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04 お宅訪問!
6 寂しい君
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部屋に入れば、既に一本空になった酒瓶が置いてありました。
「先生って、お酒強いんですか?」
「んー……知らない……」
ソファに腰掛けている私の隣に、ぴったりと寄り添うように座っている先生。そして手はまだ繋いだままだった。
こんな質問をしたけれど、どう考えても先生は酔っている。少し体温は高いみたいだし、頬は赤らんでいる。あとやっぱり、お酒臭い。
だが先生がこのタイミングでお酒を飲む理由がよく分からなかった。一応しっかりとした人ではあるし、本人も客がいる中で酔うほどお酒を飲むような人でもない、はず。あまり強くないと知っていたのなら尚更だ。
「なんで、お酒なんか飲んでたんですか?」
しばらく無言が続く。
これはひょっとしたら既におネムなのかもしれない。
「前は、よく飲んでたんだよ」
「そうだったんですか」
「ここはすごく静かだから……一人で居ると嫌なことばかり、思い出す」
そう言いながら先生はゆったりと寄り掛かってくる。
「無性に、怖くなって、眠くなるまで、飲んでいようって」
「(下手すると依存症コースだそれは……)」
でもお酒に逃避していたのは家にいた頃の話なのだろう。さすがに学園長室で飲酒はできないはずだ。だって一応学校だし、ハッター先生は先生なのだし。
「嫌なことって、この家に住んでいた頃の、とかですか?」
「うん……」
酔ってるときに聞くのはどうかと思うも、私は確認のように尋ねた。
先生にとってこのお屋敷は、良い思い出がある場所、というわけではなさそうだった。寧ろ逆と言っていいかもしれない。じゃなければ三年も放置したりしない。
そう考えると、お屋敷に遊びにきたのは先生にとって負担だったかもしれない。
「すいません、私がお邪魔しなければ、お屋敷に帰ってくる必要もなかったのに」
「っ、違うよ。僕が言い出したんだ」
ぎゅうっと強めに手を握られる。思えば今の先生、手袋をつけていない。
思ったよりも節くれだっていて、何かの傷痕があるのか少しがさついている。すりすりと指を絡め、恋しそうに触れてくるのを見てしまい、すごく落ち着かない。
「しばらく君と会えなくなると思ったら寂しくて、だから、ここに帰ろうと思った。君に、どうしても会いたかったから」
「そ、そうですか」
「アリスがそばに、居てくれるなら……」
酔った先生、甘えん坊になりすぎではありませんか!?
じっとこっちを見ているのが分かる。でも目を合わせたら空気に呑まれてしまいそうで、私は視線を地面に落としていた。
そしたら、ぐいっと手で顔を上げさせられた。
「せん……っ」
「ねぇ、アリス」
寂しそうに潤んだ目が覗き込んでくる。きらきらと、赤や青、黄色が混じった虹色のその瞳に見惚れていれば、薄くその目に涙が浮かんだような気がした。
「アリスは僕の目、怖くない?」
「えっ」
「気持ち悪く、ないよね……?」
不安そうに聞いてくる先生。
前に確か、同僚とかから“その目がどこを見ているのかよく分からなくて気持ち悪い”、と言われたことがあり、それが原因で自分の顔があまり好きじゃないと言っていた。
あのときはちょっと冗談めかして話していたが、実は先生にとってはトラウマレベルの経験だったのではないだろうか。いや、そんな気がする。
「先生の目は、とっても綺麗ですよ。オパールみたいに、淡い虹色で……私は大好きです!」
まるで子供をあやすような心境です。
先生の方も安心したのか、嬉しそうに微笑んでくれる。これが素の笑みだとしたら、ちょっとその、庇護欲みたいなものがくすぐられて辛い。守ってあげたくなる。
「(ギャップが……ギャップが、すごい……)」
「アリス」
「わわっ」
無邪気にもぎゅっと抱きしめられる。けれど図体は成人男性のそれなので、酷く落ち着かない。もう心臓が破裂しそうです。
「アリス、もっと……もっと好きって、言って」
「ふぇっ」
「そしたらきっと、僕もこの目が好きになれると思うから」
それって、もしかして。
――……どうしたら好きになれると思う?
――信頼できる誰かが、先生の目は気持ち悪くなんてない、素敵だよって言ってくれれば、好きになれるんじゃないでしょうか!
あのとき話したことを、覚えてくれていたのか。
先生にとって、私の褒め言葉はちゃんと受け止めることができるもの、ということか。それはとても嬉しくて、なんだかにやけてしまいそうになる。
「先生の目、素敵ですよ」
「うん……」
「本当に、先生の目は綺麗で、好きです」
普段は触れない先生の髪に触れる。こっちも宝石みたいで綺麗だな、なんで先生の容姿で嫌われるんだろう、なんて不思議に思う。
「アリス……」
「んっ、う」
耳元で話されるとぞわっとする。変な声が出そうになるのを必死に耐えていると、突然抱き上げられる。そして先生の膝の上に座らせられる形に。
先生って、意外と力あるんだな。
じゃなくて!
「せ、先生!?」
「ふふ、アリスー……」
「酔っ払いに絡まれてる! さすがにこれは、ダメですって……!」
密着している。今までにないほどに。
完全に先生の腕の中にいるこの状態では、ほとんど身動きはとれない。というか、重くないですか。膝の上とはいえ人間上乗せるのはけっこう重たいと思うんですけど!
「アリスは重くないよ、羽根のように軽いね。あと、柔らかい」
「だめっ、柔らかいはアウトです!」
「? 何がアウトなの?」
この反応ということは下心はなさそう、きっと。
でも自覚が無いのは余計に怖い。何せ拒否し辛いという問題がある。
「ね、先生、もう寝ましょう? だんだん眠くなってきましたよね」
「んー、まだ寝ない。もっとアリスとおしゃべりする」
ちゅっと音を立てて頬にキスされる。そのまま髪をくすぐったいほどに撫でられて、耳元で甘く名前を呼ばれる。なんとかして逃げようと腕を掴んでも、当然びくともしないのだ。
「ハッター、せんせぇ……!」
「今日のアリスは、僕と同じ匂いがするね……あは、同じお風呂に浸かったから、かな」
耳や頬に落ちていたキスが次第に降りてきて、首元に触れる。そしてぺろりと舌で首筋を舐められ、思わず変な声が出てしまう。
「ひゃんっ」
「っ……」
先生の表情が変わる。甘えるような微笑から、何かを堪えるような、そんな感じの顔に。
これは本格的にまずいかも、なんて思ったのと同時に身体がふわりと浮く。先生が私を抱き上げたまま立ち上がったのだ。本当に意外と力あるんだなぁ!
そしてそのまま、案の定ベッドへ。
「せんせい……」
ベッドに下されれば、逃さないとでも言いたげにハッター先生は覆いかぶさってくる。
「……好きだよ」
「へ、んっ……」
性急に、唇が重なる。啄むようなそれは次第に深くなって、放られた手の指をきつく絡めながら、ねっとりと重なっていく。
息継ぎがうまくできなくて、余計に思考は混乱してしまう。このまま流されれば順調だった私の人生も詰み、ジ・エンド直行なのだ。
「ん、ぅ……ふ、せんっ、せぇ!」
がっと先生の肩を掴んで抵抗する。そうすれば驚いたような顔をして先生は静止した。
「あの、一応私は、その、婚約者もいる、わけで……これ以上のことはさすがに……」
きゅっと先生の眉根が寄せられる。不満そうなその顔にだんだん語調を弱めていけば、先生はまた顔を近付けてくる。
「今のアリスは、僕の恋人でしょ?」
「そ、そうです、けど」
「なら、止めないで」
うぐっと言葉に詰まる。
今や酔っ払ってまともな判断力を失っている先生は止められないのか。部屋に来た時点でもう手遅れだったのか。そんな後悔が滲んでくる。
だが先生は止まったまま動かない。どうしたのかと首を傾げれば、先生は強めに私を抱きしめる。
「好き、好きなんだ……アリス、僕のアリス」
「へ、え」
「君さえ居てくれれば、もう何もいらないくらい。僕の幸福は、君なんだよ」
真剣な告白には、僅かに哀愁のようなものが滲む。
そのまま先生は私の隣へと横になる。はっきりと見えるようになった顔には、またあの寂しそうな表情が浮かんでいた。
先生が抱えている孤独。それは一体どれほど深いものなのだろう。
彼はそれを埋めて欲しくて、私にあの取引を持ちかけたのだ。なぜ私なのかはまだ分からないけれど。
「今日、僕は初めて……しあわせ、って、こういうことなんだって、思った」
「先生……」
「一緒に、掃除をして、ご飯を食べて、おしゃべりをして……あんなに、ここに居るのは辛かったのに、君と一緒だと胸が、温かくなって……これが、しあわせ、なんだよね」
「……はい」
先生の手を握って、私は頷いた。そうすれば先生はゆっくりと私を抱き寄せる。
「なら、僕は……もっとしあわせでいたい」
だから、そばにいて欲しい。
それは覚えのある願望だった。かつて私も、幸せになれないことを嘆いたことがあった。
同じだな、なんて思った。
「みんなは僕を、怖がって……でも、君は、……おな、じ…………」
ゆっくりと声が沈んでいく。いつのまにかその目は閉じていて、安らかな寝息が聞こえてくる。
とてつもなく重いものの片鱗を見てしまった。そんな気分だった。
いつも飄々として捉え所のないような人だと、万能の魔法の力を持った無敵キャラなのだと、そう思っていたのに。先生の弱った表情はあまりにも衝撃的で、私はなかなかそれから抜け出せなかった。
「……あ」
少し身動ぎをして先生の腕から出ようとするも、なぜかがっちり抱きしめられていて腕が解けない。
ここからも、抜け出せないっぽかった。
「先生って、お酒強いんですか?」
「んー……知らない……」
ソファに腰掛けている私の隣に、ぴったりと寄り添うように座っている先生。そして手はまだ繋いだままだった。
こんな質問をしたけれど、どう考えても先生は酔っている。少し体温は高いみたいだし、頬は赤らんでいる。あとやっぱり、お酒臭い。
だが先生がこのタイミングでお酒を飲む理由がよく分からなかった。一応しっかりとした人ではあるし、本人も客がいる中で酔うほどお酒を飲むような人でもない、はず。あまり強くないと知っていたのなら尚更だ。
「なんで、お酒なんか飲んでたんですか?」
しばらく無言が続く。
これはひょっとしたら既におネムなのかもしれない。
「前は、よく飲んでたんだよ」
「そうだったんですか」
「ここはすごく静かだから……一人で居ると嫌なことばかり、思い出す」
そう言いながら先生はゆったりと寄り掛かってくる。
「無性に、怖くなって、眠くなるまで、飲んでいようって」
「(下手すると依存症コースだそれは……)」
でもお酒に逃避していたのは家にいた頃の話なのだろう。さすがに学園長室で飲酒はできないはずだ。だって一応学校だし、ハッター先生は先生なのだし。
「嫌なことって、この家に住んでいた頃の、とかですか?」
「うん……」
酔ってるときに聞くのはどうかと思うも、私は確認のように尋ねた。
先生にとってこのお屋敷は、良い思い出がある場所、というわけではなさそうだった。寧ろ逆と言っていいかもしれない。じゃなければ三年も放置したりしない。
そう考えると、お屋敷に遊びにきたのは先生にとって負担だったかもしれない。
「すいません、私がお邪魔しなければ、お屋敷に帰ってくる必要もなかったのに」
「っ、違うよ。僕が言い出したんだ」
ぎゅうっと強めに手を握られる。思えば今の先生、手袋をつけていない。
思ったよりも節くれだっていて、何かの傷痕があるのか少しがさついている。すりすりと指を絡め、恋しそうに触れてくるのを見てしまい、すごく落ち着かない。
「しばらく君と会えなくなると思ったら寂しくて、だから、ここに帰ろうと思った。君に、どうしても会いたかったから」
「そ、そうですか」
「アリスがそばに、居てくれるなら……」
酔った先生、甘えん坊になりすぎではありませんか!?
じっとこっちを見ているのが分かる。でも目を合わせたら空気に呑まれてしまいそうで、私は視線を地面に落としていた。
そしたら、ぐいっと手で顔を上げさせられた。
「せん……っ」
「ねぇ、アリス」
寂しそうに潤んだ目が覗き込んでくる。きらきらと、赤や青、黄色が混じった虹色のその瞳に見惚れていれば、薄くその目に涙が浮かんだような気がした。
「アリスは僕の目、怖くない?」
「えっ」
「気持ち悪く、ないよね……?」
不安そうに聞いてくる先生。
前に確か、同僚とかから“その目がどこを見ているのかよく分からなくて気持ち悪い”、と言われたことがあり、それが原因で自分の顔があまり好きじゃないと言っていた。
あのときはちょっと冗談めかして話していたが、実は先生にとってはトラウマレベルの経験だったのではないだろうか。いや、そんな気がする。
「先生の目は、とっても綺麗ですよ。オパールみたいに、淡い虹色で……私は大好きです!」
まるで子供をあやすような心境です。
先生の方も安心したのか、嬉しそうに微笑んでくれる。これが素の笑みだとしたら、ちょっとその、庇護欲みたいなものがくすぐられて辛い。守ってあげたくなる。
「(ギャップが……ギャップが、すごい……)」
「アリス」
「わわっ」
無邪気にもぎゅっと抱きしめられる。けれど図体は成人男性のそれなので、酷く落ち着かない。もう心臓が破裂しそうです。
「アリス、もっと……もっと好きって、言って」
「ふぇっ」
「そしたらきっと、僕もこの目が好きになれると思うから」
それって、もしかして。
――……どうしたら好きになれると思う?
――信頼できる誰かが、先生の目は気持ち悪くなんてない、素敵だよって言ってくれれば、好きになれるんじゃないでしょうか!
あのとき話したことを、覚えてくれていたのか。
先生にとって、私の褒め言葉はちゃんと受け止めることができるもの、ということか。それはとても嬉しくて、なんだかにやけてしまいそうになる。
「先生の目、素敵ですよ」
「うん……」
「本当に、先生の目は綺麗で、好きです」
普段は触れない先生の髪に触れる。こっちも宝石みたいで綺麗だな、なんで先生の容姿で嫌われるんだろう、なんて不思議に思う。
「アリス……」
「んっ、う」
耳元で話されるとぞわっとする。変な声が出そうになるのを必死に耐えていると、突然抱き上げられる。そして先生の膝の上に座らせられる形に。
先生って、意外と力あるんだな。
じゃなくて!
「せ、先生!?」
「ふふ、アリスー……」
「酔っ払いに絡まれてる! さすがにこれは、ダメですって……!」
密着している。今までにないほどに。
完全に先生の腕の中にいるこの状態では、ほとんど身動きはとれない。というか、重くないですか。膝の上とはいえ人間上乗せるのはけっこう重たいと思うんですけど!
「アリスは重くないよ、羽根のように軽いね。あと、柔らかい」
「だめっ、柔らかいはアウトです!」
「? 何がアウトなの?」
この反応ということは下心はなさそう、きっと。
でも自覚が無いのは余計に怖い。何せ拒否し辛いという問題がある。
「ね、先生、もう寝ましょう? だんだん眠くなってきましたよね」
「んー、まだ寝ない。もっとアリスとおしゃべりする」
ちゅっと音を立てて頬にキスされる。そのまま髪をくすぐったいほどに撫でられて、耳元で甘く名前を呼ばれる。なんとかして逃げようと腕を掴んでも、当然びくともしないのだ。
「ハッター、せんせぇ……!」
「今日のアリスは、僕と同じ匂いがするね……あは、同じお風呂に浸かったから、かな」
耳や頬に落ちていたキスが次第に降りてきて、首元に触れる。そしてぺろりと舌で首筋を舐められ、思わず変な声が出てしまう。
「ひゃんっ」
「っ……」
先生の表情が変わる。甘えるような微笑から、何かを堪えるような、そんな感じの顔に。
これは本格的にまずいかも、なんて思ったのと同時に身体がふわりと浮く。先生が私を抱き上げたまま立ち上がったのだ。本当に意外と力あるんだなぁ!
そしてそのまま、案の定ベッドへ。
「せんせい……」
ベッドに下されれば、逃さないとでも言いたげにハッター先生は覆いかぶさってくる。
「……好きだよ」
「へ、んっ……」
性急に、唇が重なる。啄むようなそれは次第に深くなって、放られた手の指をきつく絡めながら、ねっとりと重なっていく。
息継ぎがうまくできなくて、余計に思考は混乱してしまう。このまま流されれば順調だった私の人生も詰み、ジ・エンド直行なのだ。
「ん、ぅ……ふ、せんっ、せぇ!」
がっと先生の肩を掴んで抵抗する。そうすれば驚いたような顔をして先生は静止した。
「あの、一応私は、その、婚約者もいる、わけで……これ以上のことはさすがに……」
きゅっと先生の眉根が寄せられる。不満そうなその顔にだんだん語調を弱めていけば、先生はまた顔を近付けてくる。
「今のアリスは、僕の恋人でしょ?」
「そ、そうです、けど」
「なら、止めないで」
うぐっと言葉に詰まる。
今や酔っ払ってまともな判断力を失っている先生は止められないのか。部屋に来た時点でもう手遅れだったのか。そんな後悔が滲んでくる。
だが先生は止まったまま動かない。どうしたのかと首を傾げれば、先生は強めに私を抱きしめる。
「好き、好きなんだ……アリス、僕のアリス」
「へ、え」
「君さえ居てくれれば、もう何もいらないくらい。僕の幸福は、君なんだよ」
真剣な告白には、僅かに哀愁のようなものが滲む。
そのまま先生は私の隣へと横になる。はっきりと見えるようになった顔には、またあの寂しそうな表情が浮かんでいた。
先生が抱えている孤独。それは一体どれほど深いものなのだろう。
彼はそれを埋めて欲しくて、私にあの取引を持ちかけたのだ。なぜ私なのかはまだ分からないけれど。
「今日、僕は初めて……しあわせ、って、こういうことなんだって、思った」
「先生……」
「一緒に、掃除をして、ご飯を食べて、おしゃべりをして……あんなに、ここに居るのは辛かったのに、君と一緒だと胸が、温かくなって……これが、しあわせ、なんだよね」
「……はい」
先生の手を握って、私は頷いた。そうすれば先生はゆっくりと私を抱き寄せる。
「なら、僕は……もっとしあわせでいたい」
だから、そばにいて欲しい。
それは覚えのある願望だった。かつて私も、幸せになれないことを嘆いたことがあった。
同じだな、なんて思った。
「みんなは僕を、怖がって……でも、君は、……おな、じ…………」
ゆっくりと声が沈んでいく。いつのまにかその目は閉じていて、安らかな寝息が聞こえてくる。
とてつもなく重いものの片鱗を見てしまった。そんな気分だった。
いつも飄々として捉え所のないような人だと、万能の魔法の力を持った無敵キャラなのだと、そう思っていたのに。先生の弱った表情はあまりにも衝撃的で、私はなかなかそれから抜け出せなかった。
「……あ」
少し身動ぎをして先生の腕から出ようとするも、なぜかがっちり抱きしめられていて腕が解けない。
ここからも、抜け出せないっぽかった。
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