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ウィンストンは王子らしい格好のままソーニャに会いに行った。

「問題は解決したよ、ソーニャ」
「あの……もしかして……?」

ウィンストンの声だが今まで見たこともないような服装と威厳や気品に満ちた表情であり、本当にウィンストンなのか自信が持てなかった。
戸惑うソーニャを見て当然だと考え、ウィンストンは苦笑しつつ答える。

「ウィンストンだよ。今までは偽装していたけど、これが本来の僕の姿なんだ。これでもこの国の王子でね、スタークとは話を付けてきたよ。婚約は解消されたし、今後関わることもなければ親に手出しすることもない。解決したんだ」
「あ、ありがとうございます!」

苦労した分だけ解放された喜びは大きく、ウィンストンの王子という立場を忘れて喜びたかったが、王子を前に平民でしかないソーニャが無礼を働けばスターク以上に面倒なことになってしまうためソーニャは自制した。
婚約関係の問題は解決したとはいえ、まだ解決していない問題もある。
何の対価も要求されずに厚意で力を貸してくれたはずがないのだから。

「それで……どのような代償を支払えばいいのでしょうか?」

何を要求されるかわからず、ウィンストンの目も見れずに恐る恐るソーニャは訊いた。
やはりそう思うよなとウィンストンは苦笑し、ソーニャを安心させるように優しく温かい言葉の響きになるよう意識し、要求を伝える。

「僕と婚約してほしい。大切にすると誓うよ」

考えたこともない言葉だったが、このような場でウィンストンが冗談を言うとも思えず、真剣な表情のウィンストンを見てソーニャの胸が高鳴った。

(ウィンストン……様は王子様。私が婚約者だなんて信じられない。でも……)

ウィンストンの正体を隠した日々を通じて変な人かもしれないが悪い人ではないことは理解しており、ソーニャも本当の自分の気持ちを曝け出したこともあり、婚約を望んだのは全てを受け入れてのことだと考えた。
そもそも王子相手に拒否するという選択肢はないのだが、ソーニャはウィンストンとの婚約に反対する意思はなく、むしろ喜んで応じたいくらいだった。
相手の立場も無視できないが、何よりもウィンストンの真剣さがソーニャに後悔のない決断をさせた。

「よろしくお願いします、ウィンストン様」
「ありがとう、ソーニャ」

夢のような出来事であり、ソーニャは現実感がなかった。
ウィンストンは何も言わず、きっと時間が経てばソーニャも実感が湧くだろうと考えた。

こうして婚約関係になった二人だったが、その事実は公にはされなかった。
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