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願い事
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彼が歌うその瞬間から、空気が震えた。
歓喜だろうか。
イントロが流れ、彼が紡ぐ声音が音楽に乗り
ライブ感のような高揚感が俺を、リスナーを包んだ。決して忘れていた訳じゃない
彼は現役の歌い手で、今騒がれている人気者だと言う事を。だだ…そう、彼の歌声を加工無しで聞ける上に、イヤホン越しだと
思い知らされる。
実力でのし上がって来た□□さんと俺の差を
そんな事を叩きつけるかのような、圧倒的な歌声に。嫉妬とか、怒りなんて陳腐なものは浮かんで来るはずもなく、
ただ、初めて人の歌声に…涙を流した。
□
■
□
ーえ、あくあ泣いてね!?
ー泣いてるやん
ーあくあ泣くからつられた…
ー□□さんの声帯神だわぁ
ーぱちこぉおおおおお
ーあんこーる!!!
ーあ、あく、、、あ?…大丈夫?
ミュートをして聞いているはずが、押し忘れていたせいでコメ欄が騒つく。
聞き入っていた□□さんの歌はあっという間に終わり、
ノンブレスでどちらがどこまで歌えるか、の勝負だったが…もう既に色々と負けていた
彼は苦しそうな素振りを見せずに2分間、持ち堪え。声がだんだん消えるようにして終わった。
苦しさでうっかり息を吸った俺とは大違い
どことなくまだ余裕感が漂っていたのは…気のせいではないだろう
ど、…どんだけ肺活量鍛えてんだよ!!
1分すらも我慢できなかったからこそ言える
こんなヤツに俺が勝てる筈がないのだ
誰が見ても勝者は決まっていた。
『で?□□さんの願いはなんですか?』
やけくそ、と言うよりは潔い判断だと言って頂きたい。俺は負けてねぇ!!なんて言ってみろよ、ダサいにも程がある。
明らかに俺が敗者で、勝者は彼だ
それに、高すぎるパソコンをもらっておいて。今のやっぱ無し。なんて言いたくない
すげぇ嬉しかったし…まぁ、吃驚はしたけど
久々に□□さんとコラボできて良い思い出にもなったと思う。だってほら、彼がもっと有名になったらこうして絡むことも無くなる訳で、
遠い存在になるのは目に見えている
だから…、
忘れるべきなんだ。彼が軽はずみに言ったあの言葉を。
流すべきだ。
聞かなかった事にして…忘れないと、ダメだ
“俺…あくあさんが好きです”
あの言葉が凄く嬉しかった事も。
あの後、意識してしまった事も。
全部全部…ぜんぶ、蓋をして忘れるべきだ
「俺あくあさんの家に行きたいです」
良い思い出が出来た、
そう自分に言い聞かせる中、彼が願ったものは…
予想外のものでした。
歓喜だろうか。
イントロが流れ、彼が紡ぐ声音が音楽に乗り
ライブ感のような高揚感が俺を、リスナーを包んだ。決して忘れていた訳じゃない
彼は現役の歌い手で、今騒がれている人気者だと言う事を。だだ…そう、彼の歌声を加工無しで聞ける上に、イヤホン越しだと
思い知らされる。
実力でのし上がって来た□□さんと俺の差を
そんな事を叩きつけるかのような、圧倒的な歌声に。嫉妬とか、怒りなんて陳腐なものは浮かんで来るはずもなく、
ただ、初めて人の歌声に…涙を流した。
□
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ーえ、あくあ泣いてね!?
ー泣いてるやん
ーあくあ泣くからつられた…
ー□□さんの声帯神だわぁ
ーぱちこぉおおおおお
ーあんこーる!!!
ーあ、あく、、、あ?…大丈夫?
ミュートをして聞いているはずが、押し忘れていたせいでコメ欄が騒つく。
聞き入っていた□□さんの歌はあっという間に終わり、
ノンブレスでどちらがどこまで歌えるか、の勝負だったが…もう既に色々と負けていた
彼は苦しそうな素振りを見せずに2分間、持ち堪え。声がだんだん消えるようにして終わった。
苦しさでうっかり息を吸った俺とは大違い
どことなくまだ余裕感が漂っていたのは…気のせいではないだろう
ど、…どんだけ肺活量鍛えてんだよ!!
1分すらも我慢できなかったからこそ言える
こんなヤツに俺が勝てる筈がないのだ
誰が見ても勝者は決まっていた。
『で?□□さんの願いはなんですか?』
やけくそ、と言うよりは潔い判断だと言って頂きたい。俺は負けてねぇ!!なんて言ってみろよ、ダサいにも程がある。
明らかに俺が敗者で、勝者は彼だ
それに、高すぎるパソコンをもらっておいて。今のやっぱ無し。なんて言いたくない
すげぇ嬉しかったし…まぁ、吃驚はしたけど
久々に□□さんとコラボできて良い思い出にもなったと思う。だってほら、彼がもっと有名になったらこうして絡むことも無くなる訳で、
遠い存在になるのは目に見えている
だから…、
忘れるべきなんだ。彼が軽はずみに言ったあの言葉を。
流すべきだ。
聞かなかった事にして…忘れないと、ダメだ
“俺…あくあさんが好きです”
あの言葉が凄く嬉しかった事も。
あの後、意識してしまった事も。
全部全部…ぜんぶ、蓋をして忘れるべきだ
「俺あくあさんの家に行きたいです」
良い思い出が出来た、
そう自分に言い聞かせる中、彼が願ったものは…
予想外のものでした。
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