上 下
18 / 56

【ヤンデレメーカー#18】絆し上手は監禁上手

しおりを挟む
それからテディはせっせと僕の世話を焼いた。
汚れた布団のシーツも着替えも全部…。



「それじゃあ、藍。そろそろ俺仕事行ってくるね。俺のことずっと考えて待っててね。ずぅっとだよ?」
「ま、待って行かないでよお…」


そう言ってテディは機嫌良く僕の頭を撫でた。
ちょっと前までは安心感のあった厚みのある手が、今はただこわい。


「ロープの長さは調整したから、ギリトイレだけ行けるようにしてあるからねー」


そう、がんじがらめ拘束ではなくなったんだけど、それでも僕はいま本当に最小限しか動けない。


「さて…藍は急にしばらく実家に帰ることになってんだって、って皆には言っておくね。
それでなあなあにして、このまま寮母辞めるんだってってことにする。社長には俺から言っといてあげるから安心して」
「やっ辞めてよお!!」


食い下がった。僕は…僕はいないことにされてしまう!


「なんで?藍には俺がいれば良い」
「そっそんなこと…っ勝手に決めないで、よお…!」
「はあ!?」


テディの全身から溢れるような怒りと執着のオーラに圧倒されて語尾がしぼんだ僕。いやっ負けるな…!
頑張ってほんの少し見つめ合ったあと、テディはふいに目を逸らした。


「…ごめん、藍…」


すっごく傷ついたその横顔に罪悪感が抉られた。


「藍、俺のこときらいになちゃったよね」
「え!?いや、そんな訳ないじゃないか!」
「俺なんかより皆に会いたいよね…」
「ええっそんな、テディだって大事だよ」
「!…ほんと?」


パッと笑顔になったテディ。お母さんが迎えに来た小さい子供みたいな、そんな嬉しそうな顔に、また別の意味でズキッと胸が抉られた。


「藍、だーいすき」


へへと笑顔だ。

ううっ別に調子良いことを言いたいわけじゃない。だけどテディがどうでも良いわけでもないんだ。こんなことされても僕自身は別にテディが嫌いではない。
だけどその…うまいこと僕のそんな気持ちを汲んでというか、転がしてというか…テディは言葉巧みだった。


「じゃあ俺、藍ともっと仲良くなりたいって思って良いのかなっ?」
「うっうん、それはまあ、別に良いけど…」
「じゃあもっと一緒にいてもいい?」
「うっ。えと、じゃあこの拘束は」
「だって!!!ひとりぼっちの家に帰ってくるの、俺は寂しくてさみしくてもうイヤなんだ」


突然テディは僕を抱きしめてきた。


「藍が待っててくれるって思うと、俺は仕事も頑張れる。プレッシャーのかかる撮影だって何だって。俺は他の誰でもない、藍にいて欲しいんだ」
「でも、縛らなくたって」
「やだ!!!藍は縛って隠しておかないと、また亜蓮のとこ行きそう!!!
誰かが居なくなるのいやだ。…いやだ…」
「テディ…」


スン、と聞こえた。テディは本当にストレートだ。
ああ、どうしたら良いんだろう。
ぶん殴ってここを出るのが正解な訳じゃない気がする。まあ僕とテディの体格差ではそもそもそんなことは不可能だけど。
コイツは僕を監禁した犯罪者だ!とか騒ぐのも違うと思う。
置いて行っていい子じゃない気がするんだ、このでっかい坊やは…。


「えーと、じゃあさ、テディのことちゃんと待ってるよ」
「やった!!」


尻尾でも見えそうな感じでにこにこしてる。
この顔だけは本当にかわいい年下わんこなんだけどなあ。


「拘束だけどうにかして」
「それはダメ。さてそろそろ本当に時間だ」


それだけ冷たく言うと、テディは立ち上がった。


「俺は藍には、今か今かと俺の帰りを待ってて欲しいんだよ。そのためのロープだ。
あ、あとさ。俺が藍の携帯預かるね。皆からじゃんじゃん来てるうざいメッセージに、俺がそれっぽい返信しといてあげる。
…楽しみにしててね」

 
一瞬ギラと宙を見据えたテディは、もうかわいい歳下くんなんかじゃなかった。
僕と他のメンバーに亀裂を入れようとしている、嫉妬深い1人の男だった。
 
 
 



続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

推し変なんて絶対しない!

toki
BL
ごくごく平凡な男子高校生、相沢時雨には“推し”がいる。 それは、超人気男性アイドルユニット『CiEL(シエル)』の「太陽くん」である。 太陽くん単推しガチ恋勢の時雨に、しつこく「俺を推せ!」と言ってつきまとい続けるのは、幼馴染で太陽くんの相方でもある美月(みづき)だった。 ➤➤➤ 読み切り短編、アイドルものです! 地味に高校生BLを初めて書きました。 推しへの愛情と恋愛感情の境界線がまだちょっとあやふやな発展途上の17歳。そんな感じのお話。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/97035517)

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結・短編】もっとおれだけを見てほしい

七瀬おむ
BL
親友をとられたくないという独占欲から、高校生男子が催眠術に手を出す話。 美形×平凡、ヤンデレ感有りです。完結済みの短編となります。

5人の幼馴染と俺

まいど
BL
目を覚ますと軟禁されていた。5人のヤンデレに囲われる平凡の話。一番病んでいるのは誰なのか。

束縛系の騎士団長は、部下の僕を束縛する

天災
BL
 イケメン騎士団長の束縛…

処理中です...