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第3章 ゆるやかな流れの中で
別れの兆し(3)
しおりを挟むだいぶ深い森の中まで歩いて来てしまったようだった。
だが落葉樹の森は冬の間は逆にその中まで陽が差し込んで来る。
冬の緩やかな日差しが二人を優しく包みこむと、風も無く気温の割には外は暖かくも感じていた。
それはそこに互いの体温を感じているからかもしれなかった。
榊は一旦瞬を降ろし自分のコートを下に敷いた。
そしてそこに自分が先に座り、その開いた脚の間に瞬を手招きして迎え入れた。
こんな風に後ろから抱き抱えられるようにして座ると、ちょっと施術の椅子を思い出してしまう瞬だった。
榊には毎日瞬の恥ずかしいところも全部曝け出しているというのに、いざこうして榊の作ってくれた椅子に座らされると、何故だか戒められている股間がキュンと痛くなってしまう。
瞬はそれを榊には悟られないように平静を装っていた。
その痛みの訳は瞬だって自分でも分かっていた。
そこをきつく戒められているのは、瞬がそこで性的なもの感じないようにする為だった。
そこがどれだけ血流が集まりグンと何かが大きくなろうとしても、きつく絡んだ革のベルトが瞬の股間を戒め引き締める。
訳が分からなくなって何度か気を飛ばした事もあったが、気がつくとそこは何事も無かったかのようにおとなしくなっていた。
瞬はそれが出さずに逝ったのだとは分かってはいないが、その戒めは父が自分に課した課題だという事はわかっていた。
瞬だってここに連れて来られた時に既に十一歳を越えていたのだから、女と男がセックスをして子供が出来る仕組みくらいは知っていた。
それに気の早い同級生がオナニーの話をして盛り上がっていたのも知っている。
自分はまだまだ先の事だとそれに混じる事は無かったが、股間に血液が集まり陰経が大きくなる事くらいは知識として知っていた。
でもそれが出来ないように今は戒められているのだから、それを瞬の父となる人は望んでいない事も理解していたのだった。
榊はその父の希望に忠実に従っているだけだという事も理解している。
きつく戒める革の下着を着けさせたのは榊ではあるが、榊にもそれを着けずに主人の要望を叶える事は難しかったのだろう。
だから瞬も苦しくてもそれに苦言する事なく従っていたのだった。
榊がしてくれる事なら何でも耐えられる。
榊なら自分に出来ない事はけして要求しないだろうと絶対的な信頼を寄せていたのだった。
榊も初めはそれが可愛く健気で、懐いてくれる瞬がただ愛しいだけだった。
だが今はもう見ているだけで辛い。
身勝手な事は分かっていたが、もうここまで成長した瞬を更にきつくそこを戒めるのは、いくら主人に忠実である事が義務付けられた躾け役だろうと無理だった。
だから瞬が十五歳になるその日までに、堂島が迎えに来ないなら瞬のそこを戒めを解き次の段階に進める事を認めるか、堂島自身が瞬を迎えに来るかを選ぶように嘆願書を送るつもりでいたのだった。
このまま躾けを続けたら、瞬の身体も心も壊しかねないと、その保証は出来かねるときっぱり告げるつもりでいたのだった。
その決意に満ちた榊の顔は瞬には見えなかった。
だが、瞬にもなんとなく榊がいつにも増して大人の男らしい匂いに包まれているように感じていた。
それを言葉には出せず、瞬はじっとその膝の間でかしこまり、ちょこんと縮こまっていたのだった。
「寒いですか?」
「いえ、大丈夫です」
「瞬はもうすぐ十五歳の誕生日が来ますね。クリスマスはここでも祝いますが、瞬にとってもお誕生日ですね」
毎年ここでもクリスマスはあった。特にツリーだとか大げさなものは無いが、主人からの贈り物が届いたり食事に小さなケーキが出たり、そうそう滅多に甘いものが出る事もご馳走が並ぶ事も無かったが、施設の食事もこの日ばかりはチキンが出たりもする。
そして榊が言うように瞬のお誕生日は12月25日、キリストが生まれた日と同じ日だった。
今年ももうすぐその日を迎えようとしていた。
ここに居るのに慣れてしまった瞬には、榊に躾けてもらえる全ての事が、甘く優しい時間の中にいるように感じていた。
ここに居れば自分は榊に守ってもらえる。
それが今の瞬には確かな心の支えになっていた。
だがきっとそのままではいられないだろう事も瞬も予想はしていた。
だから、次に榊が何を言うのかも、瞬は心の中で覚悟していたのだった。
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