上 下
2 / 7

元推し

しおりを挟む
好きな推しがいるだけで世界がバラ色に染まる。嫌な学校もバイトも、推しの存在で乗り越えられるし、なんならバイトで得た金は推しの生活を支える金に変わると気付いた時にはバイト先に感謝した。

俺の推し様は白色担当の王子、コトコ。中性的な声で、いつも配信に来たリスナーを陽気なキャラで楽しませてくれる人。歌枠から雑談、ゲーム配信に凸企画。

飽きることの無いその枠は最初こそリスナーの人数は2桁だったけれど、あっという間に4桁まで達した。1年前くらいから大手とのコラボに呼ばれだして、「あっ、これは伸びるやつだ」と察した。彼の芽が出るその日まで推して推して推した。

そして人気が出始めて握手会、チェキ会、ライブに足繁く通って…気付いてしまった


ステージに立つ彼は輝いていて眩しくてそして遠い人だと。別に認知してほしいわけじゃない。でも思ってしまったのだ。

沢山の人に推されている彼に…俺は必要なくて。なんなら居るか居ないかすら分からず

ただファンとして。
数字としてしかカウントされないと。



一方通行なその思いは我に返ったとき酷く滑稽で、虚しくなった。彼色に染まった部屋も、持ち物も、価値観も。染っても染っても意味を持たないのに。

ただ近くに居れるような錯覚に酔いしれて、でも実際は1人ぼっちで。ただ寂しい。



彼が有名になって1年ちょっと。気付けば彼を追いかけることを止めていた。

まず男が男をガチで推すのも世間体的にどうなのか、と気付き。周りの目を気にするようになり、

彼を見に行くことも辛くなった。

普通の推し事をすれば幾分楽だったのだろうか。異性で可愛くてふわふわした女の子とか

踊りの振り付けを覚えて、会場と一体感になって。同士と肩を組みながらどこが良かったとか、衣装のここが可愛かったとか。熱く語り合って、SNSに感想を投稿したりして。


そんな普通の推し事をしていたら、俺は幸せだと胸を張って言えていたのだろうか


『はぁ…、たらればの話しをしても仕方ないよな』

白色担当コトコの推しを降りて、結局コトコに似た中性的な新人配信者を推し始めた。

女の子を推していたら、なんて前置きはただの言い訳で結局は推さなかったし推せなかった。



新人の配信者を通してコトコの影を追いかけているだけ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

俺は完璧な君の唯一の欠点

白兪
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。 そんな彼にも、唯一の欠点がある。 それは、平凡な俺に依存している事。 平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染

海野
BL
 唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。  ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

愛人は嫌だったので別れることにしました。

伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。 しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったらしい

325号室の住人
BL
父親代わりの叔父に、緊急事態だと呼び出された俺。 そこで、幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったと知って… ☆全4話 完結しました R18つけてますが、表現は軽いものとなります。

処理中です...