22 / 47
第二十二話~彷徨う死者6~
しおりを挟む
私の目の前で、なんかこう、色々と納得できないことが起きている。
幼児化はないだろう、いやほんと。
ゾンビの幼児化なんて需要ねぇだろ。そうだよね!?
いや、うーん、一部に需要はあるのか?
芸人としては、悩むところだね。
私、芸人じゃないけどっ!
さて、幼児化したゾンビたちが、何をトチ狂ったのか、私に向かって襲ってきた。
いやまぁ、トチ狂っているわけではなく、正常な反応といいますか?
でも、よくわからないのはさ。
アンリを羽交い締めにして、動けないようにしてから、私に襲いかかってきたんだ。
え、なんでそんなに落ち着いてるかって?
適当にあしらってますが何か?
アンリが襲われたときはどうやって調理してやろうかと思ったけど、杞憂だった。
羽交い締めにしても、何もしない。
アンリが手に持った包丁でブツブツとさしながら抵抗しても、無反応。
ちょっとだけ、ゾンビすげぇって思ったけどね。
あれなら、ヤンデレ化したアンリに刺されても安全ってやつさ!
あ、私も死ねなかった……。
それを考えると……私の方がマシなのかな?
だって肉が腐らないしね。
ゾンビが私に噛み付いてこようとしてきたので、そっと横に避けて、足を引っ掛ける。
すると、どこかのリアクション芸みたいに、ゴロゴロと転がっていった。
こいつら、全員芸人みたいにウケを狙ってきているのではなかろうか……。
鑑定さん、ちょっと調べてよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【リーダーゾンビ】
種族:エルダーリッチ
性別:両性
【ゾンビお供その1(男)】
種族:グール
性別:メス
【くるくるパー】
種族:キョンシー(札なし)
性別:女(男)
【スーパーダンサー】
種族:ヒューマン
性別:バックダンサー
【スケルトンホース】
種族:馬
性別:骨
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
思ったよりひでぇなおいッ!
まともなの、リーダーゾンビぐらいじゃねぇか!
ゾンビのお供その1(男)ってなんやねん。
しかも性別! メスかよ。男か女かわからねぇじゃん!
それ言ったらくるくるパーもそうじゃね?
だって性別女(男)だよ!
これってどういうこと! 女なのか男なのかわからねぇ。
は! まさか、女装男子! 予想外すぎる。
あと、スーパーダンサー! てめぇはゾンビですらねぇ! なんで生きている人間が……。
よく観察してみると、スーパーダンサーなる人? の肌は、軽く腐っていて、虫が沸いていて、眼球が飛び出ていて……フローラな香りがするって、完全にゾンビじゃねぇか!
そしてフローラな香りはなぜ? 流行ってんの!
いやいや、それよりも……。
「スケルトンホース、てめぇ! 骨じゃねぇじゃねぇか! 肉付いてるだろ! 何がスケルトンホースじゃあああああああああああ」
叫んだ、それはもう叫んだ。だってスケルトンって骨でしょ? なのにふつうの馬のゾンビ。なめんじゃねぇ!
「馬鹿な! なぜ私が骨じゃないことがわかった!」
「見りゃわかんだろそれぐらい!」
「こうなったら容赦せん! ご覚悟を!」
スケルトンホースが、私に向かって、突進を!
馬が突進って、何かおかしい気がするのだが、気のせいだろうか。
個人的には、馬じゃなくて猪がすることのような……。あ、あれ? どっちだっけ?
まあいいや、考えるのを辞めよう。
私は何もぜず、ただぼーっと立つことにした。
いやね、よくよく考えてみれば、私のステータスってバグっているわけで、あのぐらいじゃなんともないんじゃないのかなーって思って。
そしたらすごいことになったよ。いやマジで。
バシュンってすごい音がしてね。スケルトンホースが消えた。
てか、そう表現するしかなかった。
なんだっけ、昔流行った、妙にグロイ動画、あれに近いかな。
こう、壁にぶつかってべちゃーって、形すら残らずに潰れちゃうやつ。
いや、それよりもわかりやすいのは……。
同人ゲームから公式ゲームになった、コープスパーティかな?
あそこの、キャプチャー2? 3だったかな。
幽霊に引きづられて、壁に叩きつけられて死んじゃう女の子がいるんだけど。
私の今の状況は、叩きつけられた壁に近い!
服は、ビチャビチャで、どす黒い腐肉がべっとり。顔まで汚れて実に最悪な気分です、はい。
いやね、防御には自身があったんだけど……まさかこうなるとは。
いや、でも実際はそうなのかな?
よく、ラノベとかでは、魔物がすごい速度で突進しても、ありえない防御力で、傷一つつきませんでしたってシーンが多い……気がする。
だけど、そんなありえない速度の突進とかしちゃったらさ、普通潰れるよね。
ようは、あれでしょ。飛び降り自殺と同じ。あれを重力に任せて縦に行くか、持ち前の筋肉を使って横に行くかの違いだけ。
んで、何事にも動じない、壁のようなありえない防御力を持った奴がつったってたら……うん。
でも……うーん、体がその速度で体当たりしても耐えられる構造になっている訳で……いや、普通、破壊不可能な場所に突進なんてしないか。
今回は現実を受け入れられそうだ。
「う、馬がやられただと……。やっぱり貴様は悪の勇者! この少女もやっぱり……」
やっぱりって、洗脳がどうのこうのって、まだ続いてるのっ!
やってません、その子、私のストーカーです。
なんて言っても分かってくれないんだろうな……なんて思っちゃったりして。
「っち、なら、フォーメーションでるららだ!」
『りょ!』
でるららってなんだよ。デルタか? デルタなのか! ならちゃんと言えっ!
ゾンビたちはわらわらと私を囲う。
もちろん、アンリを羽交い締めして刺されまくっているゾンビも一緒にだ。
アンリはこっちに来るかと思いきや、ゾンビたちを背後から包丁で刺しまくっている。
なんか「くふふ、大丈夫ですよ、小雪お姉ちゃん。私たちの邪魔をする奴はすぐに排除して上げますから」と、生き生きした感じだ。
やっぱり、あの子は怖いよ……。
「さて、一体何をするつもりやら」
ゾンビたちは、腰を低くして、肩を私に向けてきた。なんていうか、これからタックルしますっていうような感じかな?
そして、リーダーゾンビの掛け声と共に私に向かって走り出した。
これもはやタックル。
そして……。
ーービシャァ!?
何故か全員が消し飛んだ。
これ一体どういうことっ!
すごい突進をしてきた馬と明らかに威力が違うよね!
なのになんで潰れるのさっ!
っと思ったら、リーダーゾンビがギリギリで原型を保っていた。でもすぐに死にそうだ。
「やっぱり……我々では勇者を倒すことは…………こうなったらやむおえん。我が命を持って、キサマらを葬ってやる!」
「っく、アンリ!」
ハイライトのない目でブツブツ言っているアンリの元に咄嗟に駆けて、かばうように抱きしめた。
その時、私のお腹に包丁が刺さったのは言うまでもない。い、痛い……。
リーダーゾンビが消え去る間際に放ったのは、かなり特殊な魔法っぽい。
当たり一面が、真っ白な光で包まれた。
◇ ◆ ◇ ◆
光が収まってきたので、あたりを見渡すと、ちょっと行った先に、雲が見えた。
ちなみに、空に雲が見えたってわけじゃないよ。こう、雲が地面に降り立ってる感じ? と言いえばいいのかな?
なんか頭のおかしいことを言っているなーっていうのはわかるよ。だけど見えるんだよ、雲が。
多分、あれが噂のニートリッヒかな。まさかその近くまで転移されようとは思ってもいなかった。
あのリーダーゾンビとやらは、一体何がしたかったのか……。
はっ! まさか、あいつみたいなゾンビが大量にいるの!
このままじゃ、私がツッコミ死しちゃうっ!
って、そんなこと考えている場合じゃなかった。
私は、お腹に刺さった包丁をさっと抜いて、放り投げる。
そして、アンリが負傷していないかを確認した。
「アンリ、怪我はない?」
「は、はい。ありがとうございます。その変なシミ、ラズベリーのような匂いがして心地よいです」
っほ、なんともないようだ。よかったよかった。
だが、勘違いしてくれるなよ、アンリ。
私にべっとりついているのは、あのゾンビたちの腐肉だからな。なんでラズベリーのような香りがするんだよ!
「あ、小雪お姉ちゃん、あれ!」
「え、何か見つけたの!」
あれっと言いながらさりげなく包丁を拾って、丁寧にしまうアンリにツッコミを入れず、アンリが教えてくれた方を見ると、霧とは別に、変な砂煙みたいなのが見えた。
というか、馬車っぽいのがこっちに向かってきているっ!
リーダーゾンビが言っていたことはこのことか!
まさか、援軍が来るとは…………やるな、あいつ。
「またゾンビとかめんどくさ。こっからあの馬車を吹っ飛ばしていいかな、魔法で」
「だ、ダメです! よく見てください! 馬車にはさっきと同じ勇者軍の紋章が刻まれていますが、乗ってるのは人間ですよ!」
「え、マジで!」
私は目を凝らして見ると……マジだ、今にも死にそうな感じの表情をしているが、人間だ。
ちなみに、私は魔法を使っていています。
この【極】ってスキル、マジで便利だな。
遠くの人を肉眼で双眼鏡を使ったみたいに確認できるなんて。
でもあれ? 私はそんなスキルを見たことも聞いたこともないよ?
どうしてかな。
…………ひとつだけ、思い当たる魔法がある。
アンリが持っている、ストーキング魔法。
え、まさか、私がこんな魔法を使えるってことは、アンリも使っているってことだよね?
え、え、え? なんか、これから来る勇者軍関係者よりも、アンリがいつストーキング魔法を使っているのかが気になってきた。
考えようによっては、あの勇者軍よりアンリの方がよっぽど怖いよ!
そんな私の心境を察したのか、くるりを私の方に向き直り、ニコリと笑った。
その笑みが、逆に怖く感じた。
この子、マジやべぇ。
幼児化はないだろう、いやほんと。
ゾンビの幼児化なんて需要ねぇだろ。そうだよね!?
いや、うーん、一部に需要はあるのか?
芸人としては、悩むところだね。
私、芸人じゃないけどっ!
さて、幼児化したゾンビたちが、何をトチ狂ったのか、私に向かって襲ってきた。
いやまぁ、トチ狂っているわけではなく、正常な反応といいますか?
でも、よくわからないのはさ。
アンリを羽交い締めにして、動けないようにしてから、私に襲いかかってきたんだ。
え、なんでそんなに落ち着いてるかって?
適当にあしらってますが何か?
アンリが襲われたときはどうやって調理してやろうかと思ったけど、杞憂だった。
羽交い締めにしても、何もしない。
アンリが手に持った包丁でブツブツとさしながら抵抗しても、無反応。
ちょっとだけ、ゾンビすげぇって思ったけどね。
あれなら、ヤンデレ化したアンリに刺されても安全ってやつさ!
あ、私も死ねなかった……。
それを考えると……私の方がマシなのかな?
だって肉が腐らないしね。
ゾンビが私に噛み付いてこようとしてきたので、そっと横に避けて、足を引っ掛ける。
すると、どこかのリアクション芸みたいに、ゴロゴロと転がっていった。
こいつら、全員芸人みたいにウケを狙ってきているのではなかろうか……。
鑑定さん、ちょっと調べてよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【リーダーゾンビ】
種族:エルダーリッチ
性別:両性
【ゾンビお供その1(男)】
種族:グール
性別:メス
【くるくるパー】
種族:キョンシー(札なし)
性別:女(男)
【スーパーダンサー】
種族:ヒューマン
性別:バックダンサー
【スケルトンホース】
種族:馬
性別:骨
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
思ったよりひでぇなおいッ!
まともなの、リーダーゾンビぐらいじゃねぇか!
ゾンビのお供その1(男)ってなんやねん。
しかも性別! メスかよ。男か女かわからねぇじゃん!
それ言ったらくるくるパーもそうじゃね?
だって性別女(男)だよ!
これってどういうこと! 女なのか男なのかわからねぇ。
は! まさか、女装男子! 予想外すぎる。
あと、スーパーダンサー! てめぇはゾンビですらねぇ! なんで生きている人間が……。
よく観察してみると、スーパーダンサーなる人? の肌は、軽く腐っていて、虫が沸いていて、眼球が飛び出ていて……フローラな香りがするって、完全にゾンビじゃねぇか!
そしてフローラな香りはなぜ? 流行ってんの!
いやいや、それよりも……。
「スケルトンホース、てめぇ! 骨じゃねぇじゃねぇか! 肉付いてるだろ! 何がスケルトンホースじゃあああああああああああ」
叫んだ、それはもう叫んだ。だってスケルトンって骨でしょ? なのにふつうの馬のゾンビ。なめんじゃねぇ!
「馬鹿な! なぜ私が骨じゃないことがわかった!」
「見りゃわかんだろそれぐらい!」
「こうなったら容赦せん! ご覚悟を!」
スケルトンホースが、私に向かって、突進を!
馬が突進って、何かおかしい気がするのだが、気のせいだろうか。
個人的には、馬じゃなくて猪がすることのような……。あ、あれ? どっちだっけ?
まあいいや、考えるのを辞めよう。
私は何もぜず、ただぼーっと立つことにした。
いやね、よくよく考えてみれば、私のステータスってバグっているわけで、あのぐらいじゃなんともないんじゃないのかなーって思って。
そしたらすごいことになったよ。いやマジで。
バシュンってすごい音がしてね。スケルトンホースが消えた。
てか、そう表現するしかなかった。
なんだっけ、昔流行った、妙にグロイ動画、あれに近いかな。
こう、壁にぶつかってべちゃーって、形すら残らずに潰れちゃうやつ。
いや、それよりもわかりやすいのは……。
同人ゲームから公式ゲームになった、コープスパーティかな?
あそこの、キャプチャー2? 3だったかな。
幽霊に引きづられて、壁に叩きつけられて死んじゃう女の子がいるんだけど。
私の今の状況は、叩きつけられた壁に近い!
服は、ビチャビチャで、どす黒い腐肉がべっとり。顔まで汚れて実に最悪な気分です、はい。
いやね、防御には自身があったんだけど……まさかこうなるとは。
いや、でも実際はそうなのかな?
よく、ラノベとかでは、魔物がすごい速度で突進しても、ありえない防御力で、傷一つつきませんでしたってシーンが多い……気がする。
だけど、そんなありえない速度の突進とかしちゃったらさ、普通潰れるよね。
ようは、あれでしょ。飛び降り自殺と同じ。あれを重力に任せて縦に行くか、持ち前の筋肉を使って横に行くかの違いだけ。
んで、何事にも動じない、壁のようなありえない防御力を持った奴がつったってたら……うん。
でも……うーん、体がその速度で体当たりしても耐えられる構造になっている訳で……いや、普通、破壊不可能な場所に突進なんてしないか。
今回は現実を受け入れられそうだ。
「う、馬がやられただと……。やっぱり貴様は悪の勇者! この少女もやっぱり……」
やっぱりって、洗脳がどうのこうのって、まだ続いてるのっ!
やってません、その子、私のストーカーです。
なんて言っても分かってくれないんだろうな……なんて思っちゃったりして。
「っち、なら、フォーメーションでるららだ!」
『りょ!』
でるららってなんだよ。デルタか? デルタなのか! ならちゃんと言えっ!
ゾンビたちはわらわらと私を囲う。
もちろん、アンリを羽交い締めして刺されまくっているゾンビも一緒にだ。
アンリはこっちに来るかと思いきや、ゾンビたちを背後から包丁で刺しまくっている。
なんか「くふふ、大丈夫ですよ、小雪お姉ちゃん。私たちの邪魔をする奴はすぐに排除して上げますから」と、生き生きした感じだ。
やっぱり、あの子は怖いよ……。
「さて、一体何をするつもりやら」
ゾンビたちは、腰を低くして、肩を私に向けてきた。なんていうか、これからタックルしますっていうような感じかな?
そして、リーダーゾンビの掛け声と共に私に向かって走り出した。
これもはやタックル。
そして……。
ーービシャァ!?
何故か全員が消し飛んだ。
これ一体どういうことっ!
すごい突進をしてきた馬と明らかに威力が違うよね!
なのになんで潰れるのさっ!
っと思ったら、リーダーゾンビがギリギリで原型を保っていた。でもすぐに死にそうだ。
「やっぱり……我々では勇者を倒すことは…………こうなったらやむおえん。我が命を持って、キサマらを葬ってやる!」
「っく、アンリ!」
ハイライトのない目でブツブツ言っているアンリの元に咄嗟に駆けて、かばうように抱きしめた。
その時、私のお腹に包丁が刺さったのは言うまでもない。い、痛い……。
リーダーゾンビが消え去る間際に放ったのは、かなり特殊な魔法っぽい。
当たり一面が、真っ白な光で包まれた。
◇ ◆ ◇ ◆
光が収まってきたので、あたりを見渡すと、ちょっと行った先に、雲が見えた。
ちなみに、空に雲が見えたってわけじゃないよ。こう、雲が地面に降り立ってる感じ? と言いえばいいのかな?
なんか頭のおかしいことを言っているなーっていうのはわかるよ。だけど見えるんだよ、雲が。
多分、あれが噂のニートリッヒかな。まさかその近くまで転移されようとは思ってもいなかった。
あのリーダーゾンビとやらは、一体何がしたかったのか……。
はっ! まさか、あいつみたいなゾンビが大量にいるの!
このままじゃ、私がツッコミ死しちゃうっ!
って、そんなこと考えている場合じゃなかった。
私は、お腹に刺さった包丁をさっと抜いて、放り投げる。
そして、アンリが負傷していないかを確認した。
「アンリ、怪我はない?」
「は、はい。ありがとうございます。その変なシミ、ラズベリーのような匂いがして心地よいです」
っほ、なんともないようだ。よかったよかった。
だが、勘違いしてくれるなよ、アンリ。
私にべっとりついているのは、あのゾンビたちの腐肉だからな。なんでラズベリーのような香りがするんだよ!
「あ、小雪お姉ちゃん、あれ!」
「え、何か見つけたの!」
あれっと言いながらさりげなく包丁を拾って、丁寧にしまうアンリにツッコミを入れず、アンリが教えてくれた方を見ると、霧とは別に、変な砂煙みたいなのが見えた。
というか、馬車っぽいのがこっちに向かってきているっ!
リーダーゾンビが言っていたことはこのことか!
まさか、援軍が来るとは…………やるな、あいつ。
「またゾンビとかめんどくさ。こっからあの馬車を吹っ飛ばしていいかな、魔法で」
「だ、ダメです! よく見てください! 馬車にはさっきと同じ勇者軍の紋章が刻まれていますが、乗ってるのは人間ですよ!」
「え、マジで!」
私は目を凝らして見ると……マジだ、今にも死にそうな感じの表情をしているが、人間だ。
ちなみに、私は魔法を使っていています。
この【極】ってスキル、マジで便利だな。
遠くの人を肉眼で双眼鏡を使ったみたいに確認できるなんて。
でもあれ? 私はそんなスキルを見たことも聞いたこともないよ?
どうしてかな。
…………ひとつだけ、思い当たる魔法がある。
アンリが持っている、ストーキング魔法。
え、まさか、私がこんな魔法を使えるってことは、アンリも使っているってことだよね?
え、え、え? なんか、これから来る勇者軍関係者よりも、アンリがいつストーキング魔法を使っているのかが気になってきた。
考えようによっては、あの勇者軍よりアンリの方がよっぽど怖いよ!
そんな私の心境を察したのか、くるりを私の方に向き直り、ニコリと笑った。
その笑みが、逆に怖く感じた。
この子、マジやべぇ。
0
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした
あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を
自分の世界へと召喚した。
召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと
願いを託す。
しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、
全く向けられていなかった。
何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、
将来性も期待性もバッチリであったが...
この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。
でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか?
だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし...
周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を
俺に投げてくる始末。
そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と
罵って蔑ろにしてきやがる...。
元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで
最低、一年はかかるとの事だ。
こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から
出ようとした瞬間...
「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」
...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。
※小説家になろう様でも掲載しています。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる
竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。
ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする.
モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする.
その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.
第六監獄の看守長は、あんまり死なない天使らしい
白夢
ファンタジー
混乱を極める公国にて。
天界を追放され、魔界から爪弾きにされ、這這の体で辿り着いたこの場所で、不運にもマッドサイエンティストに拾われた俺は、実験体としては比較的幸運なことに、看守として楽しく過ごしている。
しかし愛すべき公国は、悲しきかな崩壊の最中。
数年前、人類の天敵としてこの国に突如ヴァンピールという存在が現れてからというもの、ただでさえ悲惨な世情はさらに悪化の一途を辿っていた。
しかし幽閉中の愛しい死刑囚594番と、可愛い部下達、ついでに育て親のイかれた官吏に、害が及ばなければそれでいい。
俺は、このままの日常に満足していた。
そんなある日、俺はマッドサイエンティストの官吏から、我が第六監獄において、とある子供を保護するように依頼された。
囚人番号427番として移送されてきた、傷だらけのその子供。
彼は史実上唯一無二の、人類に友好的な、理性を持つヴァンピールらしい。
もちろん官吏には従うが、あまり気が進まない。
なんというかぼんやりと、どうにも嫌な予感がする。
---
※一部に残酷・暴力描写がありますので、苦手な方はご注意下さい。
お気に入りの死刑囚、官吏さんから預かったヴァンピール、育て親の官吏、友達の監獄医、様子がおかしい矯正長、可愛い部下の看守たちなど、ちょっと楽しくて、少しだけ狂った平穏な日常が終わりを告げるまでのお話です。
悲しい出来事も多いですが、きっと最後はみんな笑顔になれるはず。
楽しんでいただければ幸いです!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる