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31-01 不器用さも愛して*

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 その後も特に変わりなく、穏やかな時間は過ぎていった。

 いつか化けの皮が剥がれるかも、なんて思っていたゲブラーも、素直に想いを口にすることに慣れていき、自然とノイナを愛でるようになっていった。それは形容するなら、イチャイチャ、ラブラブ、なんて言えてしまうくらいに。


「ノイナ! 大好き」


 想いを受け取ってもらえることを喜ぶように、いつも柔らかい笑みを浮かべて彼はノイナに接した。一週間に一晩程度だった逢瀬も頻度が多くなったり、ホテルで一晩過ごしたあと数日間はデートをしたりして一緒に過ごす、なんてことも増えていった。


「俺と、ずっと一緒にいてね……」


 甘えるように愛を乞うゲブラーに、ノイナも次第に彼への好意をはっきりと自覚するようになっていった。

 見つめられればドキドキして、手を握られれば身体が熱くなって、口付けをすれば、彼が欲しくなって。
 愛を囁かれるたびに、心は喜びで震える。これが恋で、愛なのだと、実感するようになった。

 それでもなかなかうまく言葉にはできずに少しだけ悩んでいたころ、休日の朝。
 家で目覚めたノイナは、目の前にある男の寝顔に眠たい目を擦った。


「……あれ?」


 昨日はゲブラーに呼び出されてホテルで一晩を過ごしたのだったか。そんなことを思って周囲を見回しても、ベッドは自分のよく知るものだし、天井も自分の家のものだ。


「なんで……ゲブラー、いつの間に家に入り込んだんですか?」


 なぜ家の場所を知っていると一瞬思うも、そういえば教えていないのに乗り込んできたことがあったなと思い出す。それに初めてのデートの際にも、ゲブラーを連れて家を訪れたのだった。


「んん……おはよ、ノイナ……」
「お、おはようございます」
「ノイナの家のベッドって狭いね。まぁでも、ノイナとくっついて眠れるから、すき」


 寝起き一発目から嬉しそうに笑うゲブラーに、ノイナはツッコミを入れる気も失せてしまう。顔を赤くして黙っていれば、身体を起こした彼が朝の挨拶とでも言うかのようにキスをしてくる。


「朝から、どうしたんですか。家まで来て」
「んー? 仕事終わって、こっちついたら夜で……でもノイナに、早く会いたかったから……お風呂と着替え済ませて、来ちゃった」
「そう、ですか」


 ぎゅうっと強めに抱きしめられながら、軽いキスをいくつも交わし合う。まだ眠たそうに瞬きをする彼の頭を撫でれば、いつも以上に緩んだ笑みがその整った顔に浮かんだ。


「もうちょっと寝ますか?」
「んーん、起きる」
「それじゃあ、朝ごはんにしましょうか」
「うん」


 ノイナがベッドを降りようとしたところで、ゲブラーがあっと短く声を上げる。どうしたのかと思えば、彼はなぜか満面の笑みを浮かべてかちゃかちゃとベルトを外している。


「朝勃ちだ! ノイナ!」
「あ、はい……」


 子供のような無邪気さに思わず笑みが引き攣る。恐らくまだ寝惚けているのだろう、普段のゲブラーでもさすがにこんなことは言わない。


「ほんとに、朝になるもの、なんですね」
「ん……」


 しっかりと反り勃っている陰茎に、ノイナは優しく手で触れる。そうすれば期待するような彼の視線が向けられて、そういえば以前朝にしてほしいということを言っていたのを思い出す。


「そこ座っててください」


 ゲブラーにベッドの縁に座ってもらうと、ノイナは床に座り込んだ。ちょうど目の前にあるそれにキスをして、ちろちろと舌先で舐め始める。すると彼のものはぴくぴくと震えて、また大きくなっていく。


「ん、まだおっきくなる」


 唾液を絡ませるように全体を舌で舐め回したあと、手でゆっくりと根本から上を扱いていく。震えて質量を増していく男根はすぐに先走りを溢し始めて、唇を寄せてそれを吸い上げればびくりと彼の腰が揺れた。


「はぁ……っ、ノイナのフェラ、好き……」
「んん、んんふ」
「そんなに、あっ、吸われたら、すぐ出ちゃうよ」


 愛おしさが滲んだ声で名前を呼ばれて、彼の手が優しく頭を撫でる。先端を口に含んだままもっと撫でろと手を重ねれば、また甘い彼のため息が聞こえてくる。


「ノイナ、んんっ、だいすき……ふ、んっ」


 ゆっくりと口の中に剛直を収めて、またずるずると引き抜く。次第にそれを早くして、手で根本や袋を愛撫すれば、口内に先走りがどんどん溜まっていく。


「は、ぁ……っん、もう、でちゃう、ノイナっ、イく……!」


 ぐっと喉奥までそれを飲み込むのと同時に、屹立がふるふると震えて吐精を始める。朝から元気に迸る熱をしっかりと受け止めて、ノイナは慣れた様子でゆっくりと飲み込んだ。
 いつものように綺麗に掃除まで済ませ、ようやくそこから口を離せば、ゲブラーに軽く抱き上げられる。まだ精液の味と臭いの残る口で深く唇と舌を絡ませれば、よりいっそうその味と臭いが広がってしまう。


「んっ……ノイナの口の中、俺の味がする」
「そりゃあ、飲んだあとだから当然ですよ」
「ふ……ありがとね、ノイナ。すっごく、気持ちよかった」


 服を整え、またノイナを大事そうに抱きしめたゲブラーは、穏やかな笑みを浮かべた。


「朝からノイナに愛してもらえて、嬉しい」
「そう、ですか」
「ノイナ、好き……」


 過多とも言えるくらいの愛情表現に、ノイナは真っ赤になってしまう。なんとか自分も表現しようと彼を抱きしめても、本当に伝わっているのかと心配になった。


「ともかく、朝ごはんにしましょうか。用意しますから」
「うん」


 ゲブラーが家にやってくるのは、スタールの一件以後初めてだった。あのときも大したもてなしはしていないため、実質初めてのお宅訪問、というところだろう。
 普段ホテル住まいのゲフラーはもちろん持ち家などはない。そう考えると、今後はたびたび彼が家にやってくるのかなとも思う。


(家の鍵、渡しておこうかな……そういえば)


 手早く朝食の準備をしながら、ノイナは自分の背後に立つゲブラーに尋ねた。

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