秘密の多い私達。

堂島うり子

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第2章

部屋にて

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「仕事の話じゃない。今のは警察からだ」
「休日まで電話してくるって。本当にしつこい」
「いや、疑っている訳ではなくて……」
「というと?」

 何か新しい情報が手に入ったとか?
 にしては嫌そうな雰囲気で強引に電話を終えていたような。

「学生の頃に一度だけ同級生だった男に助言をして。それがいけなかった」
「というと」
「警察から捜査の協力を求められた」
「すぅごぉい」
「そのキラキラとした瞳を止めてくれるかな。何だか鬱陶しい」

 警察からの協力依頼。

 そんなドラマみたいな展開ある?私は飲み物を取りに行くより
も先に社長の隣りに座って詳しい会話の内容を求める。
 相手はうんざりという顔だけど。

「同級生か。そうですよねもちろん居ますよね。
しかも今は刑事なんですね?へえ。色々裏話し聞けるんだろうなぁ」
「他人の下世話な話を聞いてどうする?後味悪くゾッとするだけだ。
物騒だし関わり合いになりたくない。だから毎回断ってるのに」
「捜査協力……、あ。いいの浮かんだ。天才社長の華麗なる推理事件簿」
「君、話しを聞いてる?」
「となるとその刑事さんがワトソン…いや、そこは譲れないなあ」
「聞いてないね。聞かない子だよね君は。……はあ、全く」
「それでどうするんですか協力」
「断ったに決まってるだろ。私がそんな無謀な冒険をするように見えるか?」
「えー」

 タイトルも表紙も頭に浮かんでいて完璧なのに。助手は駄目でも
ヒロインポジションで妥協するし。でも彼は珍しく眉間にシワを寄せて
本気で嫌がっている様子。
 こんなにも不愉快そうな顔を見るのは久しぶりだ。

「期待に添えなくて悪いね。でも、あの件はそれほど悩まずとも解決するよ」
「どうしてそう思うんです?」
「彼女からやっと話を聞けるようになったそうだから。正確には明日。
そこから彼女の行動を聞き出せば犯人像は狭まるだろう」
「はー」
「女性がそんなだらしない返事をしない」

 もしかして最初から事件の大体の目星はついていたのかも?

 平均のちょっと下くらいの頭脳な私でも分かるくらい社長は頭脳明晰。
社長業の他にも何かもっと他にも使えると思っていたけど。

 警察が目をつけるレベルだとは。刺激的な話しが聞けそうなのに、
 当の本人は決まったルーティンを繰り返す人生で良いと思っているけど。

 社長さんは面倒そうに視線を本に戻し再び読書タイムへ。

「犯人はお前だ!」
「……煩いよ」
「もしもですよ?もしも犯人を追い詰める時はやっぱり何か
カッコいい決め台詞とかほしいですよね?」
「……」
「ふっ。私はぁ最初から貴方が犯人だと分かっていたんですよぉ」
「……」

 ソファに足を組んで座って本を読む格好のまま微動だにしない。
 流石にちょっとこれは興奮しすぎました。
 
「……、最後に創真さんのお部屋に行ったの何時だったかなぁ」

 ちらっと横目に見つつ小さくぼやいてみる。

「知りたいなら教えるよ」
「あのー…まだ何かご不満がありまして?」
「いや?部屋に誘ったら君が面倒だと断ってくれたものだから。
上司でもある私としては気を使っているつもりなんだけど?」
「そうでした?や、優しいなあ……」
「……」

 あ、これまだ駄目なやつだ。

 起死回生の糸口のつもりがこれは墓穴だったかもしれない。
 でもまだ立て直せる!

「行きません?」
「読書中なんだけど。君がどうしてもっていうなら」
「年上が小娘に断られてイジケルとか」
「はい?」
「歳のこと言うと途端に圧が凄いよ。えーっと。……、はい。
どうしてもお部屋に行きたいですご同行願いたいです」
「分かった」

 そう言って開いていた本を閉じたので私は先に立ち上がる。
許可を得たとはいえ部屋主より先に入るのは良くないだろうし
 リビングから廊下に出るドア前で待機。

 少し遅れて来た社長と一緒にドアを開けて廊下に出る。

間取りは3LDKで私と家主と利用してあと一つ残っているけど
今の所物置ですらなく。空っぽで使ってない。
 勿体ないからって誰かに貸すという気も無いらしい。


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