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あれっ、これBLだよね?

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バレーのジャンプで必要なのは、ジャンプ力ではない。垂直飛びの記録なんて、無意味だ。バレーで一番必要なのは最高到達点。
思いっきりジャンプした勇気は、手が出るどころか、胸の辺りまでネットより上に位置していた。
「「は?」」
無花果と浩一が素っ頓狂な声を出した。
「いやいや、ありえんだろ。緑屋、今凄く飛んでなかったか?」
「そんなに驚く事ですか?」
真斗が聞いた。
「だって、お前、今のは最高到達点が330cmは、いってたぞ。」
「凄い記録なんですか?」
「い、いやあ・・・日本人の平均かなあ?」
注}日本人バレー選手の平均です。
「じゃあ、そこまで驚かなくても。」
「いや、でも身長が・・・。」
「素晴らしい、素晴らしいじゃないか緑屋。」
他の部員と基礎練をしていた、主将が戻ってきた。
「まさか、こんな逸材が眠っていたとはね。無花果は、彼の事を知っていたようだが?」
「ええ、まあ3人とも同小の後輩なんで。」
「そうか、そういえばキラーベアとか言ってたが?」
「ああ、こいつが熊を蹴り殺したんで。」
「は?」
「知りませんかね?」
関係者以外には、熊は射殺された事になっていた。
「熊って、あのでっかい?」
「いえ、ヒグマなんて、この辺りにいませんから、小さい奴です。」
「小さい奴?」
「ツキノワグマです。」
浩一が補足した。
「小さいって、どれ位?」
「人とそう変わりません。襲ってきたのは、今の真斗よりは小さかったと思いますが。」
浩一の説明に主将は頭を抱えた。
だって人間が熊を蹴り殺せるなんて聞いたことが無い。
緑屋の母親と違い、この年代でウィリー・ウィリアムスを知っている者は、さすがに居なかった。
「まあいいか、ついでだ、二人もジャンプしてみてくれ。」
主将に言われ、二人もジャンプした。
最高到達点で言えば、真斗も320cmくらい飛んでおり、これは想像通りと言えた。浩一の方は、ご察しください。
「ふふふはははは。」
主将は大きく高笑いをした。
「勝ったな!」
負けフラグと言わんばかしのセリフを大きく吐いた。

「無花果、ふた・・・三人にしっかり基礎を教えておくように。」
「はいっ。」
浩一は聞き逃さなかった、主将が二人って言おうとしたことを。

配達や仕入れがそんなにない日は、酒屋も忙しくはない。そういう時は、真斗は店じまいの時間だけ手伝う事になっている。
「は?バレー部に?」
店長は、訝し気な顔をした。
「ええ、そうなんですよ。練習はバイトが無い日だけ参加します。」
「バレー部ってあったっけ?」
店長は地元だが、地元の高校へは進学していない。
「あったみたいです。」
「そうなんだ。俺の時代は、サッカー部も無かったがなあ。」
「サッカー部は今も無いですね。」
「あ、やっぱりか。」
「バレー部も夏で廃部になるようです。」
「なるほどね。勇気が入ろうって言いだしたんじゃないのか?」
「いえ、最初に誘われたのは俺なんです。」
「まあ、仕方ないよな。真斗ならどの部も欲しがるだろうし。」
「バレーに関しては、勇気の方が向いてるかもしれません。」
「は?まさか、あいつジャンプ力凄いのか?」
「最高到達点で10cm負けました。」
「ば、バケモンかあいつは・・・。」
「店長が俺たちにサッカーを教えてくれた時も、勇気が一番向いてるって言ってたじゃないですか。」
「まあな。でもお前が一番向いてるスポーツもあるけどな。」
「そういうスポーツがあればいいですね。」
店長は気を使って、野球の名前を出すことは無かった。
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