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森へ7(別視点込み)

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<途中で視点が変わります>




「ま、待って!」

呼びかけた声も虚しく、アストは地面を蹴って父へ飛び掛かった。何の躊躇もなく父へ向かって剣を振り下ろすけど、それは父まで届かないで、金属が触れ合ったような音が弾ける。シールドだ。
アストはしばらく空中に留まったまま、ギリ、と粘ったけど、父が手を払ったことで後方へ飛ばされたようだった。
舌打ちをして地面に戻り、また切り掛かる。アストが腕を下すたびに、鈍い金属音が短く響いた。

ど、どうしよう!!
止めなきゃ!!

両手を前に出したけど、ハッと気づく。
えっ、でもどうしよう、今攻撃したらアストにも当たるんじゃない!?

「は、離れて!!」

頭で考える前に声が出ていた。視界がパァッと眩しくなる。
発光と同時に、父が何かに撃たれたように後方へ大きく弾かれた。胸元の服が破れて、赤い打ち身の跡が見える。
ぐるり、と父の顔がわたしを見た。真っ黒な目からは光が感じられない。

「……今のは、お前か?」

「え」

お父様は、自分の胸元を見て、それからわたしのほうを見た。何かに納得したように、目を細くする。

「そうか、ならば猶更。出すわけには行かなくなった」

父がわたしへと手を伸ばす。何か来る、と思っているのに。足が動かない。

「ローズ!」

鈍い衝撃が体に走った。




□□□




ローズの方で土煙があがると同時、アストは再び領主へと切り掛かる。

アストの目にはシールドの強度が分かった。しかし幾度打ち込んでも薄くならない。
少し距離を取っただけで新たに強化される。息をつく間もない打ち込みで破り、仕留める他ない。

「魔石をどこへ流した?」

アストの問いかけにも領主は薄く笑うのみで答えない。

ガギン
「!」

幾度かの打ち込みの後、剣が折れた。領主が笑う。
アストは空中で柄から仕込み刀を抜き、体を反らして反動を作る。シールドの薄くなった箇所へ思い切り打ち込む。パン、と結晶が弾けるように空気が割れ、領主の眉が顰められた。
盾は霧散する前に放射状に広がってアストの肌を裂いた。斜め下から注がれるガラスのような刃に、腕で目元を庇いながら一度地面に降りたアストは、また足元を蹴って折れた刃で切り掛かった。

強化と違ってシールドの張り直し再生成には時間を要する。舌打ちをした領主は迎え撃つべく片手へ魔力を込めるが、アストは体勢を低くして領主のブーツを折れた刃で打ち付けた。
地面に縫うよう領主の片足を貫いて走り抜け、足で半円を描くように地面をこすって体の勢いを殺す。舞い上がった砂塵の中、アストは一度姿を消した。

血が流れるのにも構わず足を上げようとした領主が異変に気付く。刃に貫かれた片足が、地面と癒着しているように動かない。
見下ろすと、結合に捕縛の魔石が使われている。石が体に馴染み、この地へと馴染んで容易には動かせなくなっていた。

(これを埋め込むのが狙いか)

「……鼠め」

領主は、焦るでもなく場に佇んでいた。

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