上 下
5 / 52
第一章 大悪魔との契約

5話 アカネの帰る場所

しおりを挟む
 「アカネ画像を撮るぞ」

「がぞう……とる?」

「流石は主様、その手がありましたか。アカネ様をお手元のスマートフォンに画像として取り込み、それを触媒として霊を呼び出すのですね」

「その通り、心霊写真を作るのだ。ささ、アカネ我と一緒に写真を取るぞこちらへ来い」

「――うん」

こうしてアカネと私のツーショット写真が完成した。そして、

「そうだ。ちょっと待ってろ……」

私は帰宅途中の先輩にあたるだろう生徒に声を掛けた。

「おい――そこの民衆よ。私は闇の大邪神の神官、デイネブリスパピヨンだ。悪いがこの魔法器具スマートフォンに目を向けてくれ……」

「? べ、別にいいけど……これがどうかしたの?」

「何か見えんか。足のない幽霊とか……」

「いや、見えないけど……ごめんなさい私急いでるからこの辺で良い……?」

「わかった。話を聞いてくれてありがとう」

先輩にあたるだろうその女子生徒はそそくさとその場を後にした。

(やはり、霊感がないと見えないのか……ツイッターあるいはユーチューブでバズると思ったが、無理そうだな)

「おねいちゃん……?」

「ああ、悪かったこっちの事情だ。さて準備に取り掛かるぞ」

降霊術の準備はこうだ。まず電柱に日傘をくくりつけ、次にば捨て地に路上を舐めてもらい清潔な環境作り、償還の陣を書き、最後に呼び寄せるための私の髪の毛と、スマートフォンを陣の中心部に置いて完成だ。

(あとは詠唱だな……これだけで一本の動画になりそうなのに。実にもったいない、ええい、こうなればカメラの出番だ。ついでに撮ってやろうではないか。霊感の強き選ばれしものなら見られるであろう)

ついでに動画投稿用の機材を鞄から出して、動画投稿のための準備をした。
さて、これで全ての準備は整った。後は本に書かれた詠唱を読めば、降霊術はたぶん成功だ。

「今更ながらなぜ、降霊術をとり行うんです? この娘は迷子なのですよ」

「ほんと、今更だな。なあ~~に、すぐにわかるよ」

使い魔は私と違って頭がよろしくないらしい。こんなこともわからないとは驚いた。

「さて、ゴホン。読み上げるぞ」

陣の前へ。アカネの立ち位置は私の隣である右側、肩に乗っていたバステトは左側だ。動画の録画機器もすでに動いている。もう準備は万全だった。行くぞは言うまい。

「降りたまえ降りたまえ、我が血肉を捧げし聖なる霊よ。明豊アカネの前にやって来るがいい。差し支えなければ我が眷属として迎え入れてやろうぞ」

その時、陣の中心部からビュンと風が放たれた。

(おお~~、これだけでも動画の内容としては相応しいものになりそうだ)

「主様! アカネ様! 陣の中心部を、前をご覧ください」

バステトが叫ぶので二人で見た。そこには足のない幽霊が二体とも浮遊していた。

「これは、ここはどこだ」
「一体何が……」

男性の霊と女性の霊だ。年はもう80代にみえる。

「お父さん! お母さん!」

「――まさか、アカネ! アカネなのか!?」
「嘘……やっと見つけたの?」

「ハーハッハッハッハッ! ――見よ感動の再開ではないか。やはりそれなりに年を取っていたな。アカネの父と母よ」

「キミは誰だ」

「アカネの主様と名乗っておこう。この度お前たち二人を呼び出したのには理由がある。聞きたいことがある、まず一つアカネの家はどうなっている」

「もう、無いよ。土地ごと売ってしまって別の場所に引っ越したからね」
「そう、アカネが亡くなった場所に居続けることが耐えられなくなったの」

「そうだったんだ~~」

「でも、ようやく会えた。これで家族三人幸せに暮らせるぞ」
「そうね、まさかこんな所で迷子になっているとは思わなかったものね」

「二つ目の質問だ。あの世に家はあるのか?」

「もちろんだとも。アカネと三人で暮らすのにマイホームを建てたんだ」
「ええ。広くて大きな家よ。前に住んでいたところとは比べ物にならないくらい」

「ほんと!」

「では、三つ目の要件だ。アカネをあの世とやらに連れて行ってほしい」

「あの世……ここはもしや現世なのか。 ――!? ここはアカネの事故現場ではないか……?」
「ほんとね……ずっと探していたのに、まさかこんなところで成仏出来ていなかったなんて、どうりで天国で探しても見つからないわけだわ」

「お母さぁ~~ん」

アカネが母親に抱きついて行った。

「何かよくわからないが、娘が世話になった感謝するよ」
「本当にお世話になったわ。なんか涙が出てきちゃう……ありがとう優しいお嬢さん。さて、行きましょうか。あの世に」

「うん! おねいちゃんありがとう」

「ああ、もう迷子にならないようにしろよ。私はまだあの世へ行くには、未練がありすぎるから面倒は見られない」

「わっかた。行こ、お父さん、お母さん」

「それでは、行くとしようか。お嬢さんこれはどうやって呼び出してるのかなぁ」
「帰る方法がわからないわ」

「帰る方法ならこうだ。聖なる霊よどうか帰りたもうれ帰りたもうれ」

突然、アカネとその父と母が光出し姿を薄くさせていった。そうして消えていった。最後にアカネはこう言い残した。

「おねいちゃん。今度会ったら遊ぼうね」

「ああ、バイバイ。アカネ……」

こちらもあちらも小さく手を振って別れを告げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。

ゆきゆめ
キャラ文芸
「お〇ん〇ん様、今日もお元気ですね♡」  俺・浅間紘(あさまひろ)の朝は幼馴染の藤咲雪(ふじさきゆき)が俺の朝〇ちしたムスコとお喋りをしているのを目撃することから始まる。  何を言っているか分からないと思うが安心してくれ。俺も全くもってわからない。  わかることと言えばただひとつ。  それは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いってこと。  毎日毎日、雪(ゆき)にあれやこれやと弄られまくるのは疲れるけれど、なんやかんや楽しくもあって。  そしてやっぱり思うことは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いということ。  これはたぶん、ツッコミ待ちで弄りたがりやの幼馴染と、そんな彼女に振り回されまくりでツッコミまくりな俺の、青春やラブがあったりなかったりもする感じの日常コメディだ。(ツッコミはえっちな言葉ではないです)

義理の妹が妊娠し私の婚約は破棄されました。

五月ふう
恋愛
「お兄ちゃんの子供を妊娠しちゃったんだ。」義理の妹ウルノは、そう言ってにっこり笑った。それが私とザックが結婚してから、ほんとの一ヶ月後のことだった。「だから、お義姉さんには、いなくなって欲しいんだ。」

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

処理中です...