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森へ2

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破れる。それって結界が!?
この近くには屋敷があるし、すぐそこを行けば街だってある。そんなことになったら堪らない。

「……っ!」

足元を蹴って結界の中に入る。
森の周囲を覆っている結界は、対魔獣用だから、ちょっと魔力がある人間だったら出入りするのは簡単なこと。
普段見るはずのなかった位置で魔獣を見てしまったから驚いたけど、いると分かったらやることはひとつしかない。
間引く!

「ローズ!」

「二人はそこに居て!」

子爵が驚いたように声を上げたけど、大丈夫。だってこれはわたしの役目だったんだから。

森の中に入ると、魔獣が甲高い声を上げてこちらを見た。少し大きい犬くらいのサイズだ。黒い体は輪郭が靄のように揺らいでいて、目だけがぎらぎらと赤い。
魔獣は、自分が出られない場所から入って来た人間わたしに腹を立てたように唸り声をあげる。何かに突き動かされるようにこちらへ向かってきた。

「ん……?」

見慣れた姿だけど、何だろう。いつもと雰囲気が、違う……?
でも、考えてる場合じゃなかった。両手を組んで目の前に出し、頭上に掲げてから大きく開く。質量を持った結界を空に展開させた。
突進してくる魔物の速度を見て、こっちへ到達する前に、もしくは方向を変えようとしても間に合わないように……
大きく、大きく領域を広げる。

「えいっっ!!」

べちんッッ

まるでスタンプするように上から圧し潰して、魔獣を間引く。
わたしが繰り出した巨大な結界の下に潰されて、魔獣がいた場所からぶしゅうと黒い煙が上がった。
何百回と繰り返してきた動作だった。

「ふぅっ……でも、どうしてこんなところまで……」

思わずひとりごちてしまいながら二人を見ると、アストはどことなく呆れた表情をしていて、子爵はなんか、驚きと憤りを混ぜたような感じになってた。
これはどうみても、危機を脱したことを喜んでくれている表情とは違う……?

「えっ、何!?」

眉を吊り上げた子爵から、迫力のようなものすら感じて思わずたじろんでしまった。ぷるぷると肩を震わせた彼が、ビっと魔獣の居た位置を指で示す。

「何て……何て無駄な戦い方だ!!」

「えっ、えぇ!?」
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