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19-01 話し合った結果は

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 会議、もとい話し合いは踊る。そのままノイナの自宅で妥協点を探して三人で話し合うも当然ながら結論は出ず、平行線のまま時間だけがだらだらと過ぎていく。

 なおノイナの家の割れたガラスは片づけた。驚いたご近所さんや大家さんにも説明済みである。弁償はゲブラーがちゃんとしてくれるとのこと。
 職場にはスタールがしばらくノイナも休暇を取ると連絡してくれたらしい。しばらくとは、一体ナニをどれくらいまでするつもりだったのかと思ってしまうが。


「もー、面倒臭いからさ」


 一応ナイフは仕舞ってもらったが、未だにゲブラーは殺気を放ちながら言う。


「あんたのこと殺していい? そうすれば万事解決だよね」
「ちょっ……そんなのダメですよゲブラー!」
「なんで? そもそもコイツが急にノイナを掻っ攫っていこうとするからこんな拗れてるんだよ、分かる? どう考えても邪魔者はこいつでしょ」


 敵意剥き出しのその言葉に、だがスタールは動じない。さすがは百戦錬磨の諜報員、殺害予告だけで動揺をみせるようなことはしない。


「暴力だけはやめましょう? なんかもっとこう……」


 なんとかして二人の争いは避けたい。そして同時に、この混沌とした状況も解消したい。
 とにかく一旦話題を変えてしまえと、ノイナは口を開いた。


「平和的に解決しましょうよ! えっと、たとえば腕相撲とかで!」


 我ながらなんとひどい提案だろうと思った。腕相撲の勝者によってはそのまま結婚し将来の生活まで決まってしまうというのに、それでいいのかと自分で自分にツッコミを入れてしまう。
 二人もまったく同じことを考えていたのだろう。だが呆気に取られた様子のゲブラーはなにかを思いつくと、ノイナの手を掴んだ。


「じゃあ、ノイナを落としたほうの勝ち、とかでもいいってことだよね?」
「え? ま、まぁ、殺し合いにならないなら、私は全然、構いませんけど……」


 そう言葉にしたところで彼女は首を傾げる。
 ちょっと問題発言だった、そう思ったのも束の間、ゲブラーはノイナを抱き寄せるといやらしく腰を押し付けてくる。


「なら、今から裸になって一つになろう、ノイナ。ついでにアイツに見せつけてやろうよ、ノイナが俺に抱かれて気持ちよぉく落ちてく様を」
「なっなんでそんな話になるんですか!」
「それは聞き捨てならないね」


 挑発的なゲブラーの言葉にスタールは眉根を寄せると、彼からノイナを引き剥がした。そしてノイナを背後から抱きしめると、耳元に唇を寄せる。


「経験も技量も圧倒的に僕のほうが上だ。僕とするほうがノイナも気持ちよくなってくれるだろうし、僕の技術なら疲労を最小限に、より長時間快感を得られるとも……一晩中ずうっと、イかせてあげる」


 低く淫靡な響きを持ったスタールの声に、ノイナは背筋がぞわぞわしてしまう。この発言だけで身体の奥が熱くなってしまいそうだ。


「いーや、ノイナと俺の身体の相性は最高なの、ノイナが一番気持ち良くなれる男は俺なの!」
「僕の技量は相性のいかんに関わらず相手を虜にできる。既に何度も実証済みだし、同性相手にも効く」
「なっ……ちょっと聞いたノイナ、こんな節操なしのヤリチン男のどこがいいっていうの!」
(めっちゃブーメラン刺さってるな……)


 お前も普通にヤリチンの域だぞと心の中で呟きながら、ノイナは再び二人を宥めた。
 そもそも、なんでもありになってしまったら、最悪自分はこの男二人にさんざん犯されどっちが気持ちいいかなんて聞かれ続ける地獄になりかねない。


「そういう、その、えっちなことはダメです。もっと別の方法で、……口説いてくださいよ」


 一瞬本当にそれでいいのかと自分でも思ってしまう。もしも自分が好きになったほうを選んだとして、選ばれなかったほうはどうなるというのか。もしそれがゲブラーだった場合、彼を懐柔せよという任務は一体どうなるのか。やっぱりスタールが代わることになるのか。


(そもそも……恋愛感情、って、なんだ……?)


 生まれてこのかた恋なんてものをしたことがないノイナは悩む。そうしていると、少し目を伏せてなにかを考えていたスタールがこう提案してくる。


「では、どちらの贈り物がよりノイナを喜ばせられるか勝負、というのはどうだろう」
「な、なるほど、さすがです先輩」


 贈り物だったならば暴力沙汰にはならないし、もちろんえっちなことも始まらない。そう思ってノイナは大きく頷いた。
 ノイナがスタールに賛同するのが気に入らないのか、ゲブラーは不満そうな顔をする。けれどスタールに負けるつもりもない彼は、躊躇することなくその勝負に乗ってきた。


「いいよ。でも勝つのは俺だけどね」
「あ、ゲブラー。前みたいにすごく高いもの買ってきちゃダメですよ?」
「それくらい分かってるって。あんたは俺を子供かなんかだと思ってるの?」


 ちょっとだけ思ってますと言葉にはしないがノイナは内心で答える。だが表情だけで伝わってしまったのか、ゲブラーはむにむにとノイナの頬を引っ張ってくる。


「なら早速用意してくるとしようか」
「え、今からですか?」
「ノイナが後日にしたいと言うのならそうするけど……」


 いきなり始めるのかと思ってうっかりスタールに質問してしまうも、よく考えてみればこの状況が続くほうが問題だ。売り言葉に買い言葉で唐突にえっちな競争が始まりかねない。


「いえ、私、楽しみにしてますね!」
「分かった」


 とにかく落ち着く時間が欲しい。そう思ったノイナはとにかく二人を見送り、少々荒れた我が家を片付けた。


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