上 下
28 / 52
第三章 廃墟の遊園地

28話 本物の馬がいるメリーゴーランド

しおりを挟む
ダークネス・カイザー様の一言で、一同はメリーゴーランドに乗る羽目になった。

「へ、へぇ~~よくできてる。っていうか、この馬は本物なんのでは……?」

ソリトゥス様が近づいて来てそういった

「そんなわけがないでしょう? まぁ、オーナーさんにも困ったもの。電源を入れているなら入れていると言えばいいのに……それにしてもいい出来栄え」

(あの~~ビーブリオテーカ様、それホンモノです。とは言えないわよねぇ。っていうか信じてもらえないし、特にビーブリオテーカ様は筋金入りの現実主義者。)

「――なっ、最近の遊具はリアルねぇ。この木馬、本物みたいにあったかい……」

(やっぱりホンモノのお化けとは信じてない。って言うか、それ、本物を知っての発言ですよねぇ、ビーブリオテーカ様。やっぱり乗馬とかやっていたんだわ。さっすが大企業のご令嬢様」

ビーブリオテーカ様が乗馬する。それに続いてソリトゥス様も乗馬するのだが、

「う、うわ~~、ひぃ~~、動いた! 今何もしてたのに動きましたよ幹久先輩。これ本物の馬なんじゃないですか!?」

「バカ言わないで、こんなお腹に鉄の棒を突き刺した馬がいてたまるものですか」

(さっすが現実主義者のビーブリオテーカ様、物分かりはいいわ)

「鈍いなぁ……あのねいちゃん」

デビルンが呟いていた。

「私は降ります。外から主様の様子を見ておきますから……」

そう言ってバステトは肩から降りて行った。

「あ! バステトちゃんが逃げちゃいますよ! アゲハちゃん!」

「別に逃げたりしないわ。危ないから降ろしただけの事よ……そんなことよりカメラ回して……もちろん私だけが映る位置取りよ」

「あっ、はい! わっかりました! 了解です!」

そして、クリスチャンは白馬に、私は黒馬に乗ることにした。

「(――にしても、本物のお化けなんだし、一応警戒しておかないと)デビルン、この馬、何かあったらすぐ始末し――」

私はドジを踏んだ。

『ヒヒ―ン! ヒヒ―ン!』

黒馬は騒ぎ動き始めた。

「バッカ! そういうことは乗る前に言いやがれ! 馬に聞こえるだろうが!」

「(えっ! 人語を理解できる馬だったの油断したわ!)――ちょっと暴れないでくれる!? 本当に消すわよ!」

私は何とか馬をなだめようとした。しかし言うことを聞いてはくれない。手綱を握る手にいっそうの力が入る。

「黒井さ!? 大丈夫!? 黒条くん! 何をしているの! 一旦スイッチを切ってあげて――!」

「何を言うビーブリオテーカよ。貴重なオカルトとの遭遇だ! そしてデイネブリスパピヨンだ! この程度のイレギュラーたやすく突破できるはずだ! 結論慌てる必要はどこにもない!」

「――いいわ! 私が電源を切るようオーナーに直接頼んでくる!」

(ま、まずい! 話が、話が段々とめんどくさい方向へ、こ、ここは私が何とかしないと――)

「ビ、ビーブリオテーカ様、心配ご無用、この程度のイレギュラーに対して何の備えもしない私ではありません!」

私は左右に揺れる馬の上で叫んだ。

「バステ! 例の物を持って来てちょうだい!」

すぐさまバステトは荷物置き場へ行き、例の物、私の荷物の中から一本のニンジンを取り出した。そしてすぐさま、私の乗る黒馬へと投げかけた。すると――

『ガブッ――ムシャムシャムシャムシャ』

ニンジンを咀嚼し始める黒馬であり、そうして何とか大人しくなってくれた。

(――な、何とか落ち着いたわ。は、はぁ~~~~、怖かった……)

「す、凄い。一世代前のメリーゴーランドって、暴れたり物を食べたりも、するのねぇ……お父様にお報告して、機械部門の皆さんにも頑張ってこれくらいの技術力を身に着けてもらわないと……」

などとビーブリオテーカ様は分析中であった。

「さて……ゴホン、メリーゴーランドよ! 起動せよ!」

ダークネス・カイザー様の掛け声と同時に、メリーゴーランドはきらびやかな装飾の明かりをつけて、回転し始める。その後ダークネス・カイザー様も直ぐに近場の馬、もといお化けに乗り移っていた。

「――クリスチャン! カメラは回してくれた!?」

「――もちろんバッチリと!」

私は不安要素も消えて安堵の溜息をふぅ~~と吐き出す。それから10分間、メリーゴーランドを色んな意味で楽しんでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...