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異分子

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出て行った時と同じく、窓を乗り越えて部屋の中へ戻ってくるアスト。
ただし、その肩には人間が一人担がれている……それなりに重そうなのに、全然そんなことなさそうに入ってくるなぁ……。
神官様は、抱えて持って来た記録の束を机に置くと、眼鏡を持ち上げて男の人を見る。
あれ……うちの領地近くのものだけにしては、何となく枚数が多いような……?

「アスト、その人は……」

「不審者だ。盗み聞きしてたから捕らえて縛った」

アストは、どさ、と音を立てて、その男の人を室内の壁際に転がした。
くの字になる体。後ろ手に、グーにした手がまとまってる。
目には見えないけど、何かで縛ってあるのかな。

「盗み聞き?」

「……シールドを越えられてる。多分、それだ」

そっか、シールドが張ってあったんだ……
わたしが宿泊どころで張った時と同じように、中の会話が外へ漏れないようにするためのものだろう。
その範囲が教会全体なのか、この部屋だけのことかは分からないけど……

それっていうのは恐らく、わたしの手の中の……気絶してる小鳥。
アストは、わたしから小鳥を受け取ると、調べるように目を細くした。

「この辺でよく見かける鳥だけど……術士の魔力がほんの少しだけ入ってる」

ここって、滅多なことじゃ魔法は使えないはずじゃ……
神官様やアストが使っているように見えるのは、おそらく教会で許可を貰ってるものなんだろう。
わたしが魔石を浄化したのは、魔力……も、使うけど、月光の力の方が重要だから除外されていたのかな……

でも、この人は完全な部外者に見える。
そう思って神官様を見上げると、彼も顎に手をあてて考え込むようにしていた。

「特殊能力……もしくは、彼の体質が何か関係してるのかもしれない」

「こっちの会話に反応したように見えたし、十中八九関係者だろ」

「この人、領地を出るときに見た気がします……少し雰囲気は変わってるけど……」

すぐに気付けなかったのは、あの時は遠目だったというのもあるけど、この人の服装がずいぶんラフなものになっているからだ。
ただ、あれから数日は経っているわけだし、着替えていてもおかしくない。

……というか今さらだけど、神官様が水晶で読み取ってくれた追手っていうのは、この人が……?

「……すると、上への報告は……この方の話を聞いてからの方が、いいかもしれませんね」

そしてアストの手の中へと視線を移す。

「意識が連動してるんだろうか……鳥も縛ってあるのかい?」

「羽根の先を何枚か固めた。起きてもろくに飛べはしない」

掌を上向きにして小鳥を乗せたまま、アストは頷く。

「室内用の止まり木があっただろ、こっちはとりあえずそれに繋ごう」

「あれか……どこに有ったかな……」

頭の後ろを掻きながら、扉続きである隣の……わたしが寝かされていた部屋へと神官様が向かう。
わたしは、気付いたらその後を追ってしまっていた。

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