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【ヤンデレメーカー#38】病める時、堕ちる時
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※ここから藍の視点に戻ります。
闇夜のなか車は走る。黒いミニバンは後ろめたさを乗せて。
イケナイ欲求に息の上がる僕。太ももを擦り合わせた。
染谷さんはチラ、と運転席から僕を見つめて少し笑った。
「家着くまで我慢できそうにない?じゃあどっか公園寄っても良いですけどね」
「…いえ…」
「何だせっかく抜いてあげようと思ったのに」
染谷さんは楽しそうに言う。
「…そんなのいらないです」
「我慢は身体に良くないですよ?」
そう言ってウインカーを出す。交差点で、来た道とは違う方向へ車は進路を変えた。
■■■
「どこ行く気なんですか?」
そう聞いても染谷さんは何も答えてくれない。
楽しそうにスピードを増すだけ…。
だけど、車が向かっているのってもしかしてあそこのラブホテルか?そう気づいた時はさあっと血の気が引く思いだった。
傍目に見てもボロくて外壁の塗装はところどころ剥げている。
「車停めちゃうんでちょっと待って下さいねえ」
「やっやだ!!!」
だけど染谷さんは僕の言うことなんか聞きやしない。圧倒的な力の差で結局ホテルの一室に連れ込まれてしまった。
ポンと押されるように倒れ込んだベッド。
大勢を立て直そうと顔を上げた時に、またバシャっと一枚撮られた。写真データを確認して染谷さんは満足気だ。
「やっぱ場末のホテルって良いですよねえ。爛れた情事って感じ。藍さんの清純さだと却ってえげつなくてお似合いですよ」
「な、何言って…!」
「この困り顔とか最高によく撮れましたよ。これから男に抱かれる前って感じ。これ見たらテディ君怒り狂っちゃうだろうなあ…」
「!」
「藍さん」
にじり寄ってくる染谷さん。思わず後ずさった。
「い、いや…!」
ギッシとベッドに乗り上げた染谷さん。僕を組み敷いた。雄の瞳が僕を捉えた。
「藍さん。…いや、『あーくん』」
!!
蘇る悪夢。びくびくと身体が震える。テディが僕の身体に残した痕跡。暗闇のバスタブで過ごした恐怖と快楽の日々…!
落ち着きかけた欲求が再燃して、僕は悶えた。
「は、ん…っ!」
染谷さんは逃げようとする僕を捕まえ、耳元で低く囁く様に言った。
「ほら、イケナイ子。ひとりで気持ち良くなってどうするの?男ばっかり欲しがって悪い子だ。困った顔して男を誘い込んでばかりいる、最低な悪い子だ、躾が必要だね『あーくん』」
「!!」
ドクドクとズボン越しに欲求を放ってしまった安直な身体…。
まただ。
自分の身体が心底恨めしい。これじゃ躾の出来てない犬と一緒だ…。
ぐすと涙ぐんだ僕に、染谷さんは可愛かったよとだけ言った。染谷さんは僕に顔は見せなかった。
■■■
僕だけシャワー浴びて、バスローブ着て、染谷さんから出来るだけ離れてベッドに縮こまって座った。
「そんな警戒する必要あります?一緒に暮らしてる仲なのに」
苦笑してきた。
「あ、あなたが攫ったんでしょ!」
「まあそれはそうなんですけどお」
あははと染谷さんは笑った。
「まあまあ、良いじゃないですか?僕は、モノ欲し気な藍さんを気遣ってここに連れ込んだだけなんですから。感謝して欲しいですね」
「…あ、あなたがけしかけたんでしょ!?」
別に好きでこんな反応をする身体になった訳じゃない。またじわ、と込み上げるものだがあった。
「あ~泣かない泣かない。まあ良いじゃないですか?終わったことはね。
それより聞きたいことがあるんですけど!」
染谷さんは大股で近づいてきてギシ、と僕の隣に座った。
「単刀直入に気くんですけど、あなた亜蓮さんが好きなんでしょう?
どうしてテディくんに飼われることになったんですか?」
!
どうしてこの記者は痛いところを突いてくるのだろう。
僕は目を伏せた。
「……亜蓮さんは僕に興味ないから…」
「告白とかしないんです?」
「して意味あると思います?この平凡な自分で。それに僕に興味ないって、はっきり言ってるの聞いたことあるし…」
ふ~ん?と染谷さんは思案顔だ。
そこそんな悩むところですかね…。
「それで?テディくんとはどうして繋がりができた?」
「そういうのは内緒です…」
けち、と染谷さんはため息を吐いた。
「…さて、じゃあ『休憩』もしたし。僕ら家に帰りましょうかねえ」
「…はい」
染谷さんは僕の手を引いて立ち上がった。腕を捲った白いワイシャツからは、血管の浮き出た腕が覗いている。
「今晩はこれから張り込み行かないといけないんですよねえ。だる」
「行きたくないなら記者辞めたら良いんじゃないですか…」
オールバック気味に前髪をかき上げた染谷さん。
「そういう訳にはいきませんよ。だって僕今後BREEZEの事務所に挑戦状出すんですよ。藍さん預かったから取りに来てみろよって。忘れたんですか?
それにあたって必要な情報をまだもうちょっと集めなきゃいけないんです」
「!もうそんなこと辞め」
「辞めません!それじゃ何のためにあなたを攫ったか分かんないでしょ」
染谷さんに圧倒される。けど…。
「…でももうやめて…。僕なんてちっぽけな人間です。いてもいなくてもどうでも良い。そんな類の人間なんですよ」
「…それは卑下し過ぎだと思いますけどね…」
ふむ、と手を組んだ。一瞬何か考えて、やがて口を開いた。
「じゃあBREEZEの事務所に挑戦状出すの辞めてあげましょうか?」
「え…!」
パッと顔を上げた。是非そうして下さい、という前に噛み付く様に言われた。
「でもその代わりどう?僕にこれから飼われてみるっていうのは。僕、あなたのこと躾し直してみたい」
「!」
怖いくらい真剣な眼差しが僕を捉えた。
冗談じゃないと言うセリフは強引なキスで塞がれた。
続く
闇夜のなか車は走る。黒いミニバンは後ろめたさを乗せて。
イケナイ欲求に息の上がる僕。太ももを擦り合わせた。
染谷さんはチラ、と運転席から僕を見つめて少し笑った。
「家着くまで我慢できそうにない?じゃあどっか公園寄っても良いですけどね」
「…いえ…」
「何だせっかく抜いてあげようと思ったのに」
染谷さんは楽しそうに言う。
「…そんなのいらないです」
「我慢は身体に良くないですよ?」
そう言ってウインカーを出す。交差点で、来た道とは違う方向へ車は進路を変えた。
■■■
「どこ行く気なんですか?」
そう聞いても染谷さんは何も答えてくれない。
楽しそうにスピードを増すだけ…。
だけど、車が向かっているのってもしかしてあそこのラブホテルか?そう気づいた時はさあっと血の気が引く思いだった。
傍目に見てもボロくて外壁の塗装はところどころ剥げている。
「車停めちゃうんでちょっと待って下さいねえ」
「やっやだ!!!」
だけど染谷さんは僕の言うことなんか聞きやしない。圧倒的な力の差で結局ホテルの一室に連れ込まれてしまった。
ポンと押されるように倒れ込んだベッド。
大勢を立て直そうと顔を上げた時に、またバシャっと一枚撮られた。写真データを確認して染谷さんは満足気だ。
「やっぱ場末のホテルって良いですよねえ。爛れた情事って感じ。藍さんの清純さだと却ってえげつなくてお似合いですよ」
「な、何言って…!」
「この困り顔とか最高によく撮れましたよ。これから男に抱かれる前って感じ。これ見たらテディ君怒り狂っちゃうだろうなあ…」
「!」
「藍さん」
にじり寄ってくる染谷さん。思わず後ずさった。
「い、いや…!」
ギッシとベッドに乗り上げた染谷さん。僕を組み敷いた。雄の瞳が僕を捉えた。
「藍さん。…いや、『あーくん』」
!!
蘇る悪夢。びくびくと身体が震える。テディが僕の身体に残した痕跡。暗闇のバスタブで過ごした恐怖と快楽の日々…!
落ち着きかけた欲求が再燃して、僕は悶えた。
「は、ん…っ!」
染谷さんは逃げようとする僕を捕まえ、耳元で低く囁く様に言った。
「ほら、イケナイ子。ひとりで気持ち良くなってどうするの?男ばっかり欲しがって悪い子だ。困った顔して男を誘い込んでばかりいる、最低な悪い子だ、躾が必要だね『あーくん』」
「!!」
ドクドクとズボン越しに欲求を放ってしまった安直な身体…。
まただ。
自分の身体が心底恨めしい。これじゃ躾の出来てない犬と一緒だ…。
ぐすと涙ぐんだ僕に、染谷さんは可愛かったよとだけ言った。染谷さんは僕に顔は見せなかった。
■■■
僕だけシャワー浴びて、バスローブ着て、染谷さんから出来るだけ離れてベッドに縮こまって座った。
「そんな警戒する必要あります?一緒に暮らしてる仲なのに」
苦笑してきた。
「あ、あなたが攫ったんでしょ!」
「まあそれはそうなんですけどお」
あははと染谷さんは笑った。
「まあまあ、良いじゃないですか?僕は、モノ欲し気な藍さんを気遣ってここに連れ込んだだけなんですから。感謝して欲しいですね」
「…あ、あなたがけしかけたんでしょ!?」
別に好きでこんな反応をする身体になった訳じゃない。またじわ、と込み上げるものだがあった。
「あ~泣かない泣かない。まあ良いじゃないですか?終わったことはね。
それより聞きたいことがあるんですけど!」
染谷さんは大股で近づいてきてギシ、と僕の隣に座った。
「単刀直入に気くんですけど、あなた亜蓮さんが好きなんでしょう?
どうしてテディくんに飼われることになったんですか?」
!
どうしてこの記者は痛いところを突いてくるのだろう。
僕は目を伏せた。
「……亜蓮さんは僕に興味ないから…」
「告白とかしないんです?」
「して意味あると思います?この平凡な自分で。それに僕に興味ないって、はっきり言ってるの聞いたことあるし…」
ふ~ん?と染谷さんは思案顔だ。
そこそんな悩むところですかね…。
「それで?テディくんとはどうして繋がりができた?」
「そういうのは内緒です…」
けち、と染谷さんはため息を吐いた。
「…さて、じゃあ『休憩』もしたし。僕ら家に帰りましょうかねえ」
「…はい」
染谷さんは僕の手を引いて立ち上がった。腕を捲った白いワイシャツからは、血管の浮き出た腕が覗いている。
「今晩はこれから張り込み行かないといけないんですよねえ。だる」
「行きたくないなら記者辞めたら良いんじゃないですか…」
オールバック気味に前髪をかき上げた染谷さん。
「そういう訳にはいきませんよ。だって僕今後BREEZEの事務所に挑戦状出すんですよ。藍さん預かったから取りに来てみろよって。忘れたんですか?
それにあたって必要な情報をまだもうちょっと集めなきゃいけないんです」
「!もうそんなこと辞め」
「辞めません!それじゃ何のためにあなたを攫ったか分かんないでしょ」
染谷さんに圧倒される。けど…。
「…でももうやめて…。僕なんてちっぽけな人間です。いてもいなくてもどうでも良い。そんな類の人間なんですよ」
「…それは卑下し過ぎだと思いますけどね…」
ふむ、と手を組んだ。一瞬何か考えて、やがて口を開いた。
「じゃあBREEZEの事務所に挑戦状出すの辞めてあげましょうか?」
「え…!」
パッと顔を上げた。是非そうして下さい、という前に噛み付く様に言われた。
「でもその代わりどう?僕にこれから飼われてみるっていうのは。僕、あなたのこと躾し直してみたい」
「!」
怖いくらい真剣な眼差しが僕を捉えた。
冗談じゃないと言うセリフは強引なキスで塞がれた。
続く
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