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第三章 廃墟の遊園地
31話 第三のアトラクション! バイキング!
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バイキングとは、海賊船にも似た遊具に乗り込んで、起動と開始にブランコのように前後に揺れ動くアトラクションの事だ。たった今乗船したバイキングの乗組員は最大60名となかなかに大掛かりな物だった。
「この金塊の山に免じて、荷物と衣服を奪うことはやめておこう」
小袋にはピカピカに磨かれた5円玉が数百枚ある。それを見て手のひらを返したという訳だ。
(ダークネス・カイザー様は何であんなものを持っていたのかしら……さすがは我がクレヴァナルを束ねるリーダーと言えばそれまでだけど……)
「貴方、いつもそんなに小銭を持って出歩いてるのですか?」
ビーブリオテーカ様が、私と同じような疑問を持ちツッコミを入れた。
「闇の取引を心得ていると言ってもらいたいものだなぁ! ビーブリオテーカよ! そんなことより、全員このスピリットナービズに乗り込むぞ!」
「は、はい」
「むっ! そこの男、ここはアイアイサーと言うべき場面だぞ! 何だその気の抜けた返事は! もう一度やり直せ!」
「あ、あいあいさー……」
荷物をまとめていたソリトゥス様は、元気なく答えた。無理もない女性陣の荷物を一手に引き受け、長時間にも渡って、あのもやしっ子のソリトゥス様だ、疲れない方がおかしいのだ。
「まぁ、いい乗れ! 我がスピリットナービズの乗り心地に酔いしれるが良い!」
(船酔いしなければいいけど……ソリトゥス様の見かけだとしそうなのよねぇ)
私たちは全員――スピリットナービズに乗船し、安全装置をしっかりと固定し安全を確保する。これで条件は整った、何時動いても大丈夫だ。今回は撮影カメラを固定したヘルメットをかぶり、動画撮影をすることにした。視聴者の皆にもこのアトラクションの臨場感を少しでも届けて客足を増やさなくてはならない。バステトもバイキングから離れた場所で見守ってくれている。一応、身長制限があったのだが、全員難なく突破した。
「いやいや、アイツはどうするんだよ! このまま乗るのはいいけど、その後だ! あのお化け退治できるのか?」
「(何を言ってるの……? いつもみたいに貴方が退治すればいいじゃない……それとも何、自称大悪魔さんは数百年という語感だけで臆してしまったの?)」
「ビビってるわけじゃないが、アイツの妖力とんでもないぞ! おまけに武器を持っている。少し本気を出さないとやられちまうのは確かだ。どうするアイツ倒した方がいいか?」
「(そうねぇ~~武器も持ってるし、危ないから倒しちゃってくれるかしら。まぁ出来るのならだけど……)」
「……お前、完全に俺様の事舐めてるよなぁ、一応これでも大のつく悪魔様なんだぞ――」
私とデビルンが口論していると、バイキングが動き出した。
まずは前にゆっくりと動き出し、次に後ろへとゆっくり動き出す。まるでブランコにでも乗っているかのような動き、少しずつ前後の動きが速度を増ししてゆく。
「き、きゃあ――」
クリスチャンが絶叫を上げかけた。
「う、こ、これはなかなか酔いが来ますねぇ、うっぷ」
案の定、船酔いするソリトゥス様。
「この程度の速度と到達点では私は満足できません」
到達点はおよそ58度、これでもかなりきついのに、さすがはビーブリオテーカ様だ。余裕の表情を浮かべている。
「フーハッハッハッハッ! まだまだこれからよー! 小娘が、もっとだもっと速度を上げてやる! そして真の絶叫を上げるがいい!」
(えぇ……何このガイコツ、船の先頭部分で仁王立ちしているのだけど……思いっきりカメラに映ってるじゃない――下でも向こうかしら……いえ、ダメね。それじゃあバイキングの宣伝になりはしない。ここは正面を向くのが正解。例え骸骨が映ろうとも
、何が起きようとも――)
直後私は失神しそうになった。なんとバイキングが一回転したのだ。これに驚いたクリスチャンは――
「キャああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
という絶叫を上げ続け、あとはしばらく自分の太もも付近に目線を合わせ、次第に瞳を閉じて、この悪夢が早く終わるように祈りながら耐え続けるのであった。
「フーハッハッハッハッ! フーハッハッハッハッ! いいぞいいぞ! 我が名はダークネス・カイザーこの世の全てを統べる者なり!」
ダークネス・カイザー様のテンションは最高潮だった。
「…………………………」
顔を硬直させるビーブリオテーカ様。流石に今の一回転には驚いたらしい。
「――よ、よ、酔った」
口元抑えるソリトゥス様。
「なかなかおもしれ―なコレ! グルングルン行くぞーー! ひゃっほーーい!」
デビルンは余裕うそうだが、私はそうとも言ってられない。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
絶叫を上げているのは、何もクリスチャンだけではない。軽く涙目の私も限界だった、何せ……
「ちょっと! ちょっと! いつまで続くのよ! この回転は!? 早く止めてくれないかしらあ!?」
バイキングはもう7回転もしているのだから。
「な~~に、ぬかしてんだ! 一度航海に出た船がそう簡単に冲に上がれるかよ! まだ前回転だけじゃないか! 後ろ回転も残っているんだ! あと10分頑張んな!」
「無理いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
それからしばらく一生分のバイキングを楽しんだ。視聴者のことは何とか考えて前だけを見ることが出来た。今の私の姿は大邪神を崇める私にとっては、憎き勇者その者であっただろう。
(――もう二度とこんなバイキングには乗りたくないわ)
私は心の底からそう思った。
「この金塊の山に免じて、荷物と衣服を奪うことはやめておこう」
小袋にはピカピカに磨かれた5円玉が数百枚ある。それを見て手のひらを返したという訳だ。
(ダークネス・カイザー様は何であんなものを持っていたのかしら……さすがは我がクレヴァナルを束ねるリーダーと言えばそれまでだけど……)
「貴方、いつもそんなに小銭を持って出歩いてるのですか?」
ビーブリオテーカ様が、私と同じような疑問を持ちツッコミを入れた。
「闇の取引を心得ていると言ってもらいたいものだなぁ! ビーブリオテーカよ! そんなことより、全員このスピリットナービズに乗り込むぞ!」
「は、はい」
「むっ! そこの男、ここはアイアイサーと言うべき場面だぞ! 何だその気の抜けた返事は! もう一度やり直せ!」
「あ、あいあいさー……」
荷物をまとめていたソリトゥス様は、元気なく答えた。無理もない女性陣の荷物を一手に引き受け、長時間にも渡って、あのもやしっ子のソリトゥス様だ、疲れない方がおかしいのだ。
「まぁ、いい乗れ! 我がスピリットナービズの乗り心地に酔いしれるが良い!」
(船酔いしなければいいけど……ソリトゥス様の見かけだとしそうなのよねぇ)
私たちは全員――スピリットナービズに乗船し、安全装置をしっかりと固定し安全を確保する。これで条件は整った、何時動いても大丈夫だ。今回は撮影カメラを固定したヘルメットをかぶり、動画撮影をすることにした。視聴者の皆にもこのアトラクションの臨場感を少しでも届けて客足を増やさなくてはならない。バステトもバイキングから離れた場所で見守ってくれている。一応、身長制限があったのだが、全員難なく突破した。
「いやいや、アイツはどうするんだよ! このまま乗るのはいいけど、その後だ! あのお化け退治できるのか?」
「(何を言ってるの……? いつもみたいに貴方が退治すればいいじゃない……それとも何、自称大悪魔さんは数百年という語感だけで臆してしまったの?)」
「ビビってるわけじゃないが、アイツの妖力とんでもないぞ! おまけに武器を持っている。少し本気を出さないとやられちまうのは確かだ。どうするアイツ倒した方がいいか?」
「(そうねぇ~~武器も持ってるし、危ないから倒しちゃってくれるかしら。まぁ出来るのならだけど……)」
「……お前、完全に俺様の事舐めてるよなぁ、一応これでも大のつく悪魔様なんだぞ――」
私とデビルンが口論していると、バイキングが動き出した。
まずは前にゆっくりと動き出し、次に後ろへとゆっくり動き出す。まるでブランコにでも乗っているかのような動き、少しずつ前後の動きが速度を増ししてゆく。
「き、きゃあ――」
クリスチャンが絶叫を上げかけた。
「う、こ、これはなかなか酔いが来ますねぇ、うっぷ」
案の定、船酔いするソリトゥス様。
「この程度の速度と到達点では私は満足できません」
到達点はおよそ58度、これでもかなりきついのに、さすがはビーブリオテーカ様だ。余裕の表情を浮かべている。
「フーハッハッハッハッ! まだまだこれからよー! 小娘が、もっとだもっと速度を上げてやる! そして真の絶叫を上げるがいい!」
(えぇ……何このガイコツ、船の先頭部分で仁王立ちしているのだけど……思いっきりカメラに映ってるじゃない――下でも向こうかしら……いえ、ダメね。それじゃあバイキングの宣伝になりはしない。ここは正面を向くのが正解。例え骸骨が映ろうとも
、何が起きようとも――)
直後私は失神しそうになった。なんとバイキングが一回転したのだ。これに驚いたクリスチャンは――
「キャああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
という絶叫を上げ続け、あとはしばらく自分の太もも付近に目線を合わせ、次第に瞳を閉じて、この悪夢が早く終わるように祈りながら耐え続けるのであった。
「フーハッハッハッハッ! フーハッハッハッハッ! いいぞいいぞ! 我が名はダークネス・カイザーこの世の全てを統べる者なり!」
ダークネス・カイザー様のテンションは最高潮だった。
「…………………………」
顔を硬直させるビーブリオテーカ様。流石に今の一回転には驚いたらしい。
「――よ、よ、酔った」
口元抑えるソリトゥス様。
「なかなかおもしれ―なコレ! グルングルン行くぞーー! ひゃっほーーい!」
デビルンは余裕うそうだが、私はそうとも言ってられない。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
絶叫を上げているのは、何もクリスチャンだけではない。軽く涙目の私も限界だった、何せ……
「ちょっと! ちょっと! いつまで続くのよ! この回転は!? 早く止めてくれないかしらあ!?」
バイキングはもう7回転もしているのだから。
「な~~に、ぬかしてんだ! 一度航海に出た船がそう簡単に冲に上がれるかよ! まだ前回転だけじゃないか! 後ろ回転も残っているんだ! あと10分頑張んな!」
「無理いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
それからしばらく一生分のバイキングを楽しんだ。視聴者のことは何とか考えて前だけを見ることが出来た。今の私の姿は大邪神を崇める私にとっては、憎き勇者その者であっただろう。
(――もう二度とこんなバイキングには乗りたくないわ)
私は心の底からそう思った。
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