者のあいつは幼馴染で……元カノ
ナックルボーラー
恋愛
容姿端麗で文武両道、クラスの輪の中心に立ち、笑顔を浮かばす学園の人気者、渡口光。
そんな人気者の光と幼稚園からの付き合いがある幼馴染の男子、古坂太陽。
太陽は幼少の頃から光に好意を抱いていたが、容姿も成績も平凡で特出して良い所がない太陽とでは雲泥の差から友達以上の進展はなかった。
だが、友達のままでは後悔すると思い立った太陽は、中学3年の春に勇気を振り絞り光へと告白。
彼女はそれを笑う事なく、真摯に受け止め、笑顔で受け入れ、晴れて二人は恋人の関係となった。
毎日が楽しかった。
平凡で代わり映えしない毎日だったが、この小さな幸せが永遠に続けばいい……太陽はそう思っていた。
だが、その幸せが彼らが中学を卒業する卒業式の日に突然と告げられる。
「……太陽……別れよ、私たち」
前にあるサイトで二次創作として書いていた作品ですが、オリジナルとして投稿します。
こちらの作品は、小説家になろう、ハーメルン、ノベルバの方でも掲載しております。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる