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悪役師匠は手がかかる!魔王城は今日もワチャワチャです
第八章 なんでそうなるの!?
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魔王の噂を払拭しようと善行に励んだつもりだったのに、逆に妙な懸念を抱かれることになってしまった。僕の頭は俄かにパニックになり、心臓がバクバクと嫌な音を立てる。
「けど一番怪しいのはあいつらの〝師匠〟ってやつだ。いつも子供だけ働かせてちっとも人前に出て来やしねえ」
「子供らが言うには妙な魔法の研究をしてるって話じゃねえか。もしかしたらあの子供ら、そいつが生み出した魔物なんじゃねえのか? おお、おっかねえ!」
「やっぱりあの城にいるのは噂通り〝シルバーソーン〟っちゅう魔王か。このままじゃ村が危ねえ。王様に言って早く退治してもらわねえと」
なんでそうなるの!? 僕らめっちゃいいことしたよね!? それなのに魔物だの魔王だの酷いや、バッドエンド回避の難易度が高すぎる!
最悪の方向に転がっていく会話に、僕は居ても立ってもいられず彼らの前へ飛び出していった。
「ちょっと待ってください! 僕らは魔物じゃないし、師匠は魔王じゃありません! 王様に言うのはやめてください!」
突然現れた僕の姿に、村人はビックリして慄いたあと困惑と敵意を浮かべた顔でこちらを見る。
「いつからそこにいやがったんだ、まったく気味の悪いガキだぜ」
「シャ、シャベルを忘れたから取りにきただけです! たまたまです!」
「ふん、どうだか。そうやっていつもおれらを監視してたんじゃねえのか」
「やっぱりこいつは魔物だ! 捕まえて王宮へ突き出してやる!」
いたいけな子供を本気で捕らえようとしている村人を見て僕は思い出したのだ。そういえばこの世界の大人ってなかなかクズだったなって。最近師匠の優しさにばかりふれてたから、ちょっと忘れてたよ。
「なんだよバカ! ろくでなし! 僕らみんないい子にしてたのに! 憎まれる筋合いないぞ!」
捕まえてこようとする三人の手を躱しながらブンブンとシャベルを振り回す。それでも本気であてちゃいけないって手加減してしまう僕は、我ながら常識人だななんて心の隅で思う。けれど。
「うわっ」
残った土砂の泥で足を滑らせた僕は、その場に転んでしまった。そんなチャンスをやつらが見逃すはずもなく、三人の手が一斉に襲いかかってきた。――そのとき。
「うわっ!?」
「な、なんだ!?」
「か、影が……」
三人の体が足もとから伸びる影に捕らえられた。その影はだんだんと荊の蔦に変わり、ギチギチと村人の体を締め上げる。
「……汚い手でピッケに触るな」
恐怖で慄いている村人の前にニュルリと姿を現したのは師匠だ。影から出てきた高身長の半魔に、村人らは目玉が零れ落ちそうなほど目を見開き青ざめている。
「し、師匠! マズいですって!」
魔王ムーヴ全開の師匠を慌てて止めようとするけど、彼の瞳は厳しく村人らを見据えたままだ。
ガクガクと震えていた村人だったけど、やがて顔を引きつらせながら嘲る笑みを浮かべ、師匠を指さして大声を上げた。
「み、見ろ! やっぱり魔王じゃないか! 魔王もガキも全員城に突き出してやる! おおい! 誰か来てくれ!」
ひとりがそう言うと残りのふたりもそれに倣い、「おーい! 助けてくれー!」「魔王だ! 魔王が出たぞー!」と叫び出した。これはマズいって! 他の村人にまで見られたらもう誤魔化しようがない、一巻の終わりだあ!
「師匠、逃げましょう!」
焦った僕が師匠の袖を引いた瞬間だった。パァン!という音がして辺りが白い煙に包まれる。もうもうと漂う煙の中に、村人を拘束していた蔦がポトリと地面に落ちたのが見えた。
「!? え!? む、村の人は!? 消えちゃったの? ま、まさか破裂しちゃったの!?」
さっきまで三人がいた場所には何もない。虚無だ。薄くなっていく煙が村人の残骸の粒子に見えてサーっと血の気が引く。
「けど一番怪しいのはあいつらの〝師匠〟ってやつだ。いつも子供だけ働かせてちっとも人前に出て来やしねえ」
「子供らが言うには妙な魔法の研究をしてるって話じゃねえか。もしかしたらあの子供ら、そいつが生み出した魔物なんじゃねえのか? おお、おっかねえ!」
「やっぱりあの城にいるのは噂通り〝シルバーソーン〟っちゅう魔王か。このままじゃ村が危ねえ。王様に言って早く退治してもらわねえと」
なんでそうなるの!? 僕らめっちゃいいことしたよね!? それなのに魔物だの魔王だの酷いや、バッドエンド回避の難易度が高すぎる!
最悪の方向に転がっていく会話に、僕は居ても立ってもいられず彼らの前へ飛び出していった。
「ちょっと待ってください! 僕らは魔物じゃないし、師匠は魔王じゃありません! 王様に言うのはやめてください!」
突然現れた僕の姿に、村人はビックリして慄いたあと困惑と敵意を浮かべた顔でこちらを見る。
「いつからそこにいやがったんだ、まったく気味の悪いガキだぜ」
「シャ、シャベルを忘れたから取りにきただけです! たまたまです!」
「ふん、どうだか。そうやっていつもおれらを監視してたんじゃねえのか」
「やっぱりこいつは魔物だ! 捕まえて王宮へ突き出してやる!」
いたいけな子供を本気で捕らえようとしている村人を見て僕は思い出したのだ。そういえばこの世界の大人ってなかなかクズだったなって。最近師匠の優しさにばかりふれてたから、ちょっと忘れてたよ。
「なんだよバカ! ろくでなし! 僕らみんないい子にしてたのに! 憎まれる筋合いないぞ!」
捕まえてこようとする三人の手を躱しながらブンブンとシャベルを振り回す。それでも本気であてちゃいけないって手加減してしまう僕は、我ながら常識人だななんて心の隅で思う。けれど。
「うわっ」
残った土砂の泥で足を滑らせた僕は、その場に転んでしまった。そんなチャンスをやつらが見逃すはずもなく、三人の手が一斉に襲いかかってきた。――そのとき。
「うわっ!?」
「な、なんだ!?」
「か、影が……」
三人の体が足もとから伸びる影に捕らえられた。その影はだんだんと荊の蔦に変わり、ギチギチと村人の体を締め上げる。
「……汚い手でピッケに触るな」
恐怖で慄いている村人の前にニュルリと姿を現したのは師匠だ。影から出てきた高身長の半魔に、村人らは目玉が零れ落ちそうなほど目を見開き青ざめている。
「し、師匠! マズいですって!」
魔王ムーヴ全開の師匠を慌てて止めようとするけど、彼の瞳は厳しく村人らを見据えたままだ。
ガクガクと震えていた村人だったけど、やがて顔を引きつらせながら嘲る笑みを浮かべ、師匠を指さして大声を上げた。
「み、見ろ! やっぱり魔王じゃないか! 魔王もガキも全員城に突き出してやる! おおい! 誰か来てくれ!」
ひとりがそう言うと残りのふたりもそれに倣い、「おーい! 助けてくれー!」「魔王だ! 魔王が出たぞー!」と叫び出した。これはマズいって! 他の村人にまで見られたらもう誤魔化しようがない、一巻の終わりだあ!
「師匠、逃げましょう!」
焦った僕が師匠の袖を引いた瞬間だった。パァン!という音がして辺りが白い煙に包まれる。もうもうと漂う煙の中に、村人を拘束していた蔦がポトリと地面に落ちたのが見えた。
「!? え!? む、村の人は!? 消えちゃったの? ま、まさか破裂しちゃったの!?」
さっきまで三人がいた場所には何もない。虚無だ。薄くなっていく煙が村人の残骸の粒子に見えてサーっと血の気が引く。
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