秘密の多い私達。

堂島うり子

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第3章

2人の秘密

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「車で待っていたら良かったのに」
「荷物多いから手伝ったほうが良いと思って」
「すぐだよ」

 荷物を手に店から出てきた社長さんと一緒に車に乗って帰宅。
一応、念の為に周囲を確認して先程の彼女が居ないことを確認。
 同じ会社だから当然社長の顔はご存知だろうから。

 もし一緒に買い物してると知られても深い所までは知られていない
と思うので。どうとでも言い逃れは出来るんだろうけど。
 自分が苦しくなるような嘘は出来るだけ避けたい。

「創真さんの力でエレベーターを使わずに秒で部屋に行けませんか」
「そんな能力があったら間違いなく君には階段を使わせる」
「いっ…いじわるっ」

 小さい袋を持ってマンションの長いエレベーターに乗り部屋に到着。
リビングに入るとどっと疲れが出てソファに座るともう動けない。

 買い物していた彼女はここから料理をし始める訳で。やっぱり作るより
出来たものを食べたほうが良いと思っちゃう。
 ぐったりな私に比べてテキパキと片付けと準備をする社長。

「君は初めての体験だからね。少しずつ慣れていくんだよ」
「は、はい……頂きます」
「まだ飲んでないのにもう顔が真っ赤だ」

 だって何となく言い方がいやらしいんですもん。

 買ってきたワインをグラスに注いで渡されているだけなので何も
変な意味じゃないのに。おつまみも頂きながら気持ちを落ち着かせる。
 初めての私のために選んでくれただけあって飲みやすい甘さ。

「ワイン美味しい!!これで私もホテルのバーとかフレンチとか
イタリアンに行ってもワインくださいって言えるっ」
「……うん。言える、ね」
「良いんですよ笑いを堪えないでいっそ馬鹿にして笑ってください」

 どうせ子どもが粋がってるようなものなんでしょう。
 分かってるけどつい一歩進めたって嬉しくて口から出る。

「馬鹿にはしてない。敢えて言うなら君は可愛いすぎるんだ」
「はいはい。創真さんは超セレブさんで超大人さんですもんねぇ」
「君こそ嫌味を感じるんだけど。私が機嫌を損ねると怖いんだよ」
「大人が脅してきた」

 何もなくたってこの人は怒らせたら駄目なタイプなのは知ってる。
 今の所怒られたなんて覚えはないけど。

「君に本気で怒る事は無いけど。先は分からないからね」
「怒るというと仕事でのミスとか遅刻とか…」
「上司から報告が上がってくるなら相応の処分は受けてもらう。
場合によっては他支店に修行に出てもらう事もあるだろうね」
「気をつけます社長」

 会社での決定権を持つ最高責任者が恋人なのは分が悪すぎる。
 ほろ酔い気分が一気にさめる。けど、もう少し質問したくなった。

「まだ何か?」
「じゃあ、もし、お持ち帰りされたら?」
「……ふふ、ははっ。君がお持ち帰り?もちろんそれなりの処罰はするよ。
私と交際しながらよそ見なんて。当然どうなってもいい覚悟があるんだろう?」
「こわぁ」

 ワイングラス片手にそんなニコニコ笑って言われると本気なのか冗談なのか。

 いや、絶対本気だよね。
 よそ見なんてしたら本当にどうにかされちゃうんだ。

 なんだか見つめ合ったら私の心の底まで覗かれそうで怖い。
頭の中のスイッチを何時入れられるか私にはわからないから。

 覗かれた所でいわゆるしょうもない愚かな邪念しかないけど。

「でも今の君は表面上フリーだからね、抑止力がない」
「創真さんだってそうでしょう。隠す必要なくなればいいのにな」
「周囲の大人たちが隠してくれたお陰で知っている人間は少ない。
戸籍上は他人ということになっているし。
暫くは大人しくして様子見をしないとね。だから今は我慢かな」
「はい。でももう少し優しい感じでもいいなと思う」
「君の誘いを断ったりはしてないだろ」
「お断りメールなんてショックで泣くので嫌です」
「なら今の位置を甘受しよう」

 会社では距離があっても家では甘いからいいか。…いや、甘いのかな?

「仕事はこれからいっぱい経験して知識を蓄えられるけど。
人間関係は難しい。だからって避けてても身につかないし、
いろんな人と付き合っていきたいなあと思って」
「会社内のビジネスの話だよね?」
「当たり前ジャナイデスカ」
「……」
「こ、今後の目標は人間スキルを上げて昇進していい部屋借りて
車買ってエステ行くんです!お夕飯は手作りヘルシー料理!」
「君って清々しいほどに欲望の塊だな」
「創真さんとはもっといっぱいしっかり愛を育みたい」
「恥ずかしいことをよく真顔で言えるね」

 お酒は程々にして夕飯を頂いて後はもう何もしないで寝たいと思うけど、
普通に明日会社があるのに風呂に入ってないのはよくないというのは頭にあった。
 だからせめてシャワーを浴びて顔の手入れも雑にだけどしてから眠る。

 楽しいんだけど、もう少しゆとりのある生活がしたい。


「……あれ」

 抱きつていた大きなぬいぐるみがぐわっと動くような夢を見て。
ハッと目を開けると大きなぬいぐるみ。

 じゃない、男性の胸板。
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