優しい時間

ときのはるか

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■エピローグ

エピローグ【完結】

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 榊は瞬が寝落ちてもすべてしてくれているようだった。

 濡れた素肌を柔らかなタオルで包まれ、寝室へと運ばれる、榊の腕に抱かれながら感じる振動に瞬は懐かしさを覚えていた。

 施設にいる時はいつもこうして榊が瞬を抱き上げて運んでくれて、着替えも排泄も全ては榊がしてくれていた。
 瞬はただそれに何も出来ない赤子のように身を任せているだけでいい。
 それがどんな恥ずかし事だろうと、堂島が依頼した瞬への躾だと言われれば逆らう事は出来なかった。

 だがそれもいつしか榊に任せていれば安心していられるという、信頼しか感じなくなっていった。

 タオルに包まれた身体が何処かに降ろされた。前を肌蹴られたのか外気が素肌に触れているのを感じていた。
 脚が持ち上げられ股間を開かれる。

「瞬、久しぶりに管を挿れますよ。力を抜いていてくださいね。瞬のここはずっと使われていなかったせいでまた固く口を閉ざてしまったようですから、しばらくはここをもう一度開く躾をする事にします。耐えられますね?」

 陰経の尖端に柔らかなチューブが宛てがわれた事はわかったが、榊に任せていれば大丈夫だという思いと眠気には逆らえず、コクコクと頷いてしまう瞬だった。
 もう躾は終わった筈なのに、またそこから榊が躾けてくれるのかと思うと、矛盾を感じるどころか、瞬はそれを嬉しいとさえ感じてしまう。
 やがてやってくる尿道括約筋を貫くツンとした痛みさえ今の瞬には、懐かしい痛みに変わっていた。

 そうやっていつも榊は瞬が寝る前には膀胱を空っぽにしてくれた。
 そうすれば少しでも瞬の股間にかかる圧力が緩和され男性としての朝の生理現象である勃起が多少はやわらぐ為だった。

 そしてやがて朝が来ればまた…

「朝になったらお腹の中も綺麗に洗ってあげますからね。今日はゆっくりお休みなさい瞬…」

 やはり榊は瞬が欲しい言葉をくれる。

 唇に柔らかな感触を感じて瞬もつられるように唇を開き、自らふっくらとした唇でそれを受け止めた。
 朦朧とした意識の中で覚えているのは、その甘い口付けまでだった。

 榊に何かをしてもらえるという懐かしい安堵感に包まれていた瞬は、心地よい微睡みの中で、何度も榊に体位を変えられている事は分っていた。
 分ってはいても、何も抗う気にはなれなかった。
 腰が持ち上げられても、動かされても、全てが榊にされる事なら安心して身を任せていられた。
 何もかもが安らかだった。

 そして瞬はそのまま安心して榊の腕の中で完全に意識を手放したのだった。


***

 
―翌朝、榊の寝室に甲高い瞬の悲鳴が木霊していた。

「きゃーーー!何これ?」

 瞬の声に榊も薄く目を開けた。
 瞬は我が身を鏡に映して恥ずかしそうに股間に手を当てていた。
 そんな瞬の横に榊も即座に移動すると、後ろから手を回して瞬の隠している股間からその手を剥ぎ取った。

「何で手で隠すのですか、良く似合っているのに。瞬の小さな膨らみにぴったりのサイズですよ。キツイ事も無いでしょう?」

「きつくは無いですけど、なんか布が少なくて…横から零れ落ちそうで…なんとも心もとなくて…」

「零れ落ちるくらいのそれがいいんですよ。ここをこうすると、もっと可愛くなるものなのです…」

 そう言うと榊は瞬のその股間の布の隙間に指を差し入れ、僅かに開いたそこから瞬の陰茎だけを取り出した。
 するとちょうどその布は瞬の袋のみをすっぽりと包みこんだ。
 丸い膨らみが布に納まり可愛らしく揺れている。
 布から取り出されてしまった瞬の小さな突起は、僅かにその存在を主張するかのように勃ち上っていた。
 そこに榊は柔らかいシリコン製のリングを宛てがい瞬の陰茎の根元までスッと嵌めたのだった。

「やはり通販のおまけでついて来たコックリングじゃ瞬には大き過ぎたようですね」

 確かに今までの躾に使っていた貞操帯に比べれば何の締め付けにもならないくらいに緩かった。
 ただその色だけはピンク色で、瞬の色白の肌に映えそこの可愛らしさが強調される。

 それを榊が瞬の両手を持ち上げて股間が突き出されるように壁の姿見に映し出させるものだから、施設に居た時の事を思い出して瞬の股間がまた更にギュンと頭を持ち上げてしまう。
 すると緩々のシリコンゴムが僅かにだが瞬の股間に食い込んだ。

 白い小さな布と紐だけの下着だった。
 それでも瞬のものなら十分に前を隠す事は可能だった。

 だがしかし、後ろはほとんどというか、まったく布地が無い。
 指を滑らせられれば中をあっという間に弄られてしまう。

「昨日もいっぱい解しておいたお陰で、瞬の中はまだこんなに柔らかい…。もっといっぱいここに躾して欲しいですか?」

 昨晩、瞬が寝落ちてからも榊はずっとそこを手入れしてくれていた事が分かる。 
 初めて雄芯を迎え入れた瞬のそこが傷ついてはいないだろうかと、榊が入念にケアをしてくれていたらしい。
 まだ多少の遺物感はあっても痛みはしなかった。
 指を挿れられそこを掻き回されると、クチュクチュと湿った音が聞こえて来る。
 きっとまだ薬剤がそこに塗り込まれているせいだとは思ったが、その音は朝日が差し込むこの清潔な部屋とは対照的に余りにも淫靡さを醸し出していた。

 その指の感覚に瞬はもっと肝心なところを擦り上げて欲しくなるような衝動を覚える。
 ずっと待ち焦がれていた榊の指先だった。
 もうそれは自分の身体に再び触れる事なんて無いと思っていたのに、今そこにあるのは確かに榊のものだった。

 だがまだ信じきれなかった。

 またそれをぬか喜びしてねだってしまったら急に消えてしまう夢かもしれないという不安が付き纏う。

 正直、そんな夢を何度も見た。
 その都度目を覚ました時、現実を突き付けられて落胆する。

 だから瞬はそれをあえて歯を食いしばって堪えようとした。

 榊はそんな瞬の葛藤など分かるはずもなく、素直に身体は受け入れているのに言葉で返事を寄越さない瞬の口を割るように、焦らしていた新しく教え込んだ瞬の良いところを優しく擦り上げてやった。

「ひぁっ!」

 さすがにそれは夢ではなく現実なのだと瞬も理解する。

 そもそも施設に居た時も夢の中でも、けして榊は瞬の射精を促すような良いところは触ってはくれなかったからだった。
 それを教えてくれたのは一昨日の晩だった。

 新しいそこを刺激されてしまうと、やはり榊の指先の心地良さに負けてあっけなく屈服してしまう瞬だった。

「…ううっ…はぁんっ…しつけ…て…欲しいです」

「瞬は素直だから好きですよ。素直というか…こうと決めた事には揺ぎ無い」

「そう教えてくれたのも…榊さんです」

 瞬の柔軟な身体と心に榊の心もいつも揺るがされていた。

 主人の依頼で躾けている子供に自分の感情を押し付ける事は禁忌である。
 だがもうそれは主人を亡くした瞬にも自分にも関係はなかった。

 その後の人生をどう生きるかの選択は子供に与えられた自由だった。

「瞬、俺の名前は陽仁(ハルト)です。これからは下の名前で呼んで欲しい」

「え?でも」

「いいからハルトと言わないと、瞬の事もこれから堂島って呼ぶ事になりますよ」

 脅しにならないような脅しでも瞬にはそれがこたえるらしい。

「ハルトさん…」

 瞬がおどおどとしながらそう呼ぶと、ふっと榊の表情が和らいだ。

「よく言えました。有栖川にはああ言いましたが、独り立ちできるまでとは言わず、これからも瞬が居たいだけここに居てくれていい。どうせ一人ではここは広すぎると思っていました。それに仕事も手伝ってもらえるとありがたいです」

「嬉しいです。自分で力になれる事なら何でもします」
 
 目を輝かせて榊を見詰める瞬に榊もじっと視線を絡ませる。

「瞬には話して聞かせたい事がいっぱいあります。聞いてくれますか?」

「はい、ハルトさんのこと…もっといっぱい知りたいです」

「ありがとう…瞬になら私…いや俺の過去の事も全部話せる気がします」

 そう言うと見詰め合う距離があっという間に縮まっていた。

 視界が狭まり、吸い寄せられるようにまた唇が重ね合わさっていた。

 温かい唾液が混じりあい、互いの熱がそこから注ぎ込まれていくように感じる二人だった。


優しい時間・エピローグ【完】






★あとがき&ごあいさつ★                  

 この怪しい施設で躾を受ける少年と躾士のお話も、ようやくエピローグで甘く仕上がったような気がします。(どうですかね?)
 プライベートの榊は一人称が『俺』なんですが、本当はもっと口調も荒っぽくなるんですけど、まだ瞬と再会したてという事で、口調は穏やかにつとめました(笑)
 最初書き始めた時、敬語攻めっぽい話を書きたくて始めたのですが、堂島が焦らすものなので、だんだん地が出たりと、榊の性格口調がグラグラしていますが、口調の乱れは榊の気持ちの乱れと思ってご容赦ください(笑)

 このしんどいお話に(ほんと書いててしんどくなりました)
 長い間のお付き合い本当にありがとうございました!

 これからもきっと榊の瞬ちゃんへの躾は続くと思います。
 でもそれが瞬が榊に必要とされている悦びでもあるので、二人の関係は躾ありきと思ってください(笑)
 本当は瞬の乳首の躾とか書きたいお話はいっぱいありますが、またそれは次の機会があれば!
 その時お知らせが届くように「しおり」やお気に入り登録していただけますと宜しいかと思います。
 ではまたいつかお会いできる日までお元気にお過ごし下さい!

ときのはるか(ことRinkでした)


2022年4月1日
近況追記します

完結から随分経ちますがその間もたくさんの方にお読みいただきありがとうございます。
こちらはweb用に書いたものですが
紙媒体にもしてあります。
J・GARDENというオリジナルJUNE・BLオンリーのイベントが年二回春と秋にありそちらに『時の過ぎ行くまま』というサークル名で参加しています。
もし紙の本が欲しいなと思っていただけましたらそちらにお立ち寄りいただくか私のツイッター@rinkskafeのDM(解放中)にお問い合わせください。
一番近い開催は2022年4月3日(日)東京ビッグサイト西2ホール11:00からです
他にも本を出しているのでよかったらのぞきに来てください。よろしくお願いいたします。


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みんなの感想(5件)

2019.12.30 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

ときのはるか
2019.12.30 ときのはるか

白薔薇の光さま
以前これを読まれて傷ついていらしたようなのでとても心配していました。
今回このようなご感想をいただき本当に嬉しいです。
最後までお読みくださった事、大変感謝しています。
コメント送るのは本当に勇気がいる事だとわかっています。なので時間が経っていようとコメントいただけるのは作者冥利につきます。
無事お互いに在るべき処を見つけた二人です。これからも仲睦まじく寄り添いあい暮らして行くことでしょう。
私自身この終着点に辿り着かせるまでいっぱい悩みました。
でも最後は勝手に二人が動き出してくれて(笑)早くくっつかせろと急かされるように書き上げる事が出来ました。
何度も泣きそうになってくださったんですね。
本当に読んでいただきコメントまでくださりありがとうございました。
2019年最後に大きなパワーをいただきました!これで2020年も頑張って書ける気がしてきました!(笑)
ではまた次回作もよろしくお願いいたします!

解除
トリさん
2019.11.11 トリさん

完結お疲れ様でした!!

凄く丁寧な作品だなぁと1話目から思っておりました。榊さん自身の話もあり、心情描写が細かくも、完全な主観でもない…もう凄いとしか言えません!!!

瞬くんも榊さんもいっぱい幸せになって下さい!!!

ありがとうございました!

ときのはるか
2019.11.13 ときのはるか

トリ様

丁寧なコメントありがとうございます!
凄いだなんて照れてしまいます(//∇//)

主人公である瞬くんは受け身が多いのでどうしても榊主体が多かったのですが、榊が書いてて面白くなってしまい、榊の背景を書かずにはいられませんでした。
私の悪い癖なのですが、脇に話がそれるの大好きで(笑)つい榊の過去もチラホラと散りばめてしまいました。

でも、楽しんでいただけて良かったです。
ちょっと他の方から榊と有栖川のお話が読みたいというリクエストもいただいているので、いつかそれも書けたら面白いかもしれません。

私自身、ここまで長いお話になるとは思わなかったんですが、なんとか起承転結してくれて、ホッとしています!

また何か番外編をあげられたら是非読みにいらしてください!
ありがとうございました!

解除
日向 日向
2019.11.10 日向 日向

完全おめでとうございますヽ(*´∀`)ノ
素敵なお話でした~(*´艸`)

ときのはるか
2019.11.10 ときのはるか

日向 日向様
おめでとうコメントありがとうございます!
ようやくハッピーエンドになりました!(よね?汗)
最終的には絶対ハピエンにするぞ!とは思っていても長編というのはどうしても中だるみがあったり、痛い事も出て来るので読者様が最後までついてきてくれるかが不安だったのですが、こうしてコメントを頂けると、一人でも良かったと思って頂けているのが分かり、本当に嬉しかったです。
これからも出来る限り書き続けて行こうと思っていますので、またご縁があったらよろしくお願いします!

解除

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