上 下
2 / 56

#2 俺様系ヤンデレ 亜蓮

しおりを挟む
「ん…!」

変なところに手が滑り込んできた!

「テディ!辞めろって!」
「良いじゃん」

そのままなし崩しに僕に手を出そうとしてきたテディ!いくらイケメンでもそれとこれとは話が別!!

僕はひたすらに暴れてベッドから滑り落ちた!ダッと走り出そうとしたが、服の裾を掴まれてのどがグイッとのけぞった。

「あーもー分かったよ!今日は辞めといてあげる」

そういってテディは僕をベッドに再度引き摺り込んだ。すごい力だった。再度僕をムギュ、と抱きしめた。

「おやすみ、藍」

ハートマーク付きのセリフを飛ばしてきた美男子は、じきに寝始めた。

僕はひたすらに眠れない夜を過ごした…。


***


翌朝。

またもスウウと僕の匂いを嗅いだテディ。

「めっちゃ良い匂い。俺の匂いがちょっとするのもグッドだ」

そう満足気に言った。僕はもう何て言えば良いのか分からなかった。




今日は撮影があるというテディ。

部屋を出ていく前にこんなことを言ってきた。

「藍。これあげる。ファンの子から前貰ったやつなんだけど」

クマのぬいぐるみを手渡された。

綺麗な毛並みのゴールド系茶色のクマくん。

「今度から俺が泊まりで帰ってこれない時はこれ抱いて寝てね。俺だと思ってさ。『テディ♪』って話しかけたりしても良いよ」

ニコニコ笑って言うテディ。機嫌良く続けた。

「一緒に眠る習慣を藍の身体に覚えさせないとね。いずれ藍にも俺がいないと眠れない身体になって欲しいじゃん」

…!!!

「な、何言って…!」

「お互いがいないと眠れないなんて最高にクールだろ?ちゃんとクマくん抱いてる写真夜送れよな。

また連絡する」


チュッとキスを掠め取るとテディは出て行った。


***


やや呆然としながらも、残された僕はとりあえずテディの部屋を片付けていった。合鍵は持っている。

テディ…まじで何なんだ…?

距離の詰め方が尋常じゃない。

あと会話の端々から仄暗さが漂っている。まじ、何…?アイドルってやっぱそんな大変なの…??


モヤモヤが膨らんでいく。

その時着信が鳴った。見慣れない番号だ、パッと出た。


『もしもし?あなたが新しい寮母さん?』

メッチャ良い声に内心ドキッとした。ん?新しい寮母さんて前もいたの?

『あ、ハイそうです!』
『俺の部屋すぐ来れる?701なんだけど』
『今行きます!』


ああ、何か助かった!そそ、他のメンバーもいるし、きっとテディのことだってどうにかなるさ!


とか思ってたけど。普通に他のメンバーもやばいと後に知ることになるのである。


***

701号室の戸をたたく。

「こんにち…!?」

ガチャ、と出てきたのはこれまた目が覚める様な美男だった。真っ黒で少しウェーブがかった髪にがっしりした体格で、野生味ある雰囲気はカッコ良かった。やば、ちょっとタイプかも、なんて…。

「入って」

それだけ言って僕を部屋に招き入れた。ちょっと無愛想なのもクールでカッコ良いとか思っちゃってた。


「初めまして、藤井 藍って言います」
「俺ね、亜蓮。よろしく」

グッと握手してくれた手は、甲に血管が少し浮いている。男物の大きな腕時計が似合う手だった。

「何でも頼んで良いんでしょ?そしたらなんか飯作ってくんない。作り置きも欲しい。高い外食はもう食い飽きたんでね」

「了解です!」


買い物に行ってきて僕はアレコレと作った。肉じゃが、筑前煮、卵焼き、鯵フライ。貧乏フリーターは料理が超得意分野なのだ。

広い広いシステムキッチンは使い勝手が最高だ。良いなメッチャ広い。ここでダンス出来るじゃん、しないけど。


「ふーん?うまいじゃん。こりゃ助かるなマジで」

後ろから覗き込んできた亜蓮さんだった。

ワカル、誰かに手料理作って欲しい気持ち。僕は自分で自分に振る舞うのみだけど!


あとはチャーハン作って終わり、そう思ってフライパンをあっためていた時。

「ってか君。何持ってきたのソレ」
「あー、これはですね…」

とりあえず持ってきたクマくん。キッチンの隅っこに置いていた。

その入手のいきさつを超ザックリ話した。

「昨日、その。テディくんのお部屋で色々雑用やらせてもらったんですけど。テディくんが俺だと思ってねーって。いやー、彼、本当フレンドリーで冗談がうまいですよねーっ」

亜蓮さんの瞳がキラ、一瞬光った気がした。

「クマのぬいぐるみで牽制したいんだろ。まったく面倒なヤツだよ、テディは」

そう言って亜蓮くんはクマくんを回収すると、ポイっとゴミ箱に投げ込んでしまった!

ぼさあ!とゴミ箱に沈んだクマくん!

「あ!!えええー!?」
「良いじゃんテディなんかほっとけよ。どうせあいつ誰でも良いんだし」

「え!?いや、さすがにそんなことはないんじゃ…!?」
「どうせそうだって。アンタ手出されそうにならなかった?」

うっ!なったけど!!


「い、いやー、でも良い匂いだね抱き枕になってみたいに言われて…!」

あれ僕は何を口走ってるんだ?頭ん中がグルグル渦巻いてる!あと何でテディ庇ってるんだっけ!

「あいつが?…ふーん、じゃあ結構ホントに気に入ってるんだ」

多分そういうコト!
僕はやや首を傾げつつもコクコクうなずた。


「でもな藍。お前は俺んとこにずっと来い。俺の言うことを1番に聞け。分かったな」


ドキンと鼓動が鳴った。






続く
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?

いぶぷろふぇ
BL
 ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。  ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?   頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!? 「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」 美形ヤンデレ攻め×平凡受け ※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです ※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

処理中です...