私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第169話

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 王都に戻ると、リスボンと月白兎は騎士団たちと一緒に行動をするようだが、リゼたちは冒険者ギルドに寄って報告をするため別行動となる。
それ以降は、そのまま冒険者ギルドに待機して騎士団からの連絡を待つ。
 銀翼館に戻りたかったアンジュだったが、向かっている東地区にある冒険者ギルド会館だ。
 道中もリゼが普通の状態を装っていることに気付いていたアンジュとジェイドは、リゼを気遣っていた。

 冒険者ギルドに戻ると、アンジュが月白兎に代わりに状況を説明する。
 事前にジェイドがダンテを連れ戻った時に、大まかな説明はしている。
 ジェイドから説明を受けていないことに対する補足説明と、ジェイドと別れてからの説明に殆どを費やす。
 既にダンテは治療院に運ばれて、治療を受けていた。

 冒険者ギルドに説明を終えたリゼたちは、騎士団が迎えに来るまで、ここで待機することになる。
 特にする事がない三人だったが、入れ代わり立ち代わり多くの冒険者たちが声を掛けてきた。
 その度に、アンジュがリゼのことを「銀翼のメンバーじゃない」と訂正する。
 隣で聞いていたリゼはアンジュに悪いと感じていた。
 しかし、声を掛けて来るのはアンジュたちとの交流もあるが、冒険者の間で噂になっているリゼという冒険者を知りたいと思っていたからだ。
 銀翼のメンバーが弱い冒険者と行動を共にするはずがないという固定概念から、リゼは実力のある冒険者だという前提で話をしていた。
 南地区で活動する冒険者たちで慣れていたリゼだったが、東地区の冒険者は紳士的な印象が強かった。
 地位の高い人や商人を相手にしているから、これが自然な振る舞いなのだということをリゼは知らなかった。
 噂で話をする冒険者たちをアンジュとジェイドが、適当なところで追い返す。

「噂を全て訂正することは出来ないわ。どうせなら、噂が本当だと言えるような実力を付けなさい」

 小さな声を呟いたアンジュの言葉が、リゼの心に響く。


 騎士団の迎えが来た。
 リゼたちは騎士に案内されて、場所を移動する。
 移動した先の施設は”王都魔法研究所”だった。
 いち冒険者が簡単に足を踏み入れることなど出来ない場所だ。
 アンジュやジェイドでさえ、この施設に入ることは初めてのようで驚いていた。
 この王都魔法研究所は、国の重要な施設の一つだ。
 つまり、ここに呼ばれたということは、それだけ重要なことに関与したという事実をリゼたち三人は認識する。
 特に魔術師のアンジュは嬉しそうな表情をしていた。
 緊張しながらリゼたちは、王都魔法研究所の所員に持物検査などをされる。
武器やアイテムバッグは、それぞれ担当の衛兵に渡すと、衛兵は丁寧に扱ってくれた。

 施設に入っても衛兵に囲まれながらの移動になる。
後ろに武器やアイテムバッグを持つ衛兵が同行する。
扉を通るたびに身体検査や持物検査をされる。
国家機密を扱う施設に自分たちは居るのだと、改めて認識する。

 五つ目の扉を開けると部屋の中には、リスボンと月白兎のメンバーが着席していた。
 月白兎のメンバーたちは雑談をするわけでもなく、無言で座っていた。
 自分の席の後ろに二人から三人の衛兵が経っているのも、要因の一つになっている。
 空いた扉から知った顔が現れたのが嬉しかったのか、安心したのか分からないが、全員の表情が和らいでいた。
 着席を進められたリゼたちは各々の席に案内された。

 リゼたちが着席して数分後、再び扉が開いた。
 威厳のある老人の後ろに、若い男女が同行していた。
 老人は席が一望できる場所まで移動すると、そのまま話始める。

「戻ってきて、すぐのところ申し訳ない。儂は、この王都魔法研究所の所長をしておる“ジックペリン”。後ろにいるのは副所長の二人じゃ」

 ジックペリンが振り向くと示し合わせたかのように女性が先に口を開く。

「副所長の“グローア”です」

 簡潔な自己紹介を終えると、続けて男性も自己紹介を始めた。

「同じく副所長の“ラドカ”です。どうぞ、宜しく御願いします」

 初見なら、愛想の良い男性のラドカだった。
女性のグローアは、どこか人を見下しているかのような印象だ。

「まず、無事に品を入手してくれたリスボンに、王都まで届けてくれた月白兎の方々。そして、敵からの襲撃に対応して下さった三名の冒険者も方々、本当に感謝している」

 ジックペリンが頭を下げると、グローアとラドカも同じように頭を下げた。

「質問してもいいですか?」

 場の空気を読まずに、アンジュがジックペリンに手を挙げながら、視線を送った。

「どうぞ」
「有難う御座います。クラン銀翼のアンジュと申します。この場に私たちを呼んだ理由は、感謝の意を伝えるためですか? それとも口止めですか?」

 アンジュが「口止め」という単語を出した瞬間、ジックペリンたちの表情が強張る。

「口止めとは穏やかじゃないですな」

 ジックペリンは笑って答える。

「今回の品に大きく関係するかと思いますが、敵……野盗という言葉を使わさせて頂きますが、野盗たちはフォークオリア法国の者たちですか?」

 いきなり、確信をつく質問に表情が曇る。

「話せない内容もあるかと思いますので、答えられる内容で結構です」

 ジックペリンは眉をひそめながら、言葉を選ぶかのように慎重に話し始めた。

「口止めではないが、重要なことなので口外しないで貰いたい」

 月白兎のメンバーとリゼたちは顔を見合わせながら頷く。

「ありがとう。今から話す内容ですが、聞いたことで危険が及ぶかもしれんが、その覚悟はおありですかな?」

 まず、感謝の言葉を述べると、脅迫ともとれる言葉を口にする。
 予想外の言葉に招待された冒険者たちは、お互いの様子を確認する。
 月白兎はリーダーのシュウの決定に従うようだった。

「俺たちは、十分な報酬も貰ったし、これ以上の詮索をするつもりもないので、帰らさせてもらう」
「そうですか。では、退席頂いて結構です。係の者から追加報酬等のことは聞かれておられるかと思いますが、他に質問等は御座いましたか?」

 シュウは首を横に振る。

「この度は有難う御座いました」

 改めてジックペリンたちは礼を述べて、頭を下げていた。
 リゼたちが到着する前に、王都魔法研究所の所員から別で説明などを受けていた。
 その時に、追加報酬の話も聞いていた。
 だが、シュウたちが話を聞かずに退席しようとしたのには、クエストを受注した冒険者として、依頼主の事情などの余計な詮索はしないという信条からだった。
 当然、アンジュも分かってはいたが、今回は聞かずにはいられないと判断した。
 ジェイドもアンジュに従うようで、席を立つ素振りがない。
 リゼは悩んでいたが、今回の件に関わった者として、何も知らずに立ち去るのも違う気がしていたので座ったままでいた。

「覚悟はおありのようですな」

 リゼたちに再度、心変わりしないかを確認する。
 リスボンも離席をしていないが、事情はリゼたちよりも知っている様子だった。
 微動だにしない三人の冒険者にジックペリンは重い口を開き始めた。


――――――――――――――――――――

■リゼの能力値
 『体力:三十五』
 『魔力:十八』
 『力:二十二』
 『防御:二十』
 『魔法力:十一』
 『魔力耐性:十六』
 『敏捷:八十四』
 『回避:四十三』
 『魅力:十七』
 『運:四十三』
 『万能能力値:零』

■メインクエスト
 ・王都にある三星飲食店で十回食事をする。一店一回。期限:十二日
 ・報酬:魅力(二増加)、運(二増加)
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