48 / 48
48.
しおりを挟む
「公爵様、アデリーナ様。準備が整ったみたいです」
この段階に来るまでだいぶ長い道のりであった。
結婚を決めた日から式に向けて準備していたが、やはり色々と問題があった。まず、ちゃんとの意味のある結婚とは何かという根本的な疑問に直面し、その答えに至るまでにだいぶ時間を有した。結局は、貴族がやるような結婚式ではなく、庶民がやるような結婚式のようにするべきだという結論に至った。通常、貴族の結婚式というのは各国の貴族を集めて大体的にやるのが一般的だ。その催しが豪勢なほど権力を現し、大勢の人に見せしめることが出来るからだ。そのような結婚式は結局自分の凄さを見せたいがための自己満足のようなものである。しかし、庶民は別に権威を示す必要はないため友人を呼んで和やかに式をするらしい。貴族の結婚式よりかは豪勢ではないにしろ、庶民の結婚式というのは貴族の結婚式に比べると愛し合って結婚するという意味合いは強い。だから、二人はまず友人だけを呼んで式をやってしまおうと思った。もちろん、その後に国民に知らしめるための大きな結婚式はやる予定だが、その前にしてしまった方がいい。
それと招待した友人というのは地区でお世話になった人が多く、返事がだいぶバラバラになって返ってきたため、全員の都合が合う日を設定するのにも骨が折れた。何度も手紙のやり取りをしてようやくこぎつけたこの日は奇跡の一日と言っても過言ではないだろう。そして、ようやく準備が終わり、自分たちのことに着手できた時はホッとした。
ようやく、式が始まり、メイドに言われて扉の前に二人は立たされた。
「緊張しているのですか?」
「ああ、大分な」
「私もです。今まであったどんなことよりも緊張しています」
握った手が震えていて彼もまた同じように緊張しているのだと思うと、少し彼女は安心した。
「ちゃんと考えていた言葉言えますか?」
「噛んだ時は許してくれ」
「許しません。そうなった暁にはそれを笑い話にして永遠に忘れなくさせてあげます」
「それはやめてくれ」
「ふふ、冗談ですよ。私も今とても緊張しているので噛んでしまいそうです」
「同じもの同士気楽に行こうか」
「もうすぐで出番です。二人とも」
「ええ、わかりました」
メイドの言葉に二人は姿勢を正す。扉の向こうからは微かな声が聞こえたが、やがて何かを待つように静かになった。二人は静かになった扉の向こうから自分たちの出番が近づいてくることを知った。
「クロスさん」
「どうした?」
「好きです。とっても」
「きゅ、急に何を言う!」
「あ、扉が開きますよ」
「おい、待て!」
少しのドッキリ。ちょっとした冗談。これで彼の緊張が解ければいいかと思ったが、逆効果みたいだった。珍しく慌てる彼を見るのは楽しい。
扉が開き、光が差す。一つの大きな歓声に彼女はようやく自分の在り処を見つけたような気がした。
この段階に来るまでだいぶ長い道のりであった。
結婚を決めた日から式に向けて準備していたが、やはり色々と問題があった。まず、ちゃんとの意味のある結婚とは何かという根本的な疑問に直面し、その答えに至るまでにだいぶ時間を有した。結局は、貴族がやるような結婚式ではなく、庶民がやるような結婚式のようにするべきだという結論に至った。通常、貴族の結婚式というのは各国の貴族を集めて大体的にやるのが一般的だ。その催しが豪勢なほど権力を現し、大勢の人に見せしめることが出来るからだ。そのような結婚式は結局自分の凄さを見せたいがための自己満足のようなものである。しかし、庶民は別に権威を示す必要はないため友人を呼んで和やかに式をするらしい。貴族の結婚式よりかは豪勢ではないにしろ、庶民の結婚式というのは貴族の結婚式に比べると愛し合って結婚するという意味合いは強い。だから、二人はまず友人だけを呼んで式をやってしまおうと思った。もちろん、その後に国民に知らしめるための大きな結婚式はやる予定だが、その前にしてしまった方がいい。
それと招待した友人というのは地区でお世話になった人が多く、返事がだいぶバラバラになって返ってきたため、全員の都合が合う日を設定するのにも骨が折れた。何度も手紙のやり取りをしてようやくこぎつけたこの日は奇跡の一日と言っても過言ではないだろう。そして、ようやく準備が終わり、自分たちのことに着手できた時はホッとした。
ようやく、式が始まり、メイドに言われて扉の前に二人は立たされた。
「緊張しているのですか?」
「ああ、大分な」
「私もです。今まであったどんなことよりも緊張しています」
握った手が震えていて彼もまた同じように緊張しているのだと思うと、少し彼女は安心した。
「ちゃんと考えていた言葉言えますか?」
「噛んだ時は許してくれ」
「許しません。そうなった暁にはそれを笑い話にして永遠に忘れなくさせてあげます」
「それはやめてくれ」
「ふふ、冗談ですよ。私も今とても緊張しているので噛んでしまいそうです」
「同じもの同士気楽に行こうか」
「もうすぐで出番です。二人とも」
「ええ、わかりました」
メイドの言葉に二人は姿勢を正す。扉の向こうからは微かな声が聞こえたが、やがて何かを待つように静かになった。二人は静かになった扉の向こうから自分たちの出番が近づいてくることを知った。
「クロスさん」
「どうした?」
「好きです。とっても」
「きゅ、急に何を言う!」
「あ、扉が開きますよ」
「おい、待て!」
少しのドッキリ。ちょっとした冗談。これで彼の緊張が解ければいいかと思ったが、逆効果みたいだった。珍しく慌てる彼を見るのは楽しい。
扉が開き、光が差す。一つの大きな歓声に彼女はようやく自分の在り処を見つけたような気がした。
3
お気に入りに追加
102
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
聖女の力は使いたくありません!
三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。
ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの?
昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに!
どうしてこうなったのか、誰か教えて!
※アルファポリスのみの公開です。
あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
聖女ウリヤナは聖なる力を失った。心当たりはなんとなくある。求められるがまま、婚約者でありイングラム国の王太子であるクロヴィスと肌を重ねてしまったからだ。
「聖なる力を失った君とは結婚できない」クロヴィスは静かに言い放つ。そんな彼の隣に寄り添うのは、ウリヤナの友人であるコリーン。
聖なる力を失った彼女は、その日、婚約者と友人を失った――。
※以前投稿した短編の長編です。予約投稿を失敗しないかぎり、完結まで毎日更新される予定。
【完結】悪役令嬢に転生した私は奴隷に身分を落とされてしまったが青年辺境伯に拾われて幸せになりました
夜炎伯空
恋愛
「私の愛する婚約者にお前が悪事を行っていたことがわかった!! ――よってお前の地位を剥奪し、奴隷の身分とする!!」
「そ、そんな……」
この世界で目を覚ました時、私は悪役令嬢のキリアに転生してしまっていた――
「私の人生はいつもこうだ……」
苦労に苦労を重ねて得た小さな幸せも、すぐに新たな不幸によって上書きされてしまう。
ようやく就職できた会社もブラック企業で、社畜のような生活の日々を送っていた。
最近の唯一の楽しみは、寝る前に好きな乙女ゲームをすることだったのだが――
何でも欲しがる妹を持つ姉が3人寄れば文殊の知恵~姉を辞めます。侯爵令嬢3大美女が国を捨て聖女になり、幸せを掴む
青の雀
恋愛
婚約破棄から玉の輿39話、40話、71話スピンオフ
王宮でのパーティがあった時のこと、今宵もあちらこちらで婚約破棄宣言が行われているが、同じ日に同じような状況で、何でも欲しがる妹が原因で婚約破棄にあった令嬢が3人いたのである。その3人は国内三大美女と呼ばわれる令嬢だったことから、物語は始まる。
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
殿下、貴方が婚約破棄を望まれたのです~指弾令嬢は闇スキル【魔弾】で困難を弾く~
秋津冴
恋愛
フランメル辺境伯令嬢アニス。
闇属性のスキルを操り、岩をも砕く「指弾」の名手。
そんな勇ましい彼女は三年前、王太子妃補となった。
サフラン殿下は年下ながらも「愛おしい女性」とアニスのことを慕い、愛を注いでくれる。
そんな彼は寒がりだから、手編みセーターの一つでも贈って差し上げよう。
そう思い買い物を済ませた彼女が、宿泊するホテルのスイートルームに戻ってきたとき。
中からは、仲睦まじい男女の声が聞こえてくる。
扉の向こうにはサフランと見知らぬ令嬢が愛し合う姿があり……。
アニスは紙袋から編み棒を取り出すと、二人の座る長椅子に深々と突き立てた。
他の投稿サイトにも掲載しています。
タイトル少し変えました!
7/16 HOT17位、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる