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10-03 *

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 さあっとシャワーが床を叩く音で、耳がほわほわする。喘ぎ続けて掠れた喉が、僅かな湿気で潤っていく。
 眠たい目を擦りながら朝、ノイナはゲブラーと共に浴室に居た。


「ん、んぅ……」
「眠たい?」
「そりゃあ……寝ずにずっとシてたんですよ、眠いに決まってます……」


 慣れた様子でノイナの身体を洗ってくれるゲブラーに、彼女はもはやされるがままという状態で身を預けていた。正直、今日の行為は玩具で遊ばれるよりもずっとハードだった気がする。
 なぜか身体を重ね始めたゲブラーははりきっており、ノイナは朝まで延々と可愛がられ続けた。さすがに突っ込まれ続けたわけではないが、休憩中も胸を舐め回されたり、首筋や脇などを慣らすように触られた。


「ノイナは体力があって、俺を受け止められるって思ってるから、やめどきが分からないんだよなぁ」
「さすがに、貴方と比べたら全然、体力ないですよ……ん、んんっ」


 彼の指がつぷっと中に入って、浅く掻き回してくる。散々弄られた陰核も綺麗に泡で包まれて、皮の隙間までじっくりと洗われる。


「そこは、っ自分で、できます」
「いいじゃない。いっぱい俺を気持ち良くしてくれたここに、ちゃんとお礼しないと」
「そういうのいいですから……」


 いやらしい水音を立てて中を弄られ、ノイナは彼の腕に抱かれながら快感に震える。あれだけしてもまだ気持ち良くなれる自分に、軽く引いてしまいそうだった。


「……ノイナ」


 そうしていると足の間に屹立が挿し込まれて、彼女は目を丸くしてしまう。性欲という意味では、本当にこの男には驚かされるばかりだった。


「もうちょっと、足閉じて」
「貴方も、まだできるんですね……」
「ん……ノイナの感じてる顔見たら、勃っちゃった」
「もう……」


 仕方なく足を閉じれば、彼のものが股の間を擦りながら行き来する。それをぼうっと眺めて、彼女は今の彼が避妊具をつけていないことに気づく。


(まぁ、入浴中にはつけないよね……)


 一緒に入浴するのは、地味に最初に会ったとき以来だ。いつも行為前に別々に済ませるか、朝は目が覚めたらゲブラーがいなくなってることがほとんどだからだ。


(ゴムつけてないと、こんな、感じだったっけ……)


 大事な場所に直に触れるその感触に少しだけぞわぞわとして、ノイナは思わず壁に手をついてしっかりと立った。少しだけ尻を突き出すような形になれば、ゲブラーもしっかりと彼女の腰を掴んで割れ目に擦り付けるように押し込んでくる。


(これ……もし、入っちゃったら……)


 いやらしい音を立てて擦れ合う雌雄に、ふとノイナはそんなことを思ってしまう。じわじわと広がっていく快感と交わっているかのような体勢のせいか、また身体が熱くなっていく。
 なぜかゲブラーもずっと黙っている。それを不思議に思いながら、高められていく身体を彼女は感じ入った。


(大丈夫、ゲブラーはそのへん、すごいしっかりしてるから……なんでか、わからないけど)


 そのままじっとしていれば、ノイナが軽く果てるのと同時に太ももに挟まれた怒張が震える。白濁が足をべったりと汚して、けれどすぐにシャワーで流れていってしまう。


「はぁ……ノイナ」
「なんですか?」


 強めにゲブラーに抱きしめられたかと思えば、彼は甘えるような声で囁く。


「口でして」
「……まだするんですか」


 とにかく身体を洗い流して、シャワーを浴槽にかけ直したあと、壁に寄りかかるゲブラーの前にしゃがみ込んだノイナは、なぜか既に元気になっている彼のものを口で愛でた。


「いやぁ……朝のフェラはいいね」
「んっ、ん……それは良かったですね」
「今度、朝勃ちしてたら……はぁ、ノイナにそのまま、してもらおうかな」


 少しずつ腰を揺らしながら、ゲブラーはそんなことを言う。相変わらず頭の中は快楽で一色だなと思いながら、だいぶ慣れた様子で彼女は強く彼のものに吸い付いた。


「朝って、んぅ……、ゲブラー、ほとんどいないじゃないですか」
「まぁ、そうだね。仕事とかあるし」


 ならばそんな機会はないと脳内でノイナはツッコミを入れる。それを知らないゲブラーは、自分のものをしゃぶるノイナをじっと見つめて、彼女の濡れた髪を優しく撫でた。


「じゃあ、ノイナ……俺と一週間くらい一緒に行動してみる?」
「んんっ……?」
「そしたら、毎晩俺とセックスできて、俺の朝勃ち現場にも立ち会えるよ」


 そんな奇跡の瞬間みたいに言われても困る。そう言い返そうとすれば、ぐいっと彼は腰を押し込んできて、そのまま激しい抽挿を始める。限界が近いらしく、その腰遣いは艶かしく、余裕がなさそうだ。


「ああでも、っん、仕事中、ノイナをどこに、置いておくか……はぁっ、考えるの、面倒だな……やっぱ、やめとこう、多分邪魔だろうし」
「んんぅっ、んっ、んむっ」
「今のままでも、俺は十分満足だし……朝だって、ノイナを朝に呼び出せば、いいし?」
「んぅっ! んんっ!」
「あはは、咥えながら抗議してるっ」


 次第にもどかしそうに息を吐き出して、快感と幸福感で緩んだ表情を晒しながら、ゲブラーはノイナの口を好き勝手味わう。そして迫り上がってきた精を思いっきり、その喉奥に吐き出した。


「ん、ふ、ぁ……っ」


 もう何度目かになる口内での射精を、ノイナは少しだけ顔を歪めながらしっかりと受け止める。ぴくぴくと震えて鈴口から精を迸らせるそれをしっかり舌で舐め回していれば、気持ち良さげにゲブラーが甘く声を漏らした。


「……俺の舐めてる、あんた見るとさ」


 いつものように彼のものを綺麗にしていると、そうゲブラーは呟く。


「なんかまた勃ちそうになるんだよね」
「っ! もう、しませんよ」
「ん」


 しっかりノイナが精液を飲み込んだのを確認して、ゲブラーは満足げに頷く。
 その後は彼の腕に抱かれながら一緒に浴槽に浸かってゆっくりした。その間ほとんど会話はなかったが、不思議と空気は悪くなかった。

 そして着替えを済ませ、二人でホテルから出たとき。これでようやく任務終了かと思っていたノイナを、ゲブラーが呼んだ。


「なんですか?」
「これ、あんたにあげる」
「?」


 差し出された小さな箱に、ノイナは首を傾げる。これは一体なんだろうと睡眠不足の頭で考えていると、ゲブラーの手が頬に触れた。


「ゲブラー、これってなん」


 これはなんだという言葉は遮られる。気づけば目の前に目を閉じたゲブラーの顔があって、唇には柔らかいなにかが触れていた。
 一度二度と唇を食まれて、ぺろりと舌が舐めてくる。すぐに半開きの口から舌が入り込んで、いやらしく彼女の舌を捕らえてくる。


「ん、んっ……!?」


 思わず呻き声を上げてしまったのは、彼女にも理由が分からなかった。ただゲブラーのキスは妙に腰に来て、彼のそれが口内を掻き回すたびにびくびくと身体が震えてしまう。


「ふ……んっ、んんぅ……」


 ねっとりと舌に絡みつかれるだけで、気持ちいい。朝っぱらから、それも外での行為だということもすっかり忘れて、ノイナはそう思ってしまった。

 唇が触れてから十数秒ほどで、彼は離れていく。けれどまるで数分くらいキスをしていたかのような錯覚に陥ったノイナは、完全に思考停止していた。
 舌先を繋いでいた唾液の糸がプツリと切れて、それと同時にまた触れるだけのキスをされる。そして目の前の男は、柔らかくノイナに微笑みかけた。


「またね、ノイナ」


 軽く手を振って、赤髪の男はノイナに背を向け、どこかに歩いていってしまう。
 それを呆然と眺め、その手に謎の贈り物を持った女は、ぱちぱちと瞬きをした。


「へ…………?」


 そんな、普通かどうかよくわからない、一日だった。



10 了
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