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「やっぱりあんたの首元は、派手すぎないほうが似合う」
「……え?」


 ノイナが思わず声を上げるのと同時に、彼は彼女の首元に唇を寄せた。舌が首筋をなぞったかと思えば強く吸いつかれる。それに驚いていれば彼は別の場所にも吸い付いて、好き勝手キスマークをつけ始める。まるで所有印を刻むかのように。
 だがそれよりもさっきの言葉だ。彼はやっぱり似合うと、そう言ったのだ。


「ゲブラー、その、やっぱり、って」


 おそるおそる尋ねれば、一度首元へのキスは止む。けれど今度はがぶっと歯で噛みつかれ、ノイナはか細く悲鳴を上げた。


「なんとなく買ったのは本当」
「そう、そうなんですか……?」
「でも……どうせあんたに贈るだろうなとは思ってたし、今思えば、少しはあんたのこと、考えて選んでたのかなって、思う」


 ぼそぼそと本心を告白するゲブラーに、ノイナは目を丸くする。顔は見えないがそれでも彼の姿にどこか寂しさを感じて、そっと彼の頭を撫でてやる。


「だから、その……あのとき」
「は、はい」
「ごめん」


 まさかと思った。まさかあのゲブラーの口から謝罪が出るだなんて、まったく想像していなかった。
 どきどきと心臓が早鐘を打ち始めて、なぜかノイナは無性に嬉しくなってしまう。それはどこか、子供の成長に感動してしまう親の気分だった。


「俺、あんたに、……嘘吐かないって、言ったのに……」
(あっ、暴言のほうじゃなくてそっち!?)
「でも、嘘になっちゃったから、ごめん。もう、あんたに嘘は言わない」


 ゲブラーからの信頼のようなものを感じる。嘘は吐かないと、その言葉を発したのがたとえ恐るべき暗殺者なのだとしても、それはとても誠実な響きを帯びていた。


「まぁ、自分の気持ちをちゃんと理解するのって難しいですから。だからノーカンですよ!」
「あんたってたまに変なこと言うよね」
「変って、せっかくフォローしてあげてるのに……!」


 ノイナがそう言えば、ゲブラーはいつもの笑みを浮かべた。優しく彼女の頬に触れて、しっかりと彼女の胸元から顔を視界に入れると、少しだけ表情を柔らかくする。


「ん、似合ってるよ、ノイナ」
「ふぇっ」
「一生外さないでね……って、入浴中は邪魔だし、小心者のあんたがずっとつけてられるとは思えないから、そんなことは言わないけど。でも」


 彼の舌がまたつうっと首筋をなぞる。深く抱きしめられるのと同時にまた唇が触れて、ちゅうっと強く吸いつかれ、ねっとりと跡を舐め回される。


「俺と会うときには絶対つけててね。つけてなかったら、あんたの首を切り落としてあげるから」
「罰がすごく重い……」
「当然でしょ? さて、ネックレスの件は解決したし、あとは穴を」
「やっぱり開けるんですね……!?」


 もう一度ピアスガンを手に取ったゲブラーは、しかしなにかに気づいて固まる。どうしたのかと彼の視線を追えばノイナの胸元、正確には服の隙間から覗く下着に行きつく。


「これ」


 指でぴんとシャツを引っ張って、ゲブラーはその中を覗き込んだ。自分から言う前に気づかれてしまい、ノイナはじわりと顔を赤くする。


「その……怒らせちゃったので、一応、ちょっとは、楽しませようと」
「へぇ、へえぇ、へぇええ……」


 勝手にノイナのシャツのボタンを外して、露わになるランジェリーにゲブラーはいやらしく笑う。そして下半身も見ようとロングスカートを剥ぎ取り、興奮した様子で熱く息を吐いた。
 家で着替えてきたノイナは、別の下着をつけてきた。それこそ実用性度外視のセクシーランジェリーというものを。


「気合い入ってるじゃん、ノイナ。なに、仕事中も着てたの?」
「そんなわけないでしょう、着替えてきたんです」
「そうなんだぁ」


 舐め回すようにゲブラーはノイナの格好を見つめる。
 上はなにも隠す気のない透け透けの白のベビードール。腰には同じ白のガーターベルトがあり、上品な白いレース付きのストッキングと繋がっている。そして大事な場所を隠しているはずのショーツは明らかに布面積が少なく、大事な場所も後ろ穴もほとんど露わになっている。


「わお、こんなのもうモロ出しじゃん。歩いてるとき、すーすーしたでしょ」
「そ、そりゃあ……」


 しないほうがおかしい。そうノイナが答えると、身を屈めて秘処をじっくり眺めていたゲブラーは身体を起こした。
 その拍子にノイナは見てしまう。服の上からでも分かってしまうほど、ぱんぱんに膨らんだ彼の下腹部を。


「はぁ……あんたを呼び出すまで何人か引っ掛けたけど、どうにも勃ちが悪くってさ」


 かちゃかちゃとベルトを外して、彼は見せつけるように膝立ちになってノイナの眼前にそれを晒した。
 物欲しそうに先走りをだらだらと零して、腹につきそうなほど反り勃った男根に、ノイナは顔を真っ赤にする。


「すごいね、もう、痛いくらいに勃っちゃってる」
「……それは、よかったです」
「耳に穴開けるのは終わってからにしよう。危ないからね」


 それじゃあと、服を脱ぎ捨てた彼はノイナに微笑みかけた。


「間が空いちゃったぶん、いっぱい楽しもうか」



13 了
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