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第一部 失業したおっさんがVRMMOで釣りをしていたら伯爵と呼ばれるようになった理由(わけ)
悩み
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美緒には誰にも言えない悩みがあった。
「おっさん、バイトの後、話があるんだけど。」
いつものごとく一人で店に来ていた時野に話しかけた。
「俺に?」
「そう。」
「じゃあ進んとこで待ってるよ。」
時野がそう言うと、美緒はコクリと頷いた。
「私って親父とお母さんの本当の子供なのかな?」
波田運輸サービスで、時野は美緒から思いがけない相談を受けた。
「残念ながら・・・。本当の子だよ。」
「残念ながらって何だよっ!」
「宇品みたいなのから、美緒ちゃんみたいな可愛い子が・・・。」
「本当の子供っていうけどさ、私の赤ちゃんの頃の写真が、
一枚もないんだよっ。」
「いや、あるよ。うちにも一杯あるし。」
「なんで、おっさんが持ってるんだよっ!」
「俺の息子と同い年だからね。赤ちゃんの頃は頻繁に会ってたよ。」
「うちには無いんだけど・・・。」
「ん? あー・・・そうか・・・。」
「なんだよ?」
「お母さんには相談してみた?」
「言えねえだろっ。普通・・・。」
「まあ見せれない理由は、別にあるんで、お母さんに相談してみたら?」
「どういう理由だよ?」
「そんな、たいした理由じゃないから、安心して聞いてみて。
お母さんがいいって言えば、俺が持ってる写真も見せてあげるよ。」
「わかった・・・。」
「お母さん、私の赤ちゃんの頃の写真が無いんだけど?」
ギクっ!
家に帰ると美緒は、さっそく聞いてみた。
「そ、そうだったかしら・・・。」
「おっさんに相談したら、お母さんの許可とれって。」
「おっさんって?」
「時野のおっさん。」
【ちっ、康平君の写真と混じってたかっ!!!】
「どうしたの?お母さん?」
「いえ、どうもしないわよ?」
「うちにないなら、おっさんに見せてもらうけど?」
「えっ・・・。」
「・・・。」
美緒は、ジーっと母親を見つめた。
「はははは・・・。はあ・・・。しょうがないか。」
そういって、母親は古いアルバムを出してきた。
「いい、美緒。決して笑わないでね。」
「・・・。」
意味がわからなかった。
恐る恐るアルバムをめくると、スーパーヤンキーカップルと
赤ちゃんの写真があった。
親父が元暴走族というのは、知っていたが。
「こっちが親父だろ?この女の人は誰?」
「・・・。」
母親は、何も言わない。
「まさか、私の本当のお母さん?」
「・・・わ、わたし・・・。」
物凄く小さい声で答える母親。
「え?」
「だから、私なのっ!」
「・・・。」
笑うというより、物凄く引いた。
あの優しくて、たよりになる母親の過去がこれ??
顔から血の気まで引いてきた。
「わ、笑いたかったら、笑ってちょうだい。」
とても笑える状況ではなかった・・・。
「お、お母さんもグレてたの?」
「ちょ、ちょっとだけね。」
写真から見るに、とてもちょっとだけとは言えない雰囲気だった。
「私が髪染めても、バイトしても何も言わなかったのは?」
「い、言えた義理じゃないので・・・。」
「・・・。」
「一つだけ、親として言っとくけど。」
「何?」
「高校だけは卒業しなさいね。」
「するよ、普通。そこまで成績悪くないし。」
「そ、そうね・・・。」
「あれ?親父は高校出てるって聞いたけど・・・まさか・・・。」
「ごめん・・・私は、中退なの・・・。」
「それって私が出来たからとか?」
「ううん。成績も悪かったし、学校もあまり行かなかったしね。」
「・・・。」
スーパーカミングアウトされて、美緒は何も言えなくなった。
開けてはいけないパンドラの箱を開けた気分だった。
まあ、最後に残ってたのが実の子だったという安心っていうのが、
救いといえば救いなのかも・・・。
とりあえず、高校だけは、ちゃんと卒業しようと決心した美緒だった。
「おっさん、バイトの後、話があるんだけど。」
いつものごとく一人で店に来ていた時野に話しかけた。
「俺に?」
「そう。」
「じゃあ進んとこで待ってるよ。」
時野がそう言うと、美緒はコクリと頷いた。
「私って親父とお母さんの本当の子供なのかな?」
波田運輸サービスで、時野は美緒から思いがけない相談を受けた。
「残念ながら・・・。本当の子だよ。」
「残念ながらって何だよっ!」
「宇品みたいなのから、美緒ちゃんみたいな可愛い子が・・・。」
「本当の子供っていうけどさ、私の赤ちゃんの頃の写真が、
一枚もないんだよっ。」
「いや、あるよ。うちにも一杯あるし。」
「なんで、おっさんが持ってるんだよっ!」
「俺の息子と同い年だからね。赤ちゃんの頃は頻繁に会ってたよ。」
「うちには無いんだけど・・・。」
「ん? あー・・・そうか・・・。」
「なんだよ?」
「お母さんには相談してみた?」
「言えねえだろっ。普通・・・。」
「まあ見せれない理由は、別にあるんで、お母さんに相談してみたら?」
「どういう理由だよ?」
「そんな、たいした理由じゃないから、安心して聞いてみて。
お母さんがいいって言えば、俺が持ってる写真も見せてあげるよ。」
「わかった・・・。」
「お母さん、私の赤ちゃんの頃の写真が無いんだけど?」
ギクっ!
家に帰ると美緒は、さっそく聞いてみた。
「そ、そうだったかしら・・・。」
「おっさんに相談したら、お母さんの許可とれって。」
「おっさんって?」
「時野のおっさん。」
【ちっ、康平君の写真と混じってたかっ!!!】
「どうしたの?お母さん?」
「いえ、どうもしないわよ?」
「うちにないなら、おっさんに見せてもらうけど?」
「えっ・・・。」
「・・・。」
美緒は、ジーっと母親を見つめた。
「はははは・・・。はあ・・・。しょうがないか。」
そういって、母親は古いアルバムを出してきた。
「いい、美緒。決して笑わないでね。」
「・・・。」
意味がわからなかった。
恐る恐るアルバムをめくると、スーパーヤンキーカップルと
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「こっちが親父だろ?この女の人は誰?」
「・・・。」
母親は、何も言わない。
「まさか、私の本当のお母さん?」
「・・・わ、わたし・・・。」
物凄く小さい声で答える母親。
「え?」
「だから、私なのっ!」
「・・・。」
笑うというより、物凄く引いた。
あの優しくて、たよりになる母親の過去がこれ??
顔から血の気まで引いてきた。
「わ、笑いたかったら、笑ってちょうだい。」
とても笑える状況ではなかった・・・。
「お、お母さんもグレてたの?」
「ちょ、ちょっとだけね。」
写真から見るに、とてもちょっとだけとは言えない雰囲気だった。
「私が髪染めても、バイトしても何も言わなかったのは?」
「い、言えた義理じゃないので・・・。」
「・・・。」
「一つだけ、親として言っとくけど。」
「何?」
「高校だけは卒業しなさいね。」
「するよ、普通。そこまで成績悪くないし。」
「そ、そうね・・・。」
「あれ?親父は高校出てるって聞いたけど・・・まさか・・・。」
「ごめん・・・私は、中退なの・・・。」
「それって私が出来たからとか?」
「ううん。成績も悪かったし、学校もあまり行かなかったしね。」
「・・・。」
スーパーカミングアウトされて、美緒は何も言えなくなった。
開けてはいけないパンドラの箱を開けた気分だった。
まあ、最後に残ってたのが実の子だったという安心っていうのが、
救いといえば救いなのかも・・・。
とりあえず、高校だけは、ちゃんと卒業しようと決心した美緒だった。
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