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番外01-01 スタールは行動する
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「なぜノイナの任務のことを僕に教えてくれなかったんですか……!」
珍しく彼は声を荒げた。目の前にいる彼の上司は、見たことのないその剣幕に顔を青くしている。
彼が怒鳴りつけているのは上司に対してではない。彼が持っている携帯の、その電話の相手だった。
はぁ、と重々しいため息が聞こえてくる。気だるげなその声は、彼にとって恩人と呼ぶに相応しい人物のものだった。
『理由は簡単。今回の任務は、前回君が代わった任務とは重要度がまったく違うから。絶対に成功させないといけない任務なの、君に邪魔されちゃ困るってこと』
「だというのに、ノイナを単身暗殺者の元へ向かわせて……それのどこが“絶対に成功させないといけない任務”ですか、彼女が死んでいたらどうするつもりだったんです!」
『とにかく落ち着きなよ、まったく……』
感情を露わにする彼、スタールに対して、声の主は呆れた様子だった。その落差が、余計にスタールを煽った。
こんなにはっきりと自分の気持ちを表にするのは多分、初めてだった。それほどまでにスタールにとって、ノイナという存在は重要なものだったのだ。
もしかしたら、あの任務で彼女は死んでいたかもしれない。そう思うと、それを是とした師に対して怒りが湧いてくる。たとえ彼が、自分を地獄から救ってくれた恩人なのだとしても。
「任務の交代を。今後一切、彼女に任務を与えるのはやめてください」
『それは君の私情でしょ? そんなもの許可できるはずがないよ。それに君にゲブラーの懐柔は不可能だ。任務の妨害も許さないよ』
「いいえ、僕ならできます。どんなことだって……先生が許可してくれなくても、僕はやりますよ」
『おいおい、本気か……?』
命令無視。それは機関において最も許されない行為である。そんなことは分かっていた。
それでも構わなかった。たとえ機関から追われる身になろうとも、彼にとっては。
「ノイナだけは……」
『はぁ、やだねぇ、神の血族は好きになったら一直線なんだから……せめてさぁ、ノイナ・イゴーシュがゲブラーを懐柔し終えるまで待ってくれない?』
「嫌です」
キッパリとした拒絶に、耳元でまた大きなため息が聞こえる。
マシェットとしても、ここでスタールをむざむざ命令違反で殺すつもりはないのだろう。彼はしばらく思案しているかのように沈黙すると、小さく舌を鳴らした。
『分かった。交代を許可する。ただし、ゲブラーの懐柔が自分には不可能だと、そう判断し諦めたら即刻、任務の妨害を中止すること。分かったかい?』
「ありがとうございます。必ずやり遂げます」
と、以上がスタールが長い任務から戻って来たあと、マシェット長官と交わした会話の内容だった。
長官が不可能だとはっきりと言ったのだ、この時点で既にスタールはゲブラーの懐柔は相当難しいだろうと思っていた。そしてその予感は見事、的中してしまったのだ。
今思えば、頭に血が上っていたと思う。ノイナを見ず知らずの男に奪われてしまった気がして、許せなくて、彼らしくもなく冷静さを失ったまま好き勝手行動していたとも。
「新しい恋をしろ、か……」
任務をまた一つ終え、本部に帰る目処が立ったスタールはそう小さく呟いた。
暗殺者ゲブラー懐柔の任務は無事に達成された。彼の大事な後輩、ノイナ・イゴーシュの手によって。
一応表向きには、まだ懐柔してる最中ということになっている。ノイナも反抗的な暴れ馬を必死に調教しようと、ひどく手を焼いているのだ、と。
実際はもちろん、そんなことはない。既にゲブラーは牙を抜かれ、ようやく得た居場所で、この世で最も大切な人との日々を満喫しているのだろう。
「羨ましいよ、本当に」
そう言って彼は携帯の通話ボタンを押した。聞こえてくる呼び出し音に目を閉じていれば、すぐに聞こえてくる愛しい人の声に彼は笑みを浮かべた。
「ノイナ、お疲れさま」
『先輩、お疲れさまです!』
この声を聞くたびに思う。愛おしい、と。
他愛のない会話をして、小さな笑い声に胸をときめかせて、そのたびに彼は考える。
きっと彼女へのこの想いは、永劫変わらないのだろう。
ゲブラーもきっとそう思っているはずだ。けれど、この想いは彼にも負けてないと、自信を持って言えた。
「ゲブラーの様子はどうかな。暴れたりしていない?」
『あはは、暴れたりはしてませんよ。最近はすっごい落ち着いてます。なんか、無敵の暗殺者なんて呼ばれてたころが冗談に聞こえるくらい』
ノイナのその言葉に、スタールは小さく頷いた。
ゲブラーの持つ凶暴性は、不安定な自分を守るための防衛本能と言える。だがようやく安住の地を見つけた彼には、もはや牙を向ける必要などどこにもなかった。
要は、あっさり丸くなったのだ。危険な異能を持って生まれてしまっただけで、ゲブラー、もといゼルス・バーグワンという男は、どこまでも普通の人、と言えた。
『あ、でも、このまえ電子レンジで卵を爆発させちゃって……』
「今どきそんなミスをするやつが」
『まだ怖いからって、火も包丁も使わないで頑張って料理に挑戦してくれてるんですよ。でも……前からそうかなとは思ってはいたんですけど、けっこうな機械オンチでもあって……』
「悩みは尽きないね」
ゲブラーの持つ不器用さは、能力の反動のようなものであるらしい。
長官は、死神関係者は殺し屋になってはいけないと言っていたが、彼らの仕組みは自然と命を奪う役目を担うようになっているらしい。要は、殺し以外に適性を持たないよう、それ以外の能力が極端にセーブされてしまっている、ということだ。
『料理してるところは、すっごく可愛くて和むんですけどね。私もずっと付きっきりで見てあげられればいいんですけど、書類仕事は免除にならないし……』
「戻ったら手伝うよ」
『先輩はちゃんと休んでください。仕事のし過ぎです!』
「ふふ……」
いつものように気遣ってくれる彼女の言葉に、彼は幸せそうに笑みを浮かべた。
「ノイナ」
思わず口からは、愛おしさが滲んだ声が漏れていた。それに彼女は気づかずに、普段通りの口調で返事をしてくる。
『なんですか?』
「いや、なんでもない。もう切るよ。お土産、期待していて」
『はい! あ、私も今までお世話になってきたお礼を用意したので、期待していてくださいね!』
そう言って切れてしまう電話に、スタールは重々しくため息をついた。
「お礼なら、君が欲しいんだけどな……」
そんなこと、まだ口にはできない。
彼はノイナに質問しそうになった。もしもまだ自分が君のことを諦めていないと、冗談じゃなくて本気だと言ったら、君はどう思うか、と。
怒る? 戸惑う? 笑う? それとも。
「でもそれを聞くのは、今じゃないよね……先にあの人を懐柔しないと」
珍しく彼は声を荒げた。目の前にいる彼の上司は、見たことのないその剣幕に顔を青くしている。
彼が怒鳴りつけているのは上司に対してではない。彼が持っている携帯の、その電話の相手だった。
はぁ、と重々しいため息が聞こえてくる。気だるげなその声は、彼にとって恩人と呼ぶに相応しい人物のものだった。
『理由は簡単。今回の任務は、前回君が代わった任務とは重要度がまったく違うから。絶対に成功させないといけない任務なの、君に邪魔されちゃ困るってこと』
「だというのに、ノイナを単身暗殺者の元へ向かわせて……それのどこが“絶対に成功させないといけない任務”ですか、彼女が死んでいたらどうするつもりだったんです!」
『とにかく落ち着きなよ、まったく……』
感情を露わにする彼、スタールに対して、声の主は呆れた様子だった。その落差が、余計にスタールを煽った。
こんなにはっきりと自分の気持ちを表にするのは多分、初めてだった。それほどまでにスタールにとって、ノイナという存在は重要なものだったのだ。
もしかしたら、あの任務で彼女は死んでいたかもしれない。そう思うと、それを是とした師に対して怒りが湧いてくる。たとえ彼が、自分を地獄から救ってくれた恩人なのだとしても。
「任務の交代を。今後一切、彼女に任務を与えるのはやめてください」
『それは君の私情でしょ? そんなもの許可できるはずがないよ。それに君にゲブラーの懐柔は不可能だ。任務の妨害も許さないよ』
「いいえ、僕ならできます。どんなことだって……先生が許可してくれなくても、僕はやりますよ」
『おいおい、本気か……?』
命令無視。それは機関において最も許されない行為である。そんなことは分かっていた。
それでも構わなかった。たとえ機関から追われる身になろうとも、彼にとっては。
「ノイナだけは……」
『はぁ、やだねぇ、神の血族は好きになったら一直線なんだから……せめてさぁ、ノイナ・イゴーシュがゲブラーを懐柔し終えるまで待ってくれない?』
「嫌です」
キッパリとした拒絶に、耳元でまた大きなため息が聞こえる。
マシェットとしても、ここでスタールをむざむざ命令違反で殺すつもりはないのだろう。彼はしばらく思案しているかのように沈黙すると、小さく舌を鳴らした。
『分かった。交代を許可する。ただし、ゲブラーの懐柔が自分には不可能だと、そう判断し諦めたら即刻、任務の妨害を中止すること。分かったかい?』
「ありがとうございます。必ずやり遂げます」
と、以上がスタールが長い任務から戻って来たあと、マシェット長官と交わした会話の内容だった。
長官が不可能だとはっきりと言ったのだ、この時点で既にスタールはゲブラーの懐柔は相当難しいだろうと思っていた。そしてその予感は見事、的中してしまったのだ。
今思えば、頭に血が上っていたと思う。ノイナを見ず知らずの男に奪われてしまった気がして、許せなくて、彼らしくもなく冷静さを失ったまま好き勝手行動していたとも。
「新しい恋をしろ、か……」
任務をまた一つ終え、本部に帰る目処が立ったスタールはそう小さく呟いた。
暗殺者ゲブラー懐柔の任務は無事に達成された。彼の大事な後輩、ノイナ・イゴーシュの手によって。
一応表向きには、まだ懐柔してる最中ということになっている。ノイナも反抗的な暴れ馬を必死に調教しようと、ひどく手を焼いているのだ、と。
実際はもちろん、そんなことはない。既にゲブラーは牙を抜かれ、ようやく得た居場所で、この世で最も大切な人との日々を満喫しているのだろう。
「羨ましいよ、本当に」
そう言って彼は携帯の通話ボタンを押した。聞こえてくる呼び出し音に目を閉じていれば、すぐに聞こえてくる愛しい人の声に彼は笑みを浮かべた。
「ノイナ、お疲れさま」
『先輩、お疲れさまです!』
この声を聞くたびに思う。愛おしい、と。
他愛のない会話をして、小さな笑い声に胸をときめかせて、そのたびに彼は考える。
きっと彼女へのこの想いは、永劫変わらないのだろう。
ゲブラーもきっとそう思っているはずだ。けれど、この想いは彼にも負けてないと、自信を持って言えた。
「ゲブラーの様子はどうかな。暴れたりしていない?」
『あはは、暴れたりはしてませんよ。最近はすっごい落ち着いてます。なんか、無敵の暗殺者なんて呼ばれてたころが冗談に聞こえるくらい』
ノイナのその言葉に、スタールは小さく頷いた。
ゲブラーの持つ凶暴性は、不安定な自分を守るための防衛本能と言える。だがようやく安住の地を見つけた彼には、もはや牙を向ける必要などどこにもなかった。
要は、あっさり丸くなったのだ。危険な異能を持って生まれてしまっただけで、ゲブラー、もといゼルス・バーグワンという男は、どこまでも普通の人、と言えた。
『あ、でも、このまえ電子レンジで卵を爆発させちゃって……』
「今どきそんなミスをするやつが」
『まだ怖いからって、火も包丁も使わないで頑張って料理に挑戦してくれてるんですよ。でも……前からそうかなとは思ってはいたんですけど、けっこうな機械オンチでもあって……』
「悩みは尽きないね」
ゲブラーの持つ不器用さは、能力の反動のようなものであるらしい。
長官は、死神関係者は殺し屋になってはいけないと言っていたが、彼らの仕組みは自然と命を奪う役目を担うようになっているらしい。要は、殺し以外に適性を持たないよう、それ以外の能力が極端にセーブされてしまっている、ということだ。
『料理してるところは、すっごく可愛くて和むんですけどね。私もずっと付きっきりで見てあげられればいいんですけど、書類仕事は免除にならないし……』
「戻ったら手伝うよ」
『先輩はちゃんと休んでください。仕事のし過ぎです!』
「ふふ……」
いつものように気遣ってくれる彼女の言葉に、彼は幸せそうに笑みを浮かべた。
「ノイナ」
思わず口からは、愛おしさが滲んだ声が漏れていた。それに彼女は気づかずに、普段通りの口調で返事をしてくる。
『なんですか?』
「いや、なんでもない。もう切るよ。お土産、期待していて」
『はい! あ、私も今までお世話になってきたお礼を用意したので、期待していてくださいね!』
そう言って切れてしまう電話に、スタールは重々しくため息をついた。
「お礼なら、君が欲しいんだけどな……」
そんなこと、まだ口にはできない。
彼はノイナに質問しそうになった。もしもまだ自分が君のことを諦めていないと、冗談じゃなくて本気だと言ったら、君はどう思うか、と。
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