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10-15 契り(二)**

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 彼女の了承を得た彼はそっと優しく口付ける。そして彼女の太腿を広げ足を開かせると、濡れそぼったその中へと自身を挿入していく。
 はっきりとその形を感じさせるように埋めていけば、セーリスはぞくぞくと背筋を何かが駆け上がってくるような気がする。すっかりと互いに馴染んだ身体はそれだけで快楽を発して、つながった場所を更に溶かしていくようだった。


「は……セーリス様の中、ほんと……もう俺のにぴったりですね」


 こつんと先端が最奥に達したところで、きゅうっと中がうねる。我慢し切れないとでもいいたげな感触にヘニルは意地悪く笑うと、彼女の耳元に唇を寄せる。


「もう欲しいなんて、すけべなんですから」
「ちが、う……!」
「違わないでしょ?」


 中に収めていたものを彼は引き抜いていく。ずるずると絡まった内壁が剥がれていくのが愛おしくて、抜きかけたところでまた一気に奥まで押し込む。


「俺とのえっち、好きって言ってくださいよ、セーリス様」
「んぅっ、……こ、の……へんたい」
「変態じゃないですぅ、健全な年頃の男子ですぅ」


 その返しにセーリスはくすくすと笑ってヘニルに抱きつく。彼の腰に足をすり寄せ、もっと欲しいと強請る。
 それに応えるようにすぐさまずぷずぷと激しい抽送が始まって、彼女は甘い声で啼く。しっかりと腰を抱えられているせいで強い衝撃を一身に受けながら、何度も果てそうになるのを堪えてその背に爪を立てる。


「あっん、すき、ヘニルとするの、ぁう、だいすきっ、ひゃっ」
「俺も……っ、大好きです、何歳になっても抱きますから、覚悟しておいて、くださいね……!」
「んぁっ」


 ヘニルは膝立ちになり、そのまま彼女の下半身を引き寄せて剛直を最奥まで突き立てる。肩甲骨あたりで体重を支える不安定な体位に、彼女は激しくなりそうな予感を覚える。


「あぁ、なんか……これで神族卒業だと思うと感慨深いですね」


 最後の交わりの前にとでも言いたげに、彼はセーリスに深く口付ける。動かないでいる間も甘く締め付けてくる膣内に恍惚として、そっとその手を重ね合わせる。


「セーリス様……」
「あ、ぅう、ヘニル……っ」


 ゆらゆらと腰を揺らし、彼は少しずつ律動を大きくしていく。激しい摩擦に締め付けも増して、ゆっくりと高められていく感覚に想いを馳せる。


「孕んで、ください……俺の子を、っふ、すきです、家族になりましょう、俺と……!」
「んっ、ぁあっ、ヘニル、ちょうだいっ」


 強く彼の手を握り締め、セーリスは嬌声を上げながら彼の名前を呼ぶ。勢い良く奥を抉られる度にいきそうになって、それでも同時に果てたくてもどかしくなる。
 二つの身体の隙間が寂しくなって、次第になだれ込むようにヘニルは上半身を倒していく。顔を突き合わせて、恋しさのまま唇を貪れば息が苦しくなって、それすらも愛おしさを感じてしまう。彼の剛直に馴染んだ彼女の中は執拗に良い場所を愛撫し、射精を促してくる。それにもっと溺れてしまいたくて、一層大きく腰を揺する。


「もう、ぁんっ、いっちゃう、んんっ」
「頑張って、ください……あと少しですから、一緒に、イきましょう」
「ん、ふ……んんっ、ぁ」


 絶頂が近いセーリスを宥めるように唇を寄せ、舌を絡ませる。ちゅうちゅうと吸い付いてびくつくそれを扱いては、その口から吐息と共に漏れる甘い声に彼も追い立てられていく。


「んむ、んぁ……は、んっ」


 必死になってヘニルと同じように舌を伸ばし、絡めようとしてくるその様が可愛らしくて、絶え間なく激しい衝動が彼に襲いかかってくる。今まで何度も抑えこんできた、彼女を孕ませたいという欲求だ。
 けれどもうそれに耐える必要など無くて、見えてきた果てに至ろうと、小刻みに胎の口を穿つ。絡みついてくる襞を蹂躙して、もっととその愛おしい身体を責め立てていく。

 今までの交わりとは違う。ずっと願い続けてきた未来がもうすぐ手に入ると、そう感じ入ったヘニルは強くセーリスを抱きしめる。


「セーリスさまっ、愛してます、俺だけの、セーリス様……っ」
「うん、きてヘニル、大好きっ」


 想いを口にし合いながら限界の近い身体を深く重ねる。足や腕で互いの身に縋って、溢れ続ける快感に身を委ねた。


「ヘニル、んぅっ、ぁあっ……!」
「っ、……――」


 ぎゅうっと彼の男根を締め付け、激しく痙攣する膣内は溺れるほどの快楽を吐き出す。その中にあるそれも艶かしい愛撫に限界を迎え、小さな彼女の胎の中に己が子種を注ぎ込む。熱いもので満たされていく感覚は彼女のよく知る愛おしいもので、絶頂の余韻に浸りながらセーリスは乱れた息を整える。

 そこで沈黙しているヘニルが心配になって、彼女は自分の首筋に顔を埋める彼の頭を撫でる。それにゆっくりと顔をあげた彼を見上げ、セーリスは驚く。


「ヘニル、い、痛かった? 平気……?」


 金の瞳は涙で濡れていて、ぽたぽたと彼女の顔に滴が零れてくる。それを拭ってやれば、確かな喪失感に呆然としていた彼はくしゃりと顔を歪め、笑みを浮かべる。


「ヘニル……?」
「ん、大丈夫、です……多分、生理現象、みたいなものなんで」


 涙が止まらない様子のヘニルを再度抱きしめて、優しく背を撫でてやる。慰めようとしてくれるセーリスにヘニルの方は無邪気に笑って、その頬や耳元に何度もキスを落とす。


「少しだけ寂しい、ですけど……」


 心配そうに見上げてくるセーリスの瞳を覗き込んで、長年枯れ果てていた涙が流れる感触に浸る。まるでようやく、本当の意味で、あの停滞した哀しい時間から抜け出せたような気がした。
 愛しい人の手に導かれてやっと、自分も前に進めたのだと。


「幸せです、本当に……こんなに幸せでいいのかなって、思ってしまうくらい……」
「うん……いいんだよ、ヘニル」


 優しくキスをして、強く抱きしめ合う。二度と離れないという約束を再確認するようにもう一度、想いを口にしながら。


「一緒に、もっと幸せになろう、ヘニル。私の、愛しい人」


 何度もその言葉に彼は頷く。セーリスへの想いを溢れるままに言葉にして、再度燻り始める熱をまた彼女に受け止めてもらおうと甘えるように擦り寄った。

 それでも泣き止まない自分が可笑しくなり、声を上げて笑った。


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