優しい時間

第1章 執着と躾

主人からのオーダー

この時少年は十一歳だった。

身体はこの一、二年で十分変えられる年頃である。

早い子だと既に精通を迎えていてもおかしくはないだろう。

けれどまだ瞬にはその兆しは無いようだった。

だがこの年頃の子供だからこそ一度快感を覚えればそれを忘れる事は無い。

それはこの男が一番良く知っている事でもある。

ここで子供の躾役となっているチューターと呼ばれる男達は皆排泄管理も射精管理も受けた事のある経験者ばかりだった。

人の痛みも快感も知らない者にこの役は務まらない。

だから彼らに躾けられた少年達は痛みも快感に変える事が出来る身体へと変わっていく。

さてまずは瞬におしっこを極限まで我慢させるところからその躾ははじめられるのだった。

榊は瞬の小さな皮被りの陰経に手を伸ばした。
その瞬間ビクンと瞬の身体が跳ね上がる。

瞬のチューターを務める榊は、今までも様々な子供を躾けて来た。

ただし今回のように念入りに躾を依頼される事は稀である。

その為にもまずこの数日は、瞬の限界を知る事が重要だった。

今日は器具は使わないが場合によっては専用の器具を使う事にもなるだろう。

施設長が言っていた通り、排泄から子供の健康を管理するのもチューターにとって重要な役割の一つである。

排泄には個人差がある。
あまり尿意を我慢させすぎて細菌が繁殖し膀胱炎や尿道炎を引き起こされるのも教育進度に関わる事なので失敗は許されない。
気をつけていても毎年数人はそういった感染症に侵される子供は少なくないのだった。

榊自身の年齢はまだ三十路には届いてはいないと言ったところだろうが、その風貌は落ち着いて見え、瞬には自分より絶対的な大人の男を思わせた。
いかめしい制服が余計子供には圧倒的支配下に置かれているような、逆らってはいけない存在に思わせる。

それに加え、深くかぶった帽子のつばでよく顔の表情が見えない事が、瞬のような真面目で素直な子供には、恐怖心さえ覚えるのだった。
その造りはよく分からなかったが鼻筋の通ったかなりの美形だと言う事はうかがえた。

体格は引き締まった逆三角形でそのストイックな制服の上からでも鍛えられた精悍な身体だという事が伝わってくる。

先程羽交い締めにされるように服を脱がされた時にも、その逞しい腕と胸板の感触を瞬は感じていた。
この人に逆らおうと力では叶わないと。

だから途中で争う事を辞め、身を任せる事を選んでしまった。

実は榊もその瞬の柔軟な精神に感銘を受けていた。

この子なら十分な躾を遂行できると。

そして立派に彼を卒業させれば、榊にも恩恵が与えられる。

なんとしてでもこの少年を主人が満足するよう躾なければならない。

瞬の主人であり父親となった堂島のオーダーは 次の通りだった。

1、全てを主人に委ねられ従順である事

2、どんな時でも恥じらいを忘れず貞淑である事

3、常に主人を愛し、主人から愛される事に喜びを感じられる事

その3つだった。

1と3は割と簡単な事である。
一人孤独に耐えながら調教を受けていればまだ見ぬその主人の期待に応えようとだいたいの子供は早くその責めから逃れたいが為に必死に頑張るものだった。

ただし難しいのは2番目の『恥じらいを忘れず貞淑である事』だった。

それは快楽を教えてしまうとたいがいの子供はその快感に溺れてしまう傾向にある。
恥じらいを忘れ、その快感欲しさに媚びる事を覚えてしまうのだった。

たぶん堂島はその過程を自分で仕上げたいと思っているからこそ、この施設では何があっても恥じらいを忘れないように貞淑に育てて欲しいとオーダーして来たに違いない。

瞬にとって堂島はこの世でただ一人の救世主であると同時に絶対君主である為に、そのオーダーは課せられたのだった。

その難しいオーダーだからこそ、破格の躾料がこの施設に支払われているのだった。