秘密の多い私達。

堂島うり子

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第3章

極秘デート?

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「社長こちらでしたか」
「何か問題でも」

 エレベーターが開くと同時に先に乗っていた女性と目があう。
 上階で毎日顔を合わせ仕事をする主任秘書。
 
「問題はありません。ただ、お部屋にいらっしゃらないし
お昼のご予定を伺っていなかったので」
「そうだった。私は気にしないでいいから。適当にコンビニにでも行く」
「ケータリングしたお弁当を余分に用意していたのでよろしければ
いかがでしょう?今から下階へ移動するのも時間が掛かりますし」
「助かるよ。休憩時間に気を使ってもらってありがとう」
「いえとんでもない。お部屋にコーヒーをお持ちしましょうか」
「君も昼休憩中だろう。気にしないでいいから」
「分かりました。あの、差し出がましいようですが会議室で何を?
スケジュールには入っていので私の漏れでしたら至急お手伝いを」
「仕事ではくて実はここだけの話しなんだが極秘のデート中なんだ」
「あら。社長でもそんな冗談を仰るんですね。ふふ。あ、お弁当持ってきます」
「……」

 廊下で微かに声がしたかと思ったら5分もしないで戻ってくる。
手にはお店のロゴの入ったしっかりとした箱。
 あんなおしゃれな箱に入ったお弁当なんて売店で売ってた?

「社長クラスになると弁当も違うんだ」

 覗き込んだら栄養バランス重視で油っけほぼなし。
みずみずしい野菜が美味しそうな弁当で絶対に高い。
 食べたいものだけ詰めた自分のお弁当が恥ずかしい。

「デートしてると言ったら冗談と思われた」
「何暴露してるんですか。でも、それはそうかもですね。
社長は社員や他の女性と目立った浮名を流したことはないし。
噂も無い。仕事に真面目な社長ってイメージありますから」
「そうなのか」
「良いじゃないですか。軽く見られるよりは堅物の方が」
「これは案外咲子と堂々と歩いても何も思われないかも知れない」
「頭良いのに突然のトンチンカン止めてください」

 そもそも社長と噂になる時点で目をつけられてヤバイという事は
噂大好き先輩の男女にまつわる怖い噂話しで痛いほど知ってる。

 噂の的になるという事はその文字のままで攻撃の的になるのだと。
そんな水面下でうごめく女の戦いを生き抜ける気がしない。

 悪いけど勝利は私のものと決まっているのだし。 

「そうだ。君も一緒に来るか」
「え?何処へ?」
「病院」
「一緒でもいいんですか?」
「あの男は君をしっかりと認識しているようだから」
「刑事さん?あの、大丈夫ですか?私足引っ張ってますか?」

 あの人は私達の事を知っているとか?

 私の問いに彼はそっと頭をなでて笑った。

「大丈夫だからさっさと食べてしまおう。時間は有限だ」

 食後のまったりタイムは家から持ってきた安全なお茶を頂く。
あの時私が運んできたお茶はどうなったんだろうかと聞いてみると
警察が成分を全部調べたそうで、もちろん問題なしただのお茶。
 
「私とって言いました?」
「いや。デートとだけ。安心したろ」
「複雑」
「おいで」

 誘われるままに彼の膝に座るとふんわりと包まれるぬくもり。
耳の後ろに感じる吐息。触れられてなくても何故かキュンと閉まる体。
 振り返ったらどうなるのか分かってて、私は振り返り。

「……ぅ…」

 ちゃんと言葉を使えないような甘い時間を過ごす。


 お昼休憩終了5分前。

 会社内では誤魔化しきれないような事はしないようにしている。
けど、一応トイレで身なりを整えて意味もなく制汗剤を振りまいて。
 誰かに見られてはいないかと常に緊張しながら自分の席に戻る。
 
「おかえり」
「はいっお疲れ様です」
「なにそんな驚いた顔して。はいこれ午後からの分ね」
「は、はい。やります」
「冗談。一緒にやりましょ。貴方にもっと覚えて欲しい作業もあるから」
「はい!」

 やった。新しい段階に上がれた!!

 真新しいメモ帳に走り書きでメモをしながら午後からの殆どを
先輩に教わりながらPCと資料と睨み合って終える。
 電話対応をする機会もどんどん増えてきて若干テンパるけど。

 まだ会議や打ち合わせだの小難しい話をされるよりはマシ。
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