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18-01 諦められない慕情*

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「ところで、ノイナ」
「? はい」
「その、結婚の話は、考えてくれた、かな?」
「へ?」


 温度差があり過ぎる質問に思わず首を傾げれば、スタールは少しだけ恥じらいながら話し始める。


「僕は本気だよ。告白してすぐにこういう話をするのは良くないのは分かっている。けれど……今がそのタイミングなんだと思う」
「え、でも」
「なにか懸念事項があるのかな。経済状況は心配せずとも大丈夫だよ。今の僕の金銭状況なら、子供が五人くらいいても私学の大学院まで面倒を見切れる。といっても、産んでくれるのは君だから、子供については君の希望に全面的に従おう」
「……あの」
「育児についても心配しなくていい。僕は子供の育て方も熟知しているし、勉強を教えるのも、より柔軟な思考力を備えるための訓練法にも精通している。君が望むなら、子供の世話でほとんど負担はかけないと約束するよ」


 そこでなにかに気づいたスタールは、少し頬を赤らめながら言う。


「その前に、結婚式について考えるべき、だったかな。いつにしようか。指輪も、ドレスも用意しなければ」
「ほぇ……」
「あと、子供のことだけど……君の希望に従うよ。でも、僕個人としては、その……できれば、多いほうが」


 情報過多。あまりにもいろいろなことを言われすぎて、且つそれらすべてが衝撃的過ぎて、ノイナの頭はあっさりとパンクした。じっとスタールを見つめたまま硬直していると、彼はノイナの手を握ってくる。


「その、きっ、気が早すぎません? 私、昨日告白されたばかりで、返事もまだ……」
「ノイナは僕のことが……嫌い?」


 おそるおそるそう尋ねてくるスタールの姿は、いつもの完全無欠のスーパーマンとは思えないしおらしさだった。大雨の日にダンボールに捨てられてしまった子犬のような哀愁を感じてしまう。


「い、いや、嫌いとは」
「どちらかといえば?」
「どちらかといえば……好き、だと思います、けど」


 そう言葉にすればスタールは花も恥じらうような笑みを浮かべる。それならば大丈夫とでも言いたげに、ノイナの左手をとって指を絡めてくる。


「僕もノイナのことが大好きだよ」
「そっそうです、かぁ」
「君と夫婦になる想像を何度もして、……君との子供が欲しいと、本気で思ってしまうくらい」


 握った手を自分に寄せて、彼はノイナの指、特に薬指に唇を寄せる。伏し目がちの瞳がじっとノイナを見つめて、苦しそうな熱い息が手の甲にかかる。


「君に恋をしてから、初めて家族が欲しいと思った。好きなものも、たくさん増えたんだよ。君に贈る物を選んでいるときも、君が笑顔を見せてくれるケーキも、仕事をする場所でしかなかった本部も……以前の僕からは考えられない。でも、今はそれが幸せなんだ」
「幸せ……」
「だから、君にはなんでもしてあげたいし、君にもっと、笑っていて欲しい……それと同じくらい、僕を見つめて欲しい、僕のことを……好きに、なってほしい」


 熱烈過ぎる告白に真っ赤になっていると、スタールも同じように頬を赤くする。そしてじりじりとノイナに迫って、唇が触れ合いそうなくらい顔が近くなる。


「そんな顔をされると、困ってしまうな……君は僕に、興味などないと思っていたから」
「興味ない、なんて」
「家に招いたとき、僕には、下心があったんだよ。……そのまま君と一夜を過ごして、先に身体から落としてしまおうと」


 軽く唇が重なって、思わず距離を取ろうとすればスタールの手がくすぐったいほどに頬や耳を撫でてくる。


「ノイナ、あの日のこと、挽回させてくれないかな」
「で、でも」
「君が欲しい……、君だけはどうしても、誰になにを言われようと、諦めたくないんだ」


 スタールはまたノイナを軽く抱き上げると、何度もキスを交わしながらベッドへと運んでいく。これは間違いなく、今からする流れだった。


「遠慮はできない。全力で、君を落としてみせるよ。だから」


 ぎしりとベッドが揺れて、スタールが上がってきてしまう。未だに混乱状態から抜けきれないノイナは慌てることしかできず、そうしているうちに彼に抱きしめられて完全に退路は断たれてしまう。


「ノイナ……僕の家族に、なってくれないかな」
「急すぎませんかせんぱ、んぅっ」


 あっさりとまた唇が重なって、ノイナは呻いた。だが今度は触れるだけでは済まずに、スタールの舌が口内に入り込んでくる。


「んっ、んんんっ!?」


 ぬるりと、あまりにもねっとりと舌が絡みついてきて、それだけで彼女はびくりと腰を震わせる。ちゅくちゅくと口の中とは思えない卑猥な水音を立てて、彼女の口内はあられもないほどに蹂躙されてしまう。


「んぁっ、んぅっ、んんふっ」


 ゲブラーとのキスも凄まじかったが、スタールのそれも異様なほどに腰に来る。ただ舌が触れ合っているだけなのに熱烈に求められている気がして、むにむにと食んでくる唇の感触だけでももどかしさのような快感が下腹部に走る。


「ん……はぁ、……ノイナ、敏感、なんだね」
「はぁ、はぁっ……っん」


 少しだけ嫉妬を覗かせて、またスタールは彼女の唇を奪った。狂おしいほどの想いをひたすらに表現するかのように、深く、甘く、執拗に。
 キスだけでも精一杯だというのに、いつの間にかスタールの手が服の下に潜りこんでくる。まだ着替えていないため、シャツ一枚にショーツだけという格好だった彼女は、いやらしく胸を弄ってくるその手にも敏感に反応してしまう。


「あっ、んんっ」
「……っ、ここも、気持ちいいんだね」
「や、そんな、触りかた……っ」


 蕩けきった表情でくぐもった喘ぎ声を零すノイナに、スタールは悩ましげに眉根を寄せる。ようやく口を離して手早くノイナの服を脱がせると、露わになるささやかな双丘に熱くため息をついた。
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