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ビッグボーイ

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「ねえねえ、やっぱり勇気君って可愛いよね。」
教室でクラスの女子が話しをしていた。
「それ、本人の前で言っちゃだめだからね。」
同小の人間が注意した。
「ええ?言ったらどうなるの?」
「女子相手に手は出さないけど、胸倉掴まれるわよ。」
実際、小学生の頃、胸倉を掴んで女子を泣かせたことがあった。
「大体、真斗君の方が格好いいでしょ?」
「ええー、だって怖いじゃん。」
「怖くないわよ。」
「だって、3年の悪い人たちを半殺しにしたっていうし。」
「しょうがないわ。虎の尾を踏むからよ。」
別の女子が言った。
「虎の尾?」
「勇気君に手を出すと、そうなるのよ。」
「えっ、まさかあの二人・・・。」
顔を赤らめる女子。
「そういうことね。」
「じゃあ、攻めは真斗君?」
「何言ってるの!勇気君に決まってるでしょ!」
「ええー、想像つかないわよ。」
「性格的に考えても、攻めでしょう。」
「だってさあ、勇気君って男に見えないし。」
「そうか、勇気君のあだ名知らないわよね。同小じゃなかったし。」
「え?お姫様以外にあだ名があるの?」
「大きい声じゃあ言えないんだけど。」
「うん。」
小声で話し出す女生徒たち。
「ビッグボーイよ。」
「え?だって勇気君って背も低い方じゃん?」
「背の話じゃないのよ。」
「じゃあ何がビッグなの?」
「ナニがビッグなのよ。」
勇気ファンの女の子は口を手で覆って驚愕した。
「う、嘘でしょ・・・、あんなに可愛いのに。」
「同小だったら、皆、知ってるわよ。」
見てみたいかもと興味心にかられる女生徒だった。

「なあ、緑屋3年にボコられたんだって?」
クラスメイトが勇気に話しかけた。
「だから何だよ。」
「そんなんで2年の番格気取りかよ。所詮、てめえは間壁の威を借りる狐じゃねえか。」
「なんだとお!」
「おい、煩いぞ雑魚。」
メガネを掛けたクラス委員長が雑魚を注意した。
「なんだ、ガリ勉が、やんのか?」
「一向に構わんぞ。」
クラスでは一番背がたく、メガネのクラス委員長は雑魚を威圧した。
「く、くそっ・・・。」
雑魚は雑魚らしく、尻尾を巻いて逃げていった。
「大丈夫か?勇ちゃん。」
「俺を勇ちゃんって呼ぶんじゃねえっ!」
「気にすることは無い、幼馴染じゃないか。」
「中学生になったんだから、呼び方変えろよっ!」
「勇ちゃんは、いつまで経っても勇ちゃんだよ。」
「もういい、あっちへ行ってくれ。」
「つれないじゃないか。」
「うっさいな。気分が悪いんだよ?」
「保健室に運ぼうか?」
「要らんお世話だっ!」
「勇ちゃんは、力を封じられているんだし、気にすることは無いよ。ただ無茶はやめてくれ。俺か真斗に言ってくれたらいいよ。浩一に頼るのは間違ってるから。」
「悪かったな!」
傷だらけで机に伏せっていた浩一が起き上がって言った。
「お前は幼馴染三人組の中で一番弱いからな。」
「ほっとけっ!お前らが異常なんだよ。」
「異常?俺がかい?異常な強さがあったら、あんな目には合ってないと思うがね?」
委員長は小学校の遠足で熊に襲われ、瀕死の重傷を負った経験がある。
「間違えた、真斗と勇気が異常だ。」
「訂正してくれて嬉しいよ。」
そう言って、突然ガバっと上着を脱いだ。
「この胸の傷が、僕の弱さを証明してるからね。」
「「「きゃーーーっ」」」
クラスの女子が、悲鳴を上げて目を覆う。指の間からバッチリ見ているのはご愛敬。
「ぬ、脱ぐなっ!」
浩一が注意した。
「この傷は、弱さの証明であると共に、勇ちゃんとの愛の証でもあるからね。」
【三角関係きたあああああああっ】
クラスの腐女子共が心の中で勝手に盛り上がる。
「勝手に変な証にすんじゃない。もっと傷が残らない様に出来ただろうっ!」
勇気が本気で突っ込んだ。
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