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第二章 籠城する村への道
小鬼の王
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エレノアとグレイは小一時間ほど、高台の木陰から篭城するノーラス村の様子を見下ろしていたが、一向に事態が好転する様子はなかった。
ただ、悪化する様子もない。状況は完全な膠着状態にあるように見えた。
「膠着しているわね。……小鬼に動きはあったけど、前衛と後衛が入れ替わっただけだわ」
「いわゆる籠城戦だ。攻勢側は堅牢な守りに阻まれ攻め手に欠いている。だが守勢側の村人も、この包囲では外に出られない。セオリー通り、持久戦となりそうだね」
グレイはノーラス村を見下ろしながら淡々と状況を説明した。セオリーという言葉からして集団戦術について知見があるのだろう。
外壁を遠巻きに囲んだ小鬼は、東西二つの門を中心に一〇〇匹以上。矢面側には設置型の大盾が大量に並べられている。小鬼が理知に基づいた統率によって、本格的な攻略を仕掛けているのは明白だった。
対して村側も防御態勢を整えている。東西南北に建てられた四つの監視塔には、それぞれ村の者と思われる射手が配備されていて、射線が通った小鬼に対し牽制射を行い、行動を阻害している。
さらに村を囲う六メートル近くの高さを持つ城壁と、外側に張られた水堀を強引に超えるのは、小鬼の体格では困難に違いない。
だが、村の住民が村の外に出るのは、さらに困難と断言して良い。援軍要請の為に門を開けば小鬼の放つ矢の雨で身体が飾り付けられる事になりそうだ。
そして、西側の少し離れた処に小鬼軍の本体が控えていた。動きをみると交代で前線を張り替えているらしい。
それを含めると優に小鬼の総数は三〇〇体を超え、さらに見えない処に伏兵が控えているかもしれない。ノーラスの兵力がどれ程かは不明だが、単純な数では負けているように見えた。
「小鬼にセオリーなんて分かるのかしら? 私はてっきり野蛮な生物だと思っていたのだけど」
「侮れないよ。人語を解するケースもある。……エレノアさん。本陣に姿を現した、一際大きな小鬼が見えるかな」
グレイが指差した方向には、体格が二倍近くある巨大な小鬼の姿が遠くに見えた。陣のようなものが張られ、さながら総大将のように鎮座している。
小鬼の大半は簡素なものしか身に着けていないが、その個体は立派な鎧で武装をしている様子が窺えた。
「さっきまでは居なかったわね。あれが総大将かしら」
「小鬼王という上位種だ。攻略指揮官の可能性が高い。なかなか手強そうだね」
「王……仕止めたらチェスみたいに投了してくれるかしら」
「可能性はある。だが、指揮官を失った兵が、どういった行動をするか予測が付かない。復讐対象に総攻撃というケースもありえるね」
「……それは笑えないわね」
「指揮官の人望や人数、兵数や兵糧の状況、あるいは地形や天候でも変わってくる。あれを倒して終了とは限らない」
そう呟いたグレイは小鬼王を鋭い視線で見据えていた。
戦術を全くかじっていないエレノアには、グレイの台詞にはある程度の説得力が伴っているように感じていた。少なくとも降伏してくれるとは限らないというのは正しい。
彼はおそらく集団戦についての教育を受けている。お互い詮索はしない事で決まったが、見立て通り、グレイは剣王国の騎士と考えて良さそうに思えた。
「……じゃあ、熾天翼による強襲暗殺案は却下で」
「強襲暗殺とは勇ましいね。……エレノアさん、冗談ではなく行けそうな感じだったのかな?」
グレイは目をぱちくりさせ、信じられないといったような表情をエレノアに向けた。無理もない事だが、冗談として受け取っているようにも見えた。
「今は余裕がないけど魔法力が全快なら倒せると思うわ。でもグレイの言った通り、復讐対象に総攻撃を選ばれたら無事離脱できるか分からないから止めておくけど。……どうしたらいいのかしら?」
「基本的にはノーラス村の人に頑張って撃退して貰うしかない。その為の手伝いはしたいと思っているけど」
グレイは淡々と告げた。この状況を劇的に打開する英雄役になる気はないようだった。
彼が剣王国の騎士だとしたら、立場上、この中立地帯で大々的に肩入れ出来ないのは理解出来る。旅の剣士を装っているとはいえ物事には限度がある。
「グレイ、貴方はどれくらい戦えるのかしら。剣士と言うからには腕は確かなんでしょうね?」
エレノアの質問に対し、グレイは人差し指を立てて、一の字を作った。
「そうだね。例えば小鬼相手なら、一対一で負ける要素はない」
続けて中指を開き、二を作る。続けて薬指を開き三の数。
「一体二でも。一対三でも。基本的には、個人で対処可能な少数ならば、僕は負けない自信はあるよ」
さらに続けて、小鬼王が居座る本陣の大群を指差した。
「けど、あれだけの軍隊を個で捌くのは難しい。囲まれて逃げ場のない状態で、外側から矢の雨が降り続けたら、どんな達人でも死ぬ時は、あっさり死ぬだろうね」
「多勢に無勢だと辛いって事ね。……少しずつ、おびき寄せて倒すって方法もあるかも。何にしてもノーラスの人達と連携を組めればいいのだけど。……何とかして村の中に入れないかしら」
エレノアはノーラス村を眺め、いくつかの光魔法を頭に思い浮かべた。中に入り連携を組めれば、やれる事はもっと多い気がした。
「いっそ、熾天翼で空から侵入しようかしら。でも、弓を持った小鬼の数が多すぎるのが心配だわ。光翼の防護で防ぎ切れるかどうか」
良くない事に、ほとんどの小鬼が弓矢と盾を装備していた。現状、接近戦が行われる見込みが無いので当然だが、今の状況で迂闊に飛来しようものなら、一斉に狙い撃ちにされる可能性が高い。光翼を展開すると同時に衝撃を抑えるバリアを張ることが出来るが、これには耐久度があり、一定以上の衝撃が加わり続けると破壊されてしまう。
「エレノアさん。熾天翼で僕を連れて行くことは出来るのかな?」
「一人分くらいの重さなら運べなくはないと思うけど。……貴方を連れていくと的が大きくなるし飛行速度も落ちるわ。私一人でも到達出来るか怪しいのに、自殺行為もいい処」
「それについては良い提案がある。……エレノアさんは、射撃防御を知っているかな?」
グレイの台詞は、エレノアを驚かすには十分だった。剣の使い手と思っていた彼から、中級魔法の名前が出てきたからである。
「……それが出来るなら、貴方は純粋な剣士ではないわね。何者なの?」
「エレノアさん、お互い詮索は止そうと言ったよ。……それで、僕がそれを使えるとしたらどうだろう」
「そうだったわね。……使えるとしたら私も行けると思うけど。本当に出来るの?」
エレノアは、疑わしそうにじっとグレイを見たが、彼は目を細めて頷いた。
失敗すれば一番危ないのは自らの命であり、少なくとも嘘は言っていないはずである。
「グレイの提案に乗るわ。……少し気が進まないけど仕方ないわね」
ただ、悪化する様子もない。状況は完全な膠着状態にあるように見えた。
「膠着しているわね。……小鬼に動きはあったけど、前衛と後衛が入れ替わっただけだわ」
「いわゆる籠城戦だ。攻勢側は堅牢な守りに阻まれ攻め手に欠いている。だが守勢側の村人も、この包囲では外に出られない。セオリー通り、持久戦となりそうだね」
グレイはノーラス村を見下ろしながら淡々と状況を説明した。セオリーという言葉からして集団戦術について知見があるのだろう。
外壁を遠巻きに囲んだ小鬼は、東西二つの門を中心に一〇〇匹以上。矢面側には設置型の大盾が大量に並べられている。小鬼が理知に基づいた統率によって、本格的な攻略を仕掛けているのは明白だった。
対して村側も防御態勢を整えている。東西南北に建てられた四つの監視塔には、それぞれ村の者と思われる射手が配備されていて、射線が通った小鬼に対し牽制射を行い、行動を阻害している。
さらに村を囲う六メートル近くの高さを持つ城壁と、外側に張られた水堀を強引に超えるのは、小鬼の体格では困難に違いない。
だが、村の住民が村の外に出るのは、さらに困難と断言して良い。援軍要請の為に門を開けば小鬼の放つ矢の雨で身体が飾り付けられる事になりそうだ。
そして、西側の少し離れた処に小鬼軍の本体が控えていた。動きをみると交代で前線を張り替えているらしい。
それを含めると優に小鬼の総数は三〇〇体を超え、さらに見えない処に伏兵が控えているかもしれない。ノーラスの兵力がどれ程かは不明だが、単純な数では負けているように見えた。
「小鬼にセオリーなんて分かるのかしら? 私はてっきり野蛮な生物だと思っていたのだけど」
「侮れないよ。人語を解するケースもある。……エレノアさん。本陣に姿を現した、一際大きな小鬼が見えるかな」
グレイが指差した方向には、体格が二倍近くある巨大な小鬼の姿が遠くに見えた。陣のようなものが張られ、さながら総大将のように鎮座している。
小鬼の大半は簡素なものしか身に着けていないが、その個体は立派な鎧で武装をしている様子が窺えた。
「さっきまでは居なかったわね。あれが総大将かしら」
「小鬼王という上位種だ。攻略指揮官の可能性が高い。なかなか手強そうだね」
「王……仕止めたらチェスみたいに投了してくれるかしら」
「可能性はある。だが、指揮官を失った兵が、どういった行動をするか予測が付かない。復讐対象に総攻撃というケースもありえるね」
「……それは笑えないわね」
「指揮官の人望や人数、兵数や兵糧の状況、あるいは地形や天候でも変わってくる。あれを倒して終了とは限らない」
そう呟いたグレイは小鬼王を鋭い視線で見据えていた。
戦術を全くかじっていないエレノアには、グレイの台詞にはある程度の説得力が伴っているように感じていた。少なくとも降伏してくれるとは限らないというのは正しい。
彼はおそらく集団戦についての教育を受けている。お互い詮索はしない事で決まったが、見立て通り、グレイは剣王国の騎士と考えて良さそうに思えた。
「……じゃあ、熾天翼による強襲暗殺案は却下で」
「強襲暗殺とは勇ましいね。……エレノアさん、冗談ではなく行けそうな感じだったのかな?」
グレイは目をぱちくりさせ、信じられないといったような表情をエレノアに向けた。無理もない事だが、冗談として受け取っているようにも見えた。
「今は余裕がないけど魔法力が全快なら倒せると思うわ。でもグレイの言った通り、復讐対象に総攻撃を選ばれたら無事離脱できるか分からないから止めておくけど。……どうしたらいいのかしら?」
「基本的にはノーラス村の人に頑張って撃退して貰うしかない。その為の手伝いはしたいと思っているけど」
グレイは淡々と告げた。この状況を劇的に打開する英雄役になる気はないようだった。
彼が剣王国の騎士だとしたら、立場上、この中立地帯で大々的に肩入れ出来ないのは理解出来る。旅の剣士を装っているとはいえ物事には限度がある。
「グレイ、貴方はどれくらい戦えるのかしら。剣士と言うからには腕は確かなんでしょうね?」
エレノアの質問に対し、グレイは人差し指を立てて、一の字を作った。
「そうだね。例えば小鬼相手なら、一対一で負ける要素はない」
続けて中指を開き、二を作る。続けて薬指を開き三の数。
「一体二でも。一対三でも。基本的には、個人で対処可能な少数ならば、僕は負けない自信はあるよ」
さらに続けて、小鬼王が居座る本陣の大群を指差した。
「けど、あれだけの軍隊を個で捌くのは難しい。囲まれて逃げ場のない状態で、外側から矢の雨が降り続けたら、どんな達人でも死ぬ時は、あっさり死ぬだろうね」
「多勢に無勢だと辛いって事ね。……少しずつ、おびき寄せて倒すって方法もあるかも。何にしてもノーラスの人達と連携を組めればいいのだけど。……何とかして村の中に入れないかしら」
エレノアはノーラス村を眺め、いくつかの光魔法を頭に思い浮かべた。中に入り連携を組めれば、やれる事はもっと多い気がした。
「いっそ、熾天翼で空から侵入しようかしら。でも、弓を持った小鬼の数が多すぎるのが心配だわ。光翼の防護で防ぎ切れるかどうか」
良くない事に、ほとんどの小鬼が弓矢と盾を装備していた。現状、接近戦が行われる見込みが無いので当然だが、今の状況で迂闊に飛来しようものなら、一斉に狙い撃ちにされる可能性が高い。光翼を展開すると同時に衝撃を抑えるバリアを張ることが出来るが、これには耐久度があり、一定以上の衝撃が加わり続けると破壊されてしまう。
「エレノアさん。熾天翼で僕を連れて行くことは出来るのかな?」
「一人分くらいの重さなら運べなくはないと思うけど。……貴方を連れていくと的が大きくなるし飛行速度も落ちるわ。私一人でも到達出来るか怪しいのに、自殺行為もいい処」
「それについては良い提案がある。……エレノアさんは、射撃防御を知っているかな?」
グレイの台詞は、エレノアを驚かすには十分だった。剣の使い手と思っていた彼から、中級魔法の名前が出てきたからである。
「……それが出来るなら、貴方は純粋な剣士ではないわね。何者なの?」
「エレノアさん、お互い詮索は止そうと言ったよ。……それで、僕がそれを使えるとしたらどうだろう」
「そうだったわね。……使えるとしたら私も行けると思うけど。本当に出来るの?」
エレノアは、疑わしそうにじっとグレイを見たが、彼は目を細めて頷いた。
失敗すれば一番危ないのは自らの命であり、少なくとも嘘は言っていないはずである。
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