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15-01 隣人がお帰りです*

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 それから一ヶ月くらいが経過した。

 ノイナの日々は変わっていなかった。本部で書類仕事に打ち込み、週一くらいでかかってくるゲブラーの呼び出しに応えた。最近では呼び出しがあったのを上司に連絡して翌日を休暇にしてもらい、ゲブラーと一緒に昼まで眠るのも当たり前になりつつあった。
 ネックレスの一件で和解して以降、ゲブラーの機嫌も良いようだった。気がつけば彼がナイフ片手に当たり散らしてくることもなく、そして互いの身体をじっくりと感じ合う以外の特殊プレイをすることもなくなっていた。


「……セーフ」


 このころには、ノイナは定期的に妊娠の有無を確認するようになっていた。機関の諜報員はそういう方面の手当てもしっかり受けられるため、一応ゲブラーと一夜を過ごしたあとは薬を飲むようにしていた。


「まぁ、薬を用意するのにお金はかからないし、お医者さんにかかるのも機関で手配してくれるし……いいっちゃいいんだけど」


 あの日以来、ゲブラーは一切避妊しなくなった。それについて説得を試みたこともあるが、彼はのらりくらりとかわすばかりだ。
 薬を飲んで避妊できるのだから、別に彼にゴムをつけろと強制する必要はない。それは分かってはいる。


「でも、もし本当に、妊娠しちゃったら……」


 暗殺者と諜報員。身体だけの関係。懐柔するためだけに行われる性行為。どう考えても不純だ。
 そんな関係の間で子供ができてしまったら、それこそ無責任だ。こんな社会では、うっかりできちゃったなんて別段珍しいことでもないが、自分がそうなるのは避けたい。中絶なんていう手段も当然取りたくはない。


(まぁ、ゲブラーは……)


 ――子供ができたら、あんたに仕事辞めさせて、俺が養ってあげる。なにがあっても俺が守ってあげるから
 ――もう、あんたに嘘は言わない


 変なところで責任感の強い彼のことだ、もしも本当に子供ができたら大事にしてくれることだろう。


「…………」


 なぜかそれで納得してしまいそうになっている自分に気づき、ノイナはじわりと顔を赤くした。いいように流されているような気もして、ちょっと落ち着かない。


「ん……そろそろ、だよね」


 右耳に触れてみて、熱や痛みなどがないことを確認する。健康体故か体質のおかげか、けっこう早いうちから耳の調子は良いようだった。
 ピアス穴が安定したころくらいに、恐らくゲブラーから連絡があるとノイナは考えていた。その予想は見事に的中し、彼女は翌日彼にいつもの呼び出しを受けた。


「んー、大丈夫そうだね」


 穴の様子をゲブラーに見てもらい、長らくつけっぱなしにしていたシンプルなピアスを外してもらう。無事にピアスホールは出来あがったようだった。
 次に何をつけるかは自分で決められるんだろうか。そう思っていると、事前に買ってきたのか彼は別のピアスを取り出した。


(赤い石のピアス……)
「はい。こっちも何ヶ月かは外しちゃダメだから」
「分かりました」


 ノイナが素直に頷けば、ゲブラーは満足げに笑った。手で優しく彼女の耳の輪郭をなぞって、なぜか上機嫌そうに髪を撫でてくる。
 そうしているとノイナは見慣れないものが彼の左耳にあることに気づく。


「あれ? ゲブラーって、ピアスつけてましたっけ?」


 よく見れば先ほどノイナの右耳につけたものと同じデザインだ。なんでずっと気づかなかったのだろうかと思っていると、彼はいやらしく笑いながらノイナに顔を近づけてくる。


「さぁ、どうだったかな……ね、キスしよ」


 受け入れるようにそっと目を閉じれば、彼の甘い吐息がかすかに頬にかかる。そして柔らかい唇が触れ合うのだ。

 いつしかゲブラーはことあるごとにキスをするようになって、ノイナは長ったらしい彼の口づけに翻弄された。キスだけでイけそう、なんて言われるのも頷けてしまうほどに、艶かしく舌と唇が触れ合うだけで彼女の大事な場所はひどく濡れてしまう。


「はぁ……キスだけでこんなにびしょびしょにして、ノイナは変態さんだなぁ」


 キスのあとは必ずノイナの秘処に触れて、そこがぐっしょり濡れているのを確認した彼が嬉しそうに笑う。そのまま華奢な指が中を弄って、ぐちゅぐちゅといやらしい水音を立てていく。


「変態じゃないですっ」
「あは、説得力ないよ。繋がってるときもキスしたらすごい締まるし……ん、思い出したら、もう我慢できなくなってきたな」


 荒々しく服を脱がされ、ゲブラーも自分の服を脱ぎ去る。露わになる男根はすっかりその気で、早くノイナが欲しいと先走りを涎のように垂れ流していた。


「おいで、ノイナ。またたっぷり可愛がってあげる」


 蠱惑的な響きの言葉に、ノイナの身体も疼いてしまう。差し伸べられた手をとって彼の上に跨がった彼女は、ゆっくりと自分から腰を下ろしていった。

 そんなふうに、二人の情事は始まる。
 一週間分の欲求を発散させるように身体を深く交わらせて、溜め込んだ彼の精を奥深くにたっぷり注ぎ込まれる。もちろんそれは一回では終わらずに、体位を変えながら何回も何回も、狭い胎の中がいっぱいになってしまうくらい、熱くて濃厚な白濁は吐き出される。
 中に射精されるたびに得る快楽は麻薬のようで、どんどん彼女の身体を堕としていった。いつしかどくどくと脈動を感じながら下腹部が満たされる心地に、安心感なんてものを覚えてしまうようになるくらいに。


「中出し、きもちい? すっごく、イイ顔してるよ、ノイナ……」


 舌先に繋がる糸はそのままに、緩んだ笑みを浮かべたゲブラーは言う。しっかりとノイナをその腕に抱いて、恍惚とした彼女の顔を熱のこもった視線でじっと見つめた。


「ん……、きもちい、です」
「っ……ああ、じゃあ、もっとシようね。俺もまだまだ、ノイナの中に出したい」


 深く手を繋いで、唇を交わらせて、また一番奥でお互いを感じた。気が済むまで行為を続けたあとは一緒に入浴して、抱きしめ合いながら眠った。そして何事もなくゲブラーと別れた。

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