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終章 もう少し夢は続いていく

スプラッシュ飲料店

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 ティエル診療所を後にした俺は、家へと続く帰路を歩いていた。
 ここは黄葉の区域で、この隣にある桃葉の区域にこそ、俺の家があるので到着には時間が掛かる。
 人の行きかう街道を――スタスタと進んでいると、目の前に結構な行列を作っていた店があった。そこに取り付けられていた看板を見るとスプラッシュ飲料店と書かれていた。

(……あれ、ここって、前にイルフドが飲ませてくれた炭酸飲料水ってのが販売されている店か? おかしいなぁ、昨日はこんな店なかったはずだし、だいたい別の区域に構えていたんじゃなかったか?)

 俺は気になったので、行列の最後尾を示している看板を手にしていた、アルバイトの青年に聞いてみることにした。

「すみませーん、ちょっといいですか?」
「あっはーい、なんスかー?」
「このスプラッシュ店って、こんなところにありましたっけ?」
「――ああ! ここは今日から始まったスよ。ちょっと前までは別のところで販売してたんスけどね……ほら、ここんところ良くないことが立て続けに起きてたでしょ? 元あった場所が結構危ないって話になったんで……だから移転して、新装開店したんス」
「そうなんですか……けど、昼でもまだ在庫があるんですね」
「ああ……最初は朝だけに販売してたんスよ、けど買えない人が続出して、抗議があった見たいっス。だから、朝の部と昼の部と夕方の部に分けて売り出すことにしたらしいっス。トラブル防止のために在庫も十分確保してるらしいっスから、今なら購入できっスよ。並びまス?」
「――じゃ、じゃあ、そうしようかな」

 アルバイトの人に上手く勧められて、俺は行列に並ぶことになった。
 列が少しづつ前へと進んで行くと、飲料店の隣にあった新聞店のカウンターに丁度差し掛かる位置に来ていたので、暇つぶしに今日の分を購入して読むことにした。

(家にも同じものがあるけど、まぁいいか。いくつあっても別のことに使えるのが新聞紙のいいところだ)

 俺は早速、購入した新聞に目を通しながら、行列の進み具合にも気を配る。

(――あっ、ほんとだ。スプラッシュ飲料店、黄葉の区域にて新装開店……)

 さらに新聞を読み進めていく。

(……ん? あの事件のことが書かれている……えっと……)

 ――異常事件ついに収束か!

 先日、国会から発表があった。頻繁に続いていたトラブル事件と、衰弱していく流行病は、完全に鎮静化したとういものだ。
 発表の通り数日前から、これらの異常は突然の治まりを見せていたので、住民たちはようやく確信が得られて一安心していることだろう。
 これでようやく普段通りのフォレンリースに戻ったわけだ。
 しかしながら、不安の声もまだ残っている。今回の起きた問題の原因が判明していないからだ。これに対しての国会の答えは――原因不明――の一点張りであり、今後は同様の事態に陥らないように対策を講じていくとのことだった。この件に関しては、これからの新情報に期待したい。

(……よかった、あれから何も起きなくなったんだ……新情報ねぇ、俺たちのこと知られたりしないといいけど……まぁ、夢の力が関係してるなんてわからないか……とりあえず気にしなくてもいいかな)
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