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悪役師匠は手がかかる!魔王城は今日もワチャワチャです
第四章 突然直面する死
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「……ん? なんだあれ――ぅわっぶ!!」
城の方から水の塊のようなものが大量に迫ってきたと思ったら、塊のうちのひとつが大きく飛び跳ね僕の顔面に飛んできた。
「んぶっ! んぶぶぶぶぶぶぶ!」
何これ、顔にへばりついて離れないぞ。っていうか息できないんだけど! 死ぬ!
「うわぁああああ! なんやこれ!」
「お兄ちゃーん! しっかりしてえ!」
ひっくり返ってジタバタもがいてる僕の顔から、ドゥガーリンとエルダールが必死に塊を剥がそうとしてくれている。あやうく窒息死しそうになる寸前、塊は粘っこい液体を残しながらもなんとか剥がされていった。
「ひ~死ぬかと思った」
世の中ってこんなに油断ならないものだったっけ。のどかな日向ぼっこ中に死に直面するとは、さすがに予測できなかったよ。
僕はハンカチで顔に残ったベタベタを拭いてから、引き剥がされた謎の塊を見た。取り押さえているドゥガーリンの腕の中でおとなしくしているそいつは、クッションぐらいの大きさで丸っこく、透き通った青色をしている。
……僕知ってる、この謎の塊が何か。これって……スライムだ。
「なんやこのブヨブヨ。まるで生き物やな」
「あ、よく見ると目がある。やっぱり生命体みたいだね」
ドゥガーリンとエルダールはスライムを見たことがないのだろう。不思議そうに観察している。いや、僕も実物を見るのは初めてなんだけどさ。でも前世では定番の魔物としてゲームや漫画でよく見たからさ。……ん? 魔物?
「ドゥガーリン! そいつ遠くへ投げて! それ魔物だ!」
「えっ!? えぇええええええ!?」
のんびり観察している場合じゃない、スライムって人に危害を加える魔物だよ! 毒があるかもしれないし、そもそも僕さっき殺されそうになったし。
ドゥガーリンは腕に抱いていたものが魔物だと知り、アワアワしながらも遠くへぶん投げた。さすが怪力の竜人、スライムは遥か遠くの森の奥まで飛んでいく。
しかし城からはまるで波のようにスライムの大群が押し寄せてきて、僕たちは慌てて樫の木へと登って避難した。飛雄なんか慌てて飛んで樫の木のてっぺんまで逃げちゃったよ。お前も魔物なんだからスライムの眷属だろうが。
「キッショ! めちゃくちゃおるやんけ!」
「わぁああ! こいつら木に登ってくるよ!」
「まっ魔法! 魔法でなんとか……って僕、家事魔法しか使えない! 助けて師匠~!!」
スライムの大群に追い詰められ三人揃って半泣きになったときだった。
「……止まれ。そこから離れろ」
どこからか低い声が命じると、スライムたちはピタッと動きを止めた。そして波が引くようにウゾウゾと樫の木から離れていく。
「「「し、師匠!」」」
城の方からゆらりと歩いてきた大きな影に、僕たちは安堵で思わず声を合わせた。
「師匠~! 魔物が、魔物が~!」
まだ樫の幹に抱きついて泣いている僕に、師匠は腕を伸ばすと体を抱き上げてそっと地面に下ろした。警戒したけど、どうやらスライムは襲ってこないみたい。
師匠はドゥガーリンとエルダールも地面に下ろすと、振り返ってスライムたちに言い聞かせるように話しだした。
「……この三人は私の弟子だ。襲ってはいけない。彼らの命令も聞くように」
スライムたちは師匠の言葉がわかるようで、ゼリーみたいな体をプルプル震わせ「ピキー!」と鳴き声をあげている。その光景を僕たちは目をまん丸くして見ていた。
「え? スライムって人間の言葉がわかるんですか? っていうかなんで師匠の命令聞くんですか?」
「……私が召喚した……からだ。召喚獣は召喚者の命令を聞く……」
「あーなるほどなるほど~。……じゃなくって!! なんですってええええええ!?」
師匠のあまりの粗忽な行動に、僕は頭を抱えて天を仰ぐ。もうほんとやだ、この人。
城の方から水の塊のようなものが大量に迫ってきたと思ったら、塊のうちのひとつが大きく飛び跳ね僕の顔面に飛んできた。
「んぶっ! んぶぶぶぶぶぶぶ!」
何これ、顔にへばりついて離れないぞ。っていうか息できないんだけど! 死ぬ!
「うわぁああああ! なんやこれ!」
「お兄ちゃーん! しっかりしてえ!」
ひっくり返ってジタバタもがいてる僕の顔から、ドゥガーリンとエルダールが必死に塊を剥がそうとしてくれている。あやうく窒息死しそうになる寸前、塊は粘っこい液体を残しながらもなんとか剥がされていった。
「ひ~死ぬかと思った」
世の中ってこんなに油断ならないものだったっけ。のどかな日向ぼっこ中に死に直面するとは、さすがに予測できなかったよ。
僕はハンカチで顔に残ったベタベタを拭いてから、引き剥がされた謎の塊を見た。取り押さえているドゥガーリンの腕の中でおとなしくしているそいつは、クッションぐらいの大きさで丸っこく、透き通った青色をしている。
……僕知ってる、この謎の塊が何か。これって……スライムだ。
「なんやこのブヨブヨ。まるで生き物やな」
「あ、よく見ると目がある。やっぱり生命体みたいだね」
ドゥガーリンとエルダールはスライムを見たことがないのだろう。不思議そうに観察している。いや、僕も実物を見るのは初めてなんだけどさ。でも前世では定番の魔物としてゲームや漫画でよく見たからさ。……ん? 魔物?
「ドゥガーリン! そいつ遠くへ投げて! それ魔物だ!」
「えっ!? えぇええええええ!?」
のんびり観察している場合じゃない、スライムって人に危害を加える魔物だよ! 毒があるかもしれないし、そもそも僕さっき殺されそうになったし。
ドゥガーリンは腕に抱いていたものが魔物だと知り、アワアワしながらも遠くへぶん投げた。さすが怪力の竜人、スライムは遥か遠くの森の奥まで飛んでいく。
しかし城からはまるで波のようにスライムの大群が押し寄せてきて、僕たちは慌てて樫の木へと登って避難した。飛雄なんか慌てて飛んで樫の木のてっぺんまで逃げちゃったよ。お前も魔物なんだからスライムの眷属だろうが。
「キッショ! めちゃくちゃおるやんけ!」
「わぁああ! こいつら木に登ってくるよ!」
「まっ魔法! 魔法でなんとか……って僕、家事魔法しか使えない! 助けて師匠~!!」
スライムの大群に追い詰められ三人揃って半泣きになったときだった。
「……止まれ。そこから離れろ」
どこからか低い声が命じると、スライムたちはピタッと動きを止めた。そして波が引くようにウゾウゾと樫の木から離れていく。
「「「し、師匠!」」」
城の方からゆらりと歩いてきた大きな影に、僕たちは安堵で思わず声を合わせた。
「師匠~! 魔物が、魔物が~!」
まだ樫の幹に抱きついて泣いている僕に、師匠は腕を伸ばすと体を抱き上げてそっと地面に下ろした。警戒したけど、どうやらスライムは襲ってこないみたい。
師匠はドゥガーリンとエルダールも地面に下ろすと、振り返ってスライムたちに言い聞かせるように話しだした。
「……この三人は私の弟子だ。襲ってはいけない。彼らの命令も聞くように」
スライムたちは師匠の言葉がわかるようで、ゼリーみたいな体をプルプル震わせ「ピキー!」と鳴き声をあげている。その光景を僕たちは目をまん丸くして見ていた。
「え? スライムって人間の言葉がわかるんですか? っていうかなんで師匠の命令聞くんですか?」
「……私が召喚した……からだ。召喚獣は召喚者の命令を聞く……」
「あーなるほどなるほど~。……じゃなくって!! なんですってええええええ!?」
師匠のあまりの粗忽な行動に、僕は頭を抱えて天を仰ぐ。もうほんとやだ、この人。
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