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第271話
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結局、アルカントラ法国の使徒たちは、迷宮の結界を修復することは出来ずにいた。
原因不明なので一度、アルカントラ法国に戻りたいと話すが、バビロニア領主は一蹴する。
自分たちでは、どうすることも出来ない現状。
なんとか、アルカントラ法国に戻ろうと必死の様子が非常に滑稽だった。
そして、領主の屋敷から戻って来た。
「どうだった?」
アルカントラ法国に懐疑心を抱いている国主は冷たい言い方で、ギルマスに真偽を問う。
「スタンピードに関係する魔法陣だったと、数名の魔法師が確認致しました」
フォークオリア法国の使徒が言っていたことは本当だった。
「そんなはずはない。何かの間違いです!」
申し開きするが、その声はラバンニアル共和国の国主とバビロニア領主の心に響かなかった――。
アルカントラ法国の使徒たちは、スタンピードを画策したと、その場で拘束される。
「私どもの頂ければ、フォークオリア法国の者を常駐させますし、維持管理に関係する費用も、以前より提案させて頂いているアルカントラ法国よりもお安い価格でさせて頂きます」
ここぞとばかりに自国を売り込む。
「その話は町に戻って、聞かせてもらいます」
バビロニア領主は回答を保留にするが、すでにアルカントラ法国に失望していた。
それは国主も同じ思いだった。
自国に責任がないと言わんばかりの責任転換に、一向に修復作業をしようとしない行為に苛立ちを覚えていた。
すでに信頼関係は破綻していた。
町に戻ると、領主の屋敷に設置されていた置物に施されていた魔法陣を確認してから破壊する。
これでアルカントラ法国の言い分を聞く必要が無くなった。
ギルマスは冒険者ギルドとしての報酬もあるので、事前に冒険者たちの死傷者を確認していた。
冒険者としての尊厳を失う訳にはいけない。
今後の冒険者の活動に支障をきたさないように交渉するのもギルマスの責務だからだ。
ギルマスから死傷者の数を聞いた国主は思っていた以上の数に驚き、町を守ってくれた冒険者たちに感謝する。
すぐに国主はアルカントラ法国に向けて、抗議文を出すことにする。
持たせたのはアルカントラ法国の国主と共にバビロニアに訪れている宰相。
護衛に十人の騎士たちと、アルカントラ法国の使者の一人だ。
抗議文にはアルカントラ法国の国王以外には開けることが出来ない魔法を施している。
これは国家間での正式文書には全て施される魔法で、決して第三者に開けることは出来ない。
そして、フォークオリア法国との交渉を進めようとするが、正式に国家間での対談が必要になるため、
フォークオリア法国も使徒の一人を国に戻らせて、取り急ぎ報告するためだ。
もちろん、フォークオリア法国にとっては良い報告だ。
バビロニアでのラバンニアル共和国とアルカントラ法国の関係は完全に崩壊して、新たにフォークオリア法国との関係を構築する瞬間だった。
ただ、フォークオリア法国としても崩壊した迷宮の門を簡単に修復することは出来ず、二ヶ月ほど時間が欲しいということだった。
しかも、修復費用は今後、迷宮の結界を任せてくれれば、フォークオリア法国が持つ。
さらに簡易的な結界をすぐにでも張ることも可能だと伝える。
もちろん、フォークオリア法国に任せてくれれば無償だと、ラバンニアル共和国側に有利な条件内容だった。
フォークオリア法国の使徒には、それなりの権限があり、その場で提案が出来る一方で、アルカントラ法国の使徒には決定権がなかったことも大きい。
それだけで、心証が大きく変わる。
その日の夕方、ラバンニアル共和国の国主同席の元、バビロニア領主から発表される。
「バビロニアの迷宮への入場は、完全に修復が完了するまで、入場禁止とする」
薄々、感づいていたが正式な発表が決定的となる。
方針を間違えると致命的になることは分かっているので、バビロニア領主としても苦渋の決断だったのだろうと、仕方がないと諦めの雰囲気が漂う。
すぐにバビロニアを出立する準備をする者。
仲間と話し合いを始める者。
他に行く当てがないため、迷宮に入場できなくても、バビロニアに留まる者。
だが結果的に、多くの冒険者たちはバビロニアを離れることを選択する。
冒険者相手に商売をしていた、商人たちの多くも同様に去ろうと考えていた。
ただ、スタンピードで負傷した冒険者の中には意識を取り戻していない冒険者も多くいる。
リゼも、その一人だ。
仲間の意識が戻るまでは、バビロニアに滞在しようとするレティオールや、シャルルのような冒険者も多くいた。
夕方には翌々日までの馬車の予約は一杯となる。
移動する商人たちに護衛ということで、一緒にバビロニアを出立しようとする冒険者もいる。
その状況をギルマスは悔しそうに見ていた。
引き止める権利は誰にもないからだ。
「寂しいものだな」
「……リャンリーか。迷宮にいた仲間は見つかったか?」
「いいや。迷宮内に残っているとしても、生存している確率は低いだろう」
「そうか……まだ迷宮に挑戦し続けるのか?」
「あぁ、そのつもりだが……今回のようなスタンピードが起きた時に、迷宮の中にいて、町を守れなかったと後悔するのであれば、少し考えが変わる」
「……お前、ギルマスになる気は無いか」
突然の言葉に、リャンリーは驚く。
「今回の件で、自分の力不足を感じた。なにより、お前は女性だが、町の冒険者たちからも一目置かれているし……どうだ?」
ギルマスになるということは、冒険者を引退することを意味する。
正式には引退では無く、第一線で活躍しなくなるということだ。
「少し、考えさせてくれ」
「あぁ、良い返事を期待している」
バビロニアという町に、大きな変革の波が押し寄せていた――。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十三』
『魔力:三十二』
『力:二十七』
『防御:十九』
『魔法力:二十五』
『魔力耐性:十二』
『敏捷:百七』
『回避:五十五』
『魅力:二十三』
『運:五十七』
『万能能力値:五』
■メインクエスト
・スタンピードからバビロニアを防衛。期限:スタンピード終息まで
・報酬:達成度により変動。最高報酬(万能能力値:十増加)
■サブクエスト
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
・殺人(一人)。期限:無
・報酬:万能能力値(十増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
原因不明なので一度、アルカントラ法国に戻りたいと話すが、バビロニア領主は一蹴する。
自分たちでは、どうすることも出来ない現状。
なんとか、アルカントラ法国に戻ろうと必死の様子が非常に滑稽だった。
そして、領主の屋敷から戻って来た。
「どうだった?」
アルカントラ法国に懐疑心を抱いている国主は冷たい言い方で、ギルマスに真偽を問う。
「スタンピードに関係する魔法陣だったと、数名の魔法師が確認致しました」
フォークオリア法国の使徒が言っていたことは本当だった。
「そんなはずはない。何かの間違いです!」
申し開きするが、その声はラバンニアル共和国の国主とバビロニア領主の心に響かなかった――。
アルカントラ法国の使徒たちは、スタンピードを画策したと、その場で拘束される。
「私どもの頂ければ、フォークオリア法国の者を常駐させますし、維持管理に関係する費用も、以前より提案させて頂いているアルカントラ法国よりもお安い価格でさせて頂きます」
ここぞとばかりに自国を売り込む。
「その話は町に戻って、聞かせてもらいます」
バビロニア領主は回答を保留にするが、すでにアルカントラ法国に失望していた。
それは国主も同じ思いだった。
自国に責任がないと言わんばかりの責任転換に、一向に修復作業をしようとしない行為に苛立ちを覚えていた。
すでに信頼関係は破綻していた。
町に戻ると、領主の屋敷に設置されていた置物に施されていた魔法陣を確認してから破壊する。
これでアルカントラ法国の言い分を聞く必要が無くなった。
ギルマスは冒険者ギルドとしての報酬もあるので、事前に冒険者たちの死傷者を確認していた。
冒険者としての尊厳を失う訳にはいけない。
今後の冒険者の活動に支障をきたさないように交渉するのもギルマスの責務だからだ。
ギルマスから死傷者の数を聞いた国主は思っていた以上の数に驚き、町を守ってくれた冒険者たちに感謝する。
すぐに国主はアルカントラ法国に向けて、抗議文を出すことにする。
持たせたのはアルカントラ法国の国主と共にバビロニアに訪れている宰相。
護衛に十人の騎士たちと、アルカントラ法国の使者の一人だ。
抗議文にはアルカントラ法国の国王以外には開けることが出来ない魔法を施している。
これは国家間での正式文書には全て施される魔法で、決して第三者に開けることは出来ない。
そして、フォークオリア法国との交渉を進めようとするが、正式に国家間での対談が必要になるため、
フォークオリア法国も使徒の一人を国に戻らせて、取り急ぎ報告するためだ。
もちろん、フォークオリア法国にとっては良い報告だ。
バビロニアでのラバンニアル共和国とアルカントラ法国の関係は完全に崩壊して、新たにフォークオリア法国との関係を構築する瞬間だった。
ただ、フォークオリア法国としても崩壊した迷宮の門を簡単に修復することは出来ず、二ヶ月ほど時間が欲しいということだった。
しかも、修復費用は今後、迷宮の結界を任せてくれれば、フォークオリア法国が持つ。
さらに簡易的な結界をすぐにでも張ることも可能だと伝える。
もちろん、フォークオリア法国に任せてくれれば無償だと、ラバンニアル共和国側に有利な条件内容だった。
フォークオリア法国の使徒には、それなりの権限があり、その場で提案が出来る一方で、アルカントラ法国の使徒には決定権がなかったことも大きい。
それだけで、心証が大きく変わる。
その日の夕方、ラバンニアル共和国の国主同席の元、バビロニア領主から発表される。
「バビロニアの迷宮への入場は、完全に修復が完了するまで、入場禁止とする」
薄々、感づいていたが正式な発表が決定的となる。
方針を間違えると致命的になることは分かっているので、バビロニア領主としても苦渋の決断だったのだろうと、仕方がないと諦めの雰囲気が漂う。
すぐにバビロニアを出立する準備をする者。
仲間と話し合いを始める者。
他に行く当てがないため、迷宮に入場できなくても、バビロニアに留まる者。
だが結果的に、多くの冒険者たちはバビロニアを離れることを選択する。
冒険者相手に商売をしていた、商人たちの多くも同様に去ろうと考えていた。
ただ、スタンピードで負傷した冒険者の中には意識を取り戻していない冒険者も多くいる。
リゼも、その一人だ。
仲間の意識が戻るまでは、バビロニアに滞在しようとするレティオールや、シャルルのような冒険者も多くいた。
夕方には翌々日までの馬車の予約は一杯となる。
移動する商人たちに護衛ということで、一緒にバビロニアを出立しようとする冒険者もいる。
その状況をギルマスは悔しそうに見ていた。
引き止める権利は誰にもないからだ。
「寂しいものだな」
「……リャンリーか。迷宮にいた仲間は見つかったか?」
「いいや。迷宮内に残っているとしても、生存している確率は低いだろう」
「そうか……まだ迷宮に挑戦し続けるのか?」
「あぁ、そのつもりだが……今回のようなスタンピードが起きた時に、迷宮の中にいて、町を守れなかったと後悔するのであれば、少し考えが変わる」
「……お前、ギルマスになる気は無いか」
突然の言葉に、リャンリーは驚く。
「今回の件で、自分の力不足を感じた。なにより、お前は女性だが、町の冒険者たちからも一目置かれているし……どうだ?」
ギルマスになるということは、冒険者を引退することを意味する。
正式には引退では無く、第一線で活躍しなくなるということだ。
「少し、考えさせてくれ」
「あぁ、良い返事を期待している」
バビロニアという町に、大きな変革の波が押し寄せていた――。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十三』
『魔力:三十二』
『力:二十七』
『防御:十九』
『魔法力:二十五』
『魔力耐性:十二』
『敏捷:百七』
『回避:五十五』
『魅力:二十三』
『運:五十七』
『万能能力値:五』
■メインクエスト
・スタンピードからバビロニアを防衛。期限:スタンピード終息まで
・報酬:達成度により変動。最高報酬(万能能力値:十増加)
■サブクエスト
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
・殺人(一人)。期限:無
・報酬:万能能力値(十増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
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