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第214話
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あまり奥に行くと迷うと思い、適度な場所で引き返すことにして、三階層の探索を一旦終える。
マッドバット以降は新しい魔物と遭遇しなかったので、早めに見切りをつけて四階層を目指すことにした。
四階層に下りると目の前には大きな湖がある。
湖の周囲には光苔が生えているので、松明無しでも周囲を明るく照らしていた。
歩いている冒険者たちの邪魔にならないように横に移動して、リゼは松明を仕舞う。
改めて四階層を見渡す。
湖の中央に道があり、何人かの冒険者たちが歩いていたが、湖から魔物の攻撃を受けていることが遠目でも分かる。
他にも湖を迂回するかのように歩いている冒険者もいる。
数で言えば、迂回する冒険者のほうが多い。
こちらは魔物からの攻撃は無いように見える。
実力のある冒険者だけが最短で向こう岸に行ける中央の道を進めるのだと理解しながら、リゼも安全を見て迂回しながら進む。
途中で横道があったので、そちらを進むことにした。
聞きなれた蛙の鳴き声が前方から聞こえるが、蛙ではないことは分かっていた。
リゼは武器を取り出して構える。
前方から大きな物体が目の前に飛んできたので、間一髪で回避する。
赤いその物体が戻っていく。
その先にいたのは“スワロウトード”だった。
長い舌を伸ばして捕獲して人間一人くらいは簡単に飲み込んでしまう。
気を付けるのは舌だけで、比較的簡単に倒せる魔物だと思われている。
それは、スワロウトードが狭い場所を好み生活をしているからだ。
パーティーなどの多人数だと狭いため、本来の強みである連携が出来ずに戦闘の冒険者と一対一での戦闘になる。
一人を飲み込んだ後に出来る、ほんのわずかな隙を狙い攻撃をするしかない。
一度に飲む込めるのが大人で三人程度なので、四人目で倒す討伐方法も存在する。
だが、スワロウトードの唾液には即効性の麻痺効果があるため、飲み込まれた後に口の中から攻撃をすることは出来ない。
だから捕獲対象が一人の場合、難易度は普通の魔物以上に上がる。
リゼが横穴に入っていく時、スワロウトードの巣だと気付いた冒険者からは「一人でって馬鹿なのか?」と言われていたのは、そういった理由があったからだ。
捕獲された後に助かった場合、体中がスワロウトードの粘液まみれになり、地上に戻ると一目瞭然なので他の冒険者たちから笑いの的にされる。
リゼも目の前の敵がスワロウトードだと気付いていた。
魔物図鑑に載っていたのを覚えていたからだ。
ガルプト―ドというスワロウトードよりも一回り小さい魔物をオーリスの時に解体したことがある。
素材として重宝されていたので、上手く倒せばそれなりに買い取ってくれるだろうと期待する。
ガルプトードやスワロウトードのような同系統魔物は、急所も同じことが多い。
首から背中にかけて続いているイボの一番上、首元あたりだったと記憶を呼び起こす。
狭いこの場所で、スワロウトードの舌攻撃を避けながら背後を取るのは至難の業だ。
手に持っていた小太刀を短刀に持ち替える。
狭いこの場所では小太刀よりも、短刀の方が扱いやすいと判断したからだ。
リゼはスワロウトードの射程圏外にいるのは、スワロウトードから攻撃を仕掛けて来ない。
一歩、また一歩とリゼは距離を詰める。
右足を出した瞬間にスワロウトードの下が伸びる! が、リゼは舌に向かって突進をすると舌が戻りきる前に短刀で舌を斬る。
その感覚は母親と暮らしていた時に、初めて包丁を手に取り力も入れずに食材を切った感触を思い出す。
切断した舌は地面に落ちた直後こそ小刻みに動いていたが、時間とともに動かなくなる。
スワロウトードは唯一の武器を失ったことで行動にも制限がかかり、リゼは背後に回りスワロウトードの首元に短刀を突き刺す。
暴れるスワロウトードに振り落とされる前に、背中から下りる。
数分後、流れ出る血は徐々に勢いがなくなると、スワロウトードは絶命する。
リゼはすぐに解体作業に移る。
大きさは違えど体の構造は同じだと、オーリスでの解体作業を思い出しながら慎重に解体する。
解体を終えると部位ごとにマジックバッグに仕舞う。
いつものことながら、大きな部位でも仕舞うことが出来るマジックバックに感心していた。
倒したスワロウトードの奥に、今まで飲み込んできた人間や魔物の消化できない物が多く積み重なっていた。
武器や防具も多く積み重なっていた。
リゼは申し訳ないと思いながら、武器や防具をアイテムバックに詰め込む。
(あれ?)
武器や防具の中に首飾りなどの装飾品があることに気付く。
武具屋で高額取引されていたことを思い出す。
骨の中から必死で武器や防具などを探してアイテムバッグに入れ続けた。
同じようにアイテムバッグも回収する。
冒険者ギルドでアイテムバッグの契約を解除して中身を貰う権利が発生するので、これからのバビロニアでの活動費にもなる。
冒険者プレートも幾つかあったので、冒険者ギルドへ持ち帰るため、丁寧にアイテムバッグに仕舞う。
スワロウトードの巣から戻ると、横穴から突然出てきたリゼに通行していた冒険者に驚く。
しかし、リゼは気にすることなく、他のスワロウトードの巣にも同じように武器や防具をあると思い、入れそうな横穴に積極的に入って行った。
効率の悪い討伐になるため、多くの冒険者スワロウトードの巣だと分かっていても素通りする。
リゼの思った通り、スワロウトードは巣の奥に排泄物を貯めていた。
その中には、かなり古いものもある。
何年も倒されずに、この巣で過ごしていたことの証明だ。
基本的には巣から動かずに、巣に入って来る冒険者や魔物を襲うスワロウトード。
食事の量によっては、一年くらいは食事なしで過ごすことが出来る。
巣を出るときは空腹に耐えきれなくなった時か、年に一回ある交尾の時くらいだ。
リゼは四つほどのスワロウトードの巣で討伐後に排泄物を漁る。
全てアイテムバックに収納し終えると、バビロニアでの当面の資金は確保できたと、少しだけ安心して、四階を奥へと進む。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:三十六』
『魔力:三十』
『力:二十三』
『防御:二十』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十六』
『敏捷:八十六』
『回避:四十三』
『魅力:二十四』
『運:四十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・迷宮で未討伐の魔物討伐(討伐種類:三十)。期限:三十日
・報酬:転職ステータス値向上
■サブクエスト
・防具の変更。期限:二年
・報酬:ドヴォルグ国での武器製作率向上
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
マッドバット以降は新しい魔物と遭遇しなかったので、早めに見切りをつけて四階層を目指すことにした。
四階層に下りると目の前には大きな湖がある。
湖の周囲には光苔が生えているので、松明無しでも周囲を明るく照らしていた。
歩いている冒険者たちの邪魔にならないように横に移動して、リゼは松明を仕舞う。
改めて四階層を見渡す。
湖の中央に道があり、何人かの冒険者たちが歩いていたが、湖から魔物の攻撃を受けていることが遠目でも分かる。
他にも湖を迂回するかのように歩いている冒険者もいる。
数で言えば、迂回する冒険者のほうが多い。
こちらは魔物からの攻撃は無いように見える。
実力のある冒険者だけが最短で向こう岸に行ける中央の道を進めるのだと理解しながら、リゼも安全を見て迂回しながら進む。
途中で横道があったので、そちらを進むことにした。
聞きなれた蛙の鳴き声が前方から聞こえるが、蛙ではないことは分かっていた。
リゼは武器を取り出して構える。
前方から大きな物体が目の前に飛んできたので、間一髪で回避する。
赤いその物体が戻っていく。
その先にいたのは“スワロウトード”だった。
長い舌を伸ばして捕獲して人間一人くらいは簡単に飲み込んでしまう。
気を付けるのは舌だけで、比較的簡単に倒せる魔物だと思われている。
それは、スワロウトードが狭い場所を好み生活をしているからだ。
パーティーなどの多人数だと狭いため、本来の強みである連携が出来ずに戦闘の冒険者と一対一での戦闘になる。
一人を飲み込んだ後に出来る、ほんのわずかな隙を狙い攻撃をするしかない。
一度に飲む込めるのが大人で三人程度なので、四人目で倒す討伐方法も存在する。
だが、スワロウトードの唾液には即効性の麻痺効果があるため、飲み込まれた後に口の中から攻撃をすることは出来ない。
だから捕獲対象が一人の場合、難易度は普通の魔物以上に上がる。
リゼが横穴に入っていく時、スワロウトードの巣だと気付いた冒険者からは「一人でって馬鹿なのか?」と言われていたのは、そういった理由があったからだ。
捕獲された後に助かった場合、体中がスワロウトードの粘液まみれになり、地上に戻ると一目瞭然なので他の冒険者たちから笑いの的にされる。
リゼも目の前の敵がスワロウトードだと気付いていた。
魔物図鑑に載っていたのを覚えていたからだ。
ガルプト―ドというスワロウトードよりも一回り小さい魔物をオーリスの時に解体したことがある。
素材として重宝されていたので、上手く倒せばそれなりに買い取ってくれるだろうと期待する。
ガルプトードやスワロウトードのような同系統魔物は、急所も同じことが多い。
首から背中にかけて続いているイボの一番上、首元あたりだったと記憶を呼び起こす。
狭いこの場所で、スワロウトードの舌攻撃を避けながら背後を取るのは至難の業だ。
手に持っていた小太刀を短刀に持ち替える。
狭いこの場所では小太刀よりも、短刀の方が扱いやすいと判断したからだ。
リゼはスワロウトードの射程圏外にいるのは、スワロウトードから攻撃を仕掛けて来ない。
一歩、また一歩とリゼは距離を詰める。
右足を出した瞬間にスワロウトードの下が伸びる! が、リゼは舌に向かって突進をすると舌が戻りきる前に短刀で舌を斬る。
その感覚は母親と暮らしていた時に、初めて包丁を手に取り力も入れずに食材を切った感触を思い出す。
切断した舌は地面に落ちた直後こそ小刻みに動いていたが、時間とともに動かなくなる。
スワロウトードは唯一の武器を失ったことで行動にも制限がかかり、リゼは背後に回りスワロウトードの首元に短刀を突き刺す。
暴れるスワロウトードに振り落とされる前に、背中から下りる。
数分後、流れ出る血は徐々に勢いがなくなると、スワロウトードは絶命する。
リゼはすぐに解体作業に移る。
大きさは違えど体の構造は同じだと、オーリスでの解体作業を思い出しながら慎重に解体する。
解体を終えると部位ごとにマジックバッグに仕舞う。
いつものことながら、大きな部位でも仕舞うことが出来るマジックバックに感心していた。
倒したスワロウトードの奥に、今まで飲み込んできた人間や魔物の消化できない物が多く積み重なっていた。
武器や防具も多く積み重なっていた。
リゼは申し訳ないと思いながら、武器や防具をアイテムバックに詰め込む。
(あれ?)
武器や防具の中に首飾りなどの装飾品があることに気付く。
武具屋で高額取引されていたことを思い出す。
骨の中から必死で武器や防具などを探してアイテムバッグに入れ続けた。
同じようにアイテムバッグも回収する。
冒険者ギルドでアイテムバッグの契約を解除して中身を貰う権利が発生するので、これからのバビロニアでの活動費にもなる。
冒険者プレートも幾つかあったので、冒険者ギルドへ持ち帰るため、丁寧にアイテムバッグに仕舞う。
スワロウトードの巣から戻ると、横穴から突然出てきたリゼに通行していた冒険者に驚く。
しかし、リゼは気にすることなく、他のスワロウトードの巣にも同じように武器や防具をあると思い、入れそうな横穴に積極的に入って行った。
効率の悪い討伐になるため、多くの冒険者スワロウトードの巣だと分かっていても素通りする。
リゼの思った通り、スワロウトードは巣の奥に排泄物を貯めていた。
その中には、かなり古いものもある。
何年も倒されずに、この巣で過ごしていたことの証明だ。
基本的には巣から動かずに、巣に入って来る冒険者や魔物を襲うスワロウトード。
食事の量によっては、一年くらいは食事なしで過ごすことが出来る。
巣を出るときは空腹に耐えきれなくなった時か、年に一回ある交尾の時くらいだ。
リゼは四つほどのスワロウトードの巣で討伐後に排泄物を漁る。
全てアイテムバックに収納し終えると、バビロニアでの当面の資金は確保できたと、少しだけ安心して、四階を奥へと進む。
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■リゼの能力値
『体力:三十六』
『魔力:三十』
『力:二十三』
『防御:二十』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十六』
『敏捷:八十六』
『回避:四十三』
『魅力:二十四』
『運:四十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・迷宮で未討伐の魔物討伐(討伐種類:三十)。期限:三十日
・報酬:転職ステータス値向上
■サブクエスト
・防具の変更。期限:二年
・報酬:ドヴォルグ国での武器製作率向上
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
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