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家族とは
家族だから(4)
しおりを挟む『ただいまとお帰り』の抱擁が終わり互いに体温が少し上がったような気がした。
悠は玄関からリビングへと続く廊下に落としたカバンをそのままにして雫の身体をひょいと横抱きにして抱き上げた。
この抱き上げられる流れには身に覚えがいっぱいあって、それは夕飯には直ぐにはならないだろう事を暗示していた。
それを素早く感知すると雫の股間は従順に反応を示し始めてしまいそうになるから必死にそれを押し留め、平静を装う。
雫と悠の身長差はあまり無い、だがこう易々と抱き上げられると、俺はいつだってお前位ならこうして抱き上げ組み伏せる事は簡単に出来る、だから大人しく抱かれていろと言われているような気になってしまう。
ーううう…帰ってきていきなりするんですか?アレを…
せっかく温めたスープがまた冷えちゃう、でも主菜は大丈夫、こっちは悠が帰ってから温め直そうと思ってたから温めてない。
何度も温め直したオムレツなんて食べられたものじゃ無くなってしまうから、はじめからそれを考えてかなり半熟に仕立てておいた。
それが正解でよかったー
悠はそんな雫の葛藤などお構い無しに歩きはじめる。
「風呂わいてる?」
「うん、四二度で保ってる」
「そう…じゃあ、先に風呂入ろうか雫?」
「い…一緒に…?」
「ああ。どうせ夕飯温め直すのこれからなんだろ?」
「え?うん、まあ…」
相変わらず悠はなんでもお見通しだな…と雫は思うが、悠の家には色んな仕掛けがしてある事は雫だって薄々は知っていた。
ペットを飼ってる家ではご主人様が留守の間にペットが何をしているかをどこにいても簡単にスマホアプリで観察出来るサービスが普通にはびこる世の中なのだから、この家の中に隠しマイクやマイクロカメラが仕掛けられているとしても、もはや普通の事なんだと納得していた。
街の中だってそうだった。
今、世の中は常に街頭カメラが市民の安全を見守っていた。
それがあったって平然と犯罪は起こる。
ただしその事件が起こった際にそのカメラの残した情報が犯人逮捕に役立っているのは周知の事実だった。
だからそれにいちいち反応する程の事では無いと雫は認識していた。
それに悠がそれを仕掛けているのは終始それを見て楽しんでいる訳じゃ無い事も今の悠の忙しさを考えれば分かる。
悠は大学院の卒業を控え終始その研究に追われているのか、論文作成に追われているのかは分からないが、連日こうして帰って来るとどこか疲れているようで、雫の体温を欲する事が多かった。
悠がそれらを仕掛けているのは、何かあった時に犯人を突き止める為の物で、雫が三枝に拉致られたあの時のように何もわからないという状況には絶対に陥らないように予防線を張ったものだという雫の認識は外れてはいない。
確かにそれらはこの部屋に何者かが侵入してきた時に、それがいつ・誰が・何を目的にこの家に侵入して来たのか、何かしら証拠を掴む…その為の物だった。
それは別に今は雫自身だけがその拉致される対象じゃ無い事もなんとなくは察していた。
悠が持っている研究室や悠自身が手がける研究情報は、その手の同じような物を開発しようとしている者からしたら喉から手が出る程欲しい情報だってあるのだろう。
それくらいは雫だって想定内の事で、だから悠の家で何をどう仕掛けていようとなんら口を挟むつもりは無かった。
だが悠は詰まる所やはり奪われたく無いのは雫だけなのだった。
そんな研究の情報が欲しいなら勝手に持って行けと思う。
研究ならいつ何処でだってやろうと思えば出来る。
だがこの青年を奪われたら今度こそ自分は狂うと思っていた。
守りたいのは今自分の横で湧き上がる熱を必死に堪えている青年だけだった。
そんなどうでもいい情報を盗む為に雫が利用されるのは悠にとっては例えようもない地獄の再現になる。
だからそうなら無い為にも、二重三重にセキュリティは強化しても、しても、したり無い気がしていた。
雫に着けさせているピアスもその為のものだった。
はじめ身体にチップを埋め込んだ方がいいかとも思ったが、それに気付かれた時、取り出す為に犯人や他人の手で勝手に雫の身体に傷を着けられる事が許せなかった。
だったら簡単に取り外しが出来るものにしておく事にした。
それでもギリギリまでなかなか見け難いところに着けさせた。
それが雫のその大事なモノに穴を開けてもらったボディピアスだった。
雫はそれがそこまで深い悠の想いがあって着けられたものだという事は気付いていない。
だがそれが一度でも他人に身体を許してしまった戒めと、今後それを許すのは悠だけだという愛の証だと思っていた。
それも間違ってはいない。
お互いに思うところは多少くい違っていても、相手を想う気持ちは本物だった。
雫は悠に覗かれたとしてもやましい事は何もしていないのだから、今の雫はそれに堂々と答えられる自信があった。
だからその目を逸らさず見詰め合っていても、ボロを出す心配は無い…その筈だった。
それなのに…その目を逸らさなければいられなくなってしまう。
それは股間の疼きが止まらなくなりそう…だったからだった。
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