29 / 52
第三章 廃墟の遊園地
29話 メリーゴーランドの後始末
しおりを挟む
私はメリーゴーランドは無事に乗り終え、皆から少し離れたメリーゴーランドの前で、日傘を差し考え事をしていた。
(どうしようかしら……この馬たち、確かにお化けなのだけど、今ここで退治してしまったらこの遊園地の目玉が消えてしまうんじゃないかしら)
他者の意見も聞いておきたいので、左肩のバステトに声を掛ける。
「ねぇ、バステト……ここのお化けは退治した方がいいのかしら……?」
「その方がいいでしょう。だって主様も体験したはずです。ニンジンを与えなければ今にもメリーゴーランドから飛び出そうとする勢いの馬だったのですよ……? 退治しておいた方が安全です」
「そうよねぇ~~危ないものねぇ~~…………デビルン、あの馬全部、始末してもらえるかしら」
「別に始末してもいいけど、被害は考えないぞ……」
「メリーゴーランドごと破壊しようと言うの……?」
「そういうこと……」
「遊園地を救いに来たのに、壊してしまったら本末転倒じゃない……却下よ却下。はぁ~~、私が退治するしかないのかしら」
愚痴をこぼしながらも妖怪退治の本を開いて対抗策の項を探していく。
(えっと、これかしら……取り憑かれた物体の元に戻し方……なになに、まずはお札を用意します。次にそのお札を……)
「主様、クリス様がこちらに……」
バステトの声に肩がビクンとなって少し驚いたが、振り返るとクリスチャンが私をカメラで撮影していた。
「えっと、また何かするの? アゲハちゃん。先輩たちが次のエリアに行きましょうって言ってるよ」
「わかってるから、もう少し待っててと伝えに行ってきてくれるかしら……? こっちはやらなくてはならないことがあるのよ……それとまたここに戻って来たら撮影もよろしくね」
「は~~い、りょ~~かいで~~す」
クリスチャンがタッタッとダークネス・カイザー様達のところまで戻って行く。
(……どうやらバステト達との会話は聞かれていなかったようね)
ホッと息をついていたところ、デビルンがこんなことを言って来た。
「なんだ~~? 俺様達との会話、聞かれちゃまずいのか? 気にすんな気にすんな……あの手の人間は、えっ何この子一人でブツブツ言ってて気持ち悪い――で片付けられるから」
「それが嫌だから隠してるんでしょうに……私はオカルトに手を染めたけど、電波女や厨二女になんてなりたくないわ」
妖怪対策の本を熟読し終わったと同時に、クリスチャンが戻ってくる。
「じゃあ撮影を再開しよう。今度は何するの~~」
「今度は地味よ。まぁ見てて……じゃあ撮影を再開してちょうだい」
私は荷物の中から無数のお札とニンジンを取り出して、クリスチャンにも準備を急がせた。
「――3! ……2! ……1! ……アクション!」
「フフフ、見よ! 我が使い魔たちよ! これこそ、この世に在らざる存在達、魑魅魍魎よ!」
ニンジンを馬の前に持っていくと、パクリと食べてしまうメリーゴーランドだった。
「このメリーゴーランドには悪霊が憑りついている! この馬の一体一体がお化けの正体! CGでもなければホログラムでもない、れっきとしたリアル! だから我が力を持って存分に祓ってくれようぞ! 見るがいい我が力!」
汝らの血あらば、身もあるであろう、ならば唱える、力のあるべき場所を、本物の姿を取り戻さん! 悔いて地獄に落ちよ! 懺悔して煉獄に身を任せよ! その先は天国ぞ! クイーンエクスターミネレ!」
手でペタリペタリとではなく、バサリバサリとお札が全て宙を飛んでいき、全ての馬のおでこに張り付いた。
「――浄化!!」
その最後の一言で全ての馬は光出し、精気を失ったかのように、元の無機質な馬へと戻っていった。
「メリーゴーランド! 攻略! ――はいカット!」
私はクリスチャンに撮影カメラを停止するように促した。
「お疲れ様アゲハちゃん! 今のはどういう仕組みで光ったり、お札が飛んで行ったりしたの!? お札も消えちゃったし――」
「説明なんているかしら、私は真のオカルト少女なのよ、これくらいできて当然でしょ。それにしても、いいお札を使ったからかしら、一枚5000円するお札なのだけど……うまくいって良かったわ」
「ご、5000、えん……ゴクリ……それが数十枚も、蒸発しちゃうなんて……」
「さぁ、用事も済んだし、先輩方の元へ帰りましょうか」
そうして私たちはメリーゴーランドを後にした。
(どうしようかしら……この馬たち、確かにお化けなのだけど、今ここで退治してしまったらこの遊園地の目玉が消えてしまうんじゃないかしら)
他者の意見も聞いておきたいので、左肩のバステトに声を掛ける。
「ねぇ、バステト……ここのお化けは退治した方がいいのかしら……?」
「その方がいいでしょう。だって主様も体験したはずです。ニンジンを与えなければ今にもメリーゴーランドから飛び出そうとする勢いの馬だったのですよ……? 退治しておいた方が安全です」
「そうよねぇ~~危ないものねぇ~~…………デビルン、あの馬全部、始末してもらえるかしら」
「別に始末してもいいけど、被害は考えないぞ……」
「メリーゴーランドごと破壊しようと言うの……?」
「そういうこと……」
「遊園地を救いに来たのに、壊してしまったら本末転倒じゃない……却下よ却下。はぁ~~、私が退治するしかないのかしら」
愚痴をこぼしながらも妖怪退治の本を開いて対抗策の項を探していく。
(えっと、これかしら……取り憑かれた物体の元に戻し方……なになに、まずはお札を用意します。次にそのお札を……)
「主様、クリス様がこちらに……」
バステトの声に肩がビクンとなって少し驚いたが、振り返るとクリスチャンが私をカメラで撮影していた。
「えっと、また何かするの? アゲハちゃん。先輩たちが次のエリアに行きましょうって言ってるよ」
「わかってるから、もう少し待っててと伝えに行ってきてくれるかしら……? こっちはやらなくてはならないことがあるのよ……それとまたここに戻って来たら撮影もよろしくね」
「は~~い、りょ~~かいで~~す」
クリスチャンがタッタッとダークネス・カイザー様達のところまで戻って行く。
(……どうやらバステト達との会話は聞かれていなかったようね)
ホッと息をついていたところ、デビルンがこんなことを言って来た。
「なんだ~~? 俺様達との会話、聞かれちゃまずいのか? 気にすんな気にすんな……あの手の人間は、えっ何この子一人でブツブツ言ってて気持ち悪い――で片付けられるから」
「それが嫌だから隠してるんでしょうに……私はオカルトに手を染めたけど、電波女や厨二女になんてなりたくないわ」
妖怪対策の本を熟読し終わったと同時に、クリスチャンが戻ってくる。
「じゃあ撮影を再開しよう。今度は何するの~~」
「今度は地味よ。まぁ見てて……じゃあ撮影を再開してちょうだい」
私は荷物の中から無数のお札とニンジンを取り出して、クリスチャンにも準備を急がせた。
「――3! ……2! ……1! ……アクション!」
「フフフ、見よ! 我が使い魔たちよ! これこそ、この世に在らざる存在達、魑魅魍魎よ!」
ニンジンを馬の前に持っていくと、パクリと食べてしまうメリーゴーランドだった。
「このメリーゴーランドには悪霊が憑りついている! この馬の一体一体がお化けの正体! CGでもなければホログラムでもない、れっきとしたリアル! だから我が力を持って存分に祓ってくれようぞ! 見るがいい我が力!」
汝らの血あらば、身もあるであろう、ならば唱える、力のあるべき場所を、本物の姿を取り戻さん! 悔いて地獄に落ちよ! 懺悔して煉獄に身を任せよ! その先は天国ぞ! クイーンエクスターミネレ!」
手でペタリペタリとではなく、バサリバサリとお札が全て宙を飛んでいき、全ての馬のおでこに張り付いた。
「――浄化!!」
その最後の一言で全ての馬は光出し、精気を失ったかのように、元の無機質な馬へと戻っていった。
「メリーゴーランド! 攻略! ――はいカット!」
私はクリスチャンに撮影カメラを停止するように促した。
「お疲れ様アゲハちゃん! 今のはどういう仕組みで光ったり、お札が飛んで行ったりしたの!? お札も消えちゃったし――」
「説明なんているかしら、私は真のオカルト少女なのよ、これくらいできて当然でしょ。それにしても、いいお札を使ったからかしら、一枚5000円するお札なのだけど……うまくいって良かったわ」
「ご、5000、えん……ゴクリ……それが数十枚も、蒸発しちゃうなんて……」
「さぁ、用事も済んだし、先輩方の元へ帰りましょうか」
そうして私たちはメリーゴーランドを後にした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる