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番外04-01 変化とやり直し
しおりを挟む目が覚めれば昼間だった。慌てて身体を起こそうとしたノイナは、けれど身体にがっちり回っている二人の腕に既視感を覚える。
「ふぇ」
「ん……おはよ、ノイナ、んんー」
ぶちゅっと目覚めのキスをしてくるゲブラーに、ノイナは慌てる。こんなことをしてる場合じゃないと。
「しごと……」
「今日、休日だけど」
「あれ、そうだっけ……? ひゃんっ」
そこでふにふにと、背後から回っている腕がノイナの胸をねっとりと揉みしだく。さんざん弄くり回されたせいか敏感になった乳頭を擦られれば、甘い声が勝手に漏れ出してしまう。
「ん、ノイナ……」
「お、あっ、おはようございます、せんっ、先輩……その、んぅっ、手を止めてくれると」
寝ぼけているというのに、スタールの手は的確に胸を責めてくる。それに悶えていれば、ノイナの声に興奮した二人はぐいぐいと股間を押し込んでくる。
「ノイナのえっちな声、ほんと下半身にくる……」
「ちょっと! 昨日あんなにしたのに……」
「……ノイナ」
「せんぱーい!!」
股の間にずぶっと硬くなった屹立を突っ込まれ、思わずノイナは声をあげる。昨晩はかなり長く楽しんだというのに、まだ元気な二人に呆れてしまう。
「とにかく起床! 休日って、出かけるつもりだったのに……」
「ああ……今日買い物行くんだった」
そこでゲブラーがようやく起き上がる。大きく伸びをした彼はノイナをスタールから引き剥がすと、まだ眠たげな目を擦った。
「う……」
「……なに、スタールって朝弱いの」
「そうなのかな……」
呻き声をあげてベッドに突っ伏すスタールの姿に、ノイナもゲブラーも驚いてしまう。以前はそんなことなく、普通に起きてたと思うのだが。
「あー……今までは欲求不満であんまり眠れなかったんじゃない。昨日はノイナといっぱいしたからね、さすがにすっきりしたでしょ」
「な、なるほど……?」
確かに以前酒に酔っていたときも未遂で終わり、早々に寝落ちしたのだった。長い間溜め込まれていた欲求が良質な睡眠を遮っていてもおかしくはない。
「ともかくお昼食べよ。お腹空いた」
「そうだね。先輩もいい匂いしたら起きてくるかもしれないし」
それまでスタールを寝かせておいてやり、二人は昼食の準備をした。
ノイナの予想通り、寝室にまで昼食の匂いが届くようになると、スタールはよろよろと起きてくる。そして珍しく乱れた髪のままノイナの前に立って、顔を真っ赤にした。
「お、おはよう……」
「おはようございます、先輩。よく眠れましたか?」
「うん……」
頬に触れてくる彼の手を受け入れれば、キスをしたそうに顔が近づいてくる。
素直にキスを受け入れれば、スタールは緩みきった笑みを浮かべる。それがなんだか嬉しくて、ノイナはぎゅっと彼を抱き寄せた。
「お昼ご飯できてますよ。食べ終わったら、先輩も一緒に出かけましょうか」
「ん……ノイナが作ったの?」
「そうですね。ゼルスにも手伝ってもらいましたけど、スピード重視で大体私の手料理です」
「ノイナの、手料理……」
スタールはテーブルに並ぶ皿を見て目を輝かせる。思えばゲブラーもまったく同じ反応をしていたなと思い、ノイナはくすくすと笑みを溢した。
さくっと昼食を終わらせ、三人はふらりと外に出た。そういえばこれも、以前似たようなシチュエーションがあったなとノイナは思ってしまう。
(あのころは二人ともすっごい険悪だったけど……)
外出の理由は、新居にインテリアやらなにやら、もう少し彩りを与えられるものを探すためだった。ちょうどよくスタールも同席してくれたため、少々殺風景な新居になにが必要か、アドバイスをもらっていた。
「これほしい」
「駄目だよ、置き場所がない」
大きなショッピングモールの中で、ゲブラーが目をつけた巨大なぬいぐるみを、冷静にスタールが却下している。ゲブラーは今まで私物を持てなかった反動か、目を離すとすぐに変なものを買って家に置こうとするのだ。
「ちっちゃいものならいいんだけど、これくらいのサイズとなるとね……」
なんでこんなものが売っているのか不明だが、二メートル近い背丈にふかふかのお腹を携えた、たぬきっぽい何かのぬいぐるみだ。確かにこれを横に寝かせて、ふっくらしたお腹に飛び込むのはかなり気持ちがよさそうだ。
「そもそも玄関をくぐれないんじゃないかな」
「ぶー」
「別のものを探してみよう」
なんだかんだ自然に店内を一緒に見て回っている二人の姿は、以前とは打って変わって穏やかだ。ノイナを巡って熾烈な争いを繰り広げていたのも、なんだか遠い昔の出来事のように思えてくる。
(これは本当に先輩が愛人に……)
愛人のいる生活はどういうものなのか、想像しようとしても、なかなか思い浮かんではこない。
けれど、今のように三人で生活する姿は、自然と頭の中でイメージできる。できれば愛人とか関係なく、スタールとも一緒に暮らせたらいいのにと、そう彼女は内心で呟いた。
(でもそれはさすがに、ゼルスも嫌がるかな……)
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