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第141話
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オリシスの迷宮を出ると、立っていた衛兵と目が合う。
「無事だったようだな」
「はい」
「名前は……なんていった?」
「リゼです」
「リゼ……ね」
最低限の言葉でリゼは返した。
衛兵は束になった書類から、リゼが書いた書類を探して迷宮から帰還したことを書き加えた。
「終わったから行っていいぞ」
「はい、有難う御座いました」
りぜは、軽く頭を下げて去って行く。
その後ろ姿を見ながら、衛兵は笑っていた。
オリシスの迷宮から生きて帰って来たリゼを見て嬉しかったからだ。
入る時からリゼのことは印象が強かったので覚えている。
衛兵同士の話でも、この三日間で二度ほど話題になった。
話の内容は「無事だろうか?」ということだけだ。
(疲れたな……)
迷宮から出たことで、一気に緊張感が無くなり、今まで感じていなかった疲労感がリゼの体を襲う。
しかし、地上でも魔物との遭遇はあるので、気を抜くことは出来ない。
分かってはいるが、リゼの頭の中はメインクエストの『王都へ移動』で一杯だった。
いずれは王都に行くつもりではいたが、メインクエストになったことで期限が決定した。
一年以内に移動する準備を始めなければいけない。
王都への行き方や、詳細な移動日数などなど……。
それにオーリスで御世話になった人たちとの別れが、リゼにとってはもっとも辛かった。
去って行く人たちは多くいたが、自分が去って行く側にになったことがほとんど無かったからだ。
育った村から父親と住むために、村を去ったことはあるが、実際は追い出されたと思っている。
母親の眠るあの村にも帰ることは無い……帰れないと思っているからだ。
それが領主が変わっても、リゼの思いに変化が出ることは無い。
今回のクエストで迷宮に入ったことで、自分なりの課題を明確になっていた。
一番の問題は単独での活動には限界があることだ。
睡眠一つにしても、仲間がいれば交代で見張ることが出来るし、攻撃にしても多数の魔物相手では限界がある。
分かってはいたが実際に体験してみると、他の冒険者たちがパーティーを組んでいる意味が身に染みて分かった。
自分に自信のないリゼは、自分を迎え入れてくれるパーティーなど無いと思っているし、パーティーに入っても迷惑を掛けるだけだと思っている。
単独での活動が厳しいと分かっているが、リゼは単独以外の選択肢がないのだと諦めていた。
後方から荷馬車の音がするので、リゼは少し草むらに移動しながら歩く。
自分の横を通り過ぎた荷馬車だったが、リゼの少し前で止まった。
リゼは不思議に思いながら、止まっている荷馬車の横と通り過ぎようとする。
「お嬢ちゃん、冒険者かい?」
荷馬車に乗っていた男性に声を掛けられる。
「はい、そうです」
「もしかして、オーリスに戻るのかい?」
「はい」
「俺たちもオーリスに行くから乗っていくかい?」
「えっ、でも……」
思いもよらない言葉にリゼは戸惑った。
「まぁ、荷台に酔っ払いが三人ほど乗っているが、そいつらと一緒でも良ければってことだけどな」
男性は指で後ろの荷馬車を指差すと、荷台から若い女性と老人の男性が顔を出す。
近い距離ではないが、この距離からでも二人が酔っぱらっているのが分かる。
「お嬢ちゃんも乗って行きなよ」
「そうそう、生い先短い老人に楽しい話でも聞かせてくれんかの」
陽気な二人組がリゼを誘う。
「その乗車賃が……」
相手は商人だと思っているリゼは、無料で荷馬車に乗れるとは考えていなかった。
「そんなの無料でいいって」
男性は笑っていたが、自分たちが警戒されていると思い自己紹介を始めた。
彼は”タイダイ”と言い、オーリスに商品を運んでいるそうだ。
後ろの女性は”カリス”、老人は”ナングウ”と名乗った。
二人は旅人で各地を巡ているそうだ。
リゼも自己紹介をして自分がランクBの冒険者だということを告げた。
「さぁさぁ、乗りなさいな」
ナングウが手招きをして、リゼを誘う。
「そうそう、おいでおいで」
カリスも上機嫌で手招きをする。
「俺的にも冒険者がいると助かるしな」
豪快に笑うタイダイを見ながら、「誰かに似ている?」と首を傾げて思い出そうとする。
しかし、荷馬車から下りてきたナングウに手を引っ張られて、半ば強引に荷馬車の中へと誘い込まれた。
「えっ!」
荷馬車の中を見たリゼは思わず声を上げた。
声を上げた理由は荷台の荷物でなく、カリスの格好だった。
体を覆う布は殆どなく、最低限を隠しているだけで肌の露出が多い。
なによりも体型が凄い。
胸は大きく、腰はくびれている。
リゼはカリスの体型が羨ましく思えた。
荷台ではナングウとカリスが永遠と酒を飲んでいた。
近くにいたリゼは匂いだけで酔っ払いそうになるので、外の空気が据える場所へ少しだけ移動をした。
ナングウとカリスはリゼと話をしたいと言ったわりに、話し掛けて来ない。
どちらかと言えば、リゼが話すのを待っている雰囲気だった。
「お二人は、どうして旅をしているんですか?」
たまらなくなったリゼはナングウとカリスの二人に質問をする。
「儂たちが育った場所は閉鎖的な土地じゃったから、外の世界を見たいと思ったんじゃ」
「そうそう、それに美味しい食べ物を食べたいし、酒もいっぱい飲みたいもんね」
楽しそうに答える二人にリゼは続けて質問をする。
「その……危険では無いんですか?」
偏見ではないが老人と女性の二人旅。
危険が多いことには間違いない。
「こう見えても儂らは強いんじゃぞ」
「そうよ」
強さ自慢をする二人だが、リゼには信じることが出来なかった。
しかし、これ以上深く聞くつもりもないので、話題を変える。
「何処に行かれるつもりなんですか?」
「目的地ね……とりあえずは無いかの」
「オーリス経由で行ったことのない場所に行くつもりよ」
「そうですか……」
リゼは自由気ままな暮らしをしている二人の旅費がどうなっているのかが、気になり始めた。
爵位の高い貴族関係者であれば、それなりに遊んで暮らすことは可能だ。
しかし、先程の質問でナングウが「閉鎖的な土地」と言ったことが気になっていた。
突然、荷馬車が止まった。
リゼは何事かと思い、外に飛び出す。
暴れる馬をタイダイが必死で宥めていた。
「どうしましたか⁈」
「急に馬が暴れ始めてね……もしかしたら、魔物に怯えているのかも知れない」
「魔物ですか!」
ここには自分しか冒険者はいない。
護衛をしているわけではないが、タイダイたちを守る必要があると思い、リゼは周囲を警戒しながら腰の小太刀に手を掛ける。
「せっかく、いい気分で飲んでいたのに何事じゃ?」
「本当よね。酔いが醒めちゃうじゃない」
ナングウとカリスが、不機嫌そうに荷台から下りて来る。
「危ないですから、荷台に戻ってください!」
リゼは緊張感がない二人に対して、荷台へ戻るように忠告する。
「大丈夫よ。それよりも……」
カリスは振り向いたリゼに、指を差して前方を注意するような仕草をする。
リゼはカリスの仕草で、急いで振り返ると馬の目の前に地面が盛り上がり、地中からワームが姿を現した。
大きさからして”リトルワーム”だ。
リゼは馬とリトルワームの間に移動して、馬を守ろうとする。
そんなリゼを気にすることもなくワームはリゼに襲い掛かってくる。
地中から見えているリトルワームの大きさは、自分と大差ない。
リトルワームの特性から、一気に襲い掛かってくるに違いないが、攻撃を避ければ後ろの馬に攻撃対象を変えるに違いない。
リゼはリトルワームの攻撃を受ける決心をする。
「お邪魔するよ」
緊張感の無いナングウが横にいたことに、リゼは驚く。
「あっ、危ないですよ!」
「おぉ、この老人の心配をしてくれるのか。優しいの~」
リゼはナングウに「そんなことを言っている場合じゃない」と言いたかったが、意識をリトルワームの攻撃に集中させていたので、話す余裕が無かった。
「【フレイムボム】」
ナングウが火系魔法でリトルワームを攻撃する。
リトルワームの口に直撃して悶絶する。
不利になったと思ったのか、リトルワームは地中に潜ろうと体を戻す。
「残念ね。そうはさせないわよ。【フレイムナックル】」
軽い身のこなしでリトルワームの横まで移動したカリスが炎を纏った拳をリトルワームに当てると、リトルワームの体を突き抜けたのか、炎がリトルワームを包む。
リトルワームが雄叫びと共に動かなくなった。
周囲はリトルワームが燃える臭いで包まれる。
「臭いのー」
「もう、飲み直しね」
何事もなかったかのように、荷台へ戻ろうとするナングウとカリス。
その様子に呆然とするリゼだったが、すぐに我に返る。
「お二人とも冒険者なんですか?」
リゼは、あまりの強さに驚き質問をする。
「いいや、違うかの」
「そうよ。冒険者なんて危険なことしないわよ」
二人とも笑っていた。
しかし今、実際に目の前で起きたことを考えれば、かなり強い冒険者以外考えられなかった。
「二人とも冒険者じゃないけど、かなり強いだろう。酒を提供する代わりに護衛をして貰っていたんだよ」
リゼの疑問にタイダイが答えてくれた。
「そうなんですか……」
腑に落ちないリゼだったが、これ以上は聞いても応えてくれないだろうと思い、納得したふりをする。
「魔石を取っていくかい?」
「えっ! でも討伐したのはカリスさんとナングウさんですよ」
「あの二人は興味が無いんだよ。この道中、俺も二人が倒した魔石で、かなり儲けさせてもらっているんだよ」
「そうなんですか……」
リゼはナングウとカリスは、かなり裕福な家柄の人たちなのだと確信する。
「では、このリトルワームの魔石はいただきます。が、この魔石の買取額で二人にお酒を御馳走させて下さい」
「律儀だね」
タイダイは笑う。
「じゃ、出発しようか」
リゼは荷台に戻ると、すでに酒を飲み始めていたナングウとカリスがいた。
二人にはリトルワームの魔石で得た通貨で酒を奢るというと、喜んでリゼの提案を受け入れてくれた。
奢る先はリゼの宿泊先である兎の宿に決定した。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:三十五』
『魔力:十八』
『力:二十二』
『防御:二十』
『魔法力:十一』
『魔力耐性:十六』
『素早さ:七十八』
『回避:四十三』
『魅力:十七』
『運:四十三』
『万能能力値:三』
■メインクエスト
・王都へ移動。期限:一年
・報酬:万能能力値(三増加)
「無事だったようだな」
「はい」
「名前は……なんていった?」
「リゼです」
「リゼ……ね」
最低限の言葉でリゼは返した。
衛兵は束になった書類から、リゼが書いた書類を探して迷宮から帰還したことを書き加えた。
「終わったから行っていいぞ」
「はい、有難う御座いました」
りぜは、軽く頭を下げて去って行く。
その後ろ姿を見ながら、衛兵は笑っていた。
オリシスの迷宮から生きて帰って来たリゼを見て嬉しかったからだ。
入る時からリゼのことは印象が強かったので覚えている。
衛兵同士の話でも、この三日間で二度ほど話題になった。
話の内容は「無事だろうか?」ということだけだ。
(疲れたな……)
迷宮から出たことで、一気に緊張感が無くなり、今まで感じていなかった疲労感がリゼの体を襲う。
しかし、地上でも魔物との遭遇はあるので、気を抜くことは出来ない。
分かってはいるが、リゼの頭の中はメインクエストの『王都へ移動』で一杯だった。
いずれは王都に行くつもりではいたが、メインクエストになったことで期限が決定した。
一年以内に移動する準備を始めなければいけない。
王都への行き方や、詳細な移動日数などなど……。
それにオーリスで御世話になった人たちとの別れが、リゼにとってはもっとも辛かった。
去って行く人たちは多くいたが、自分が去って行く側にになったことがほとんど無かったからだ。
育った村から父親と住むために、村を去ったことはあるが、実際は追い出されたと思っている。
母親の眠るあの村にも帰ることは無い……帰れないと思っているからだ。
それが領主が変わっても、リゼの思いに変化が出ることは無い。
今回のクエストで迷宮に入ったことで、自分なりの課題を明確になっていた。
一番の問題は単独での活動には限界があることだ。
睡眠一つにしても、仲間がいれば交代で見張ることが出来るし、攻撃にしても多数の魔物相手では限界がある。
分かってはいたが実際に体験してみると、他の冒険者たちがパーティーを組んでいる意味が身に染みて分かった。
自分に自信のないリゼは、自分を迎え入れてくれるパーティーなど無いと思っているし、パーティーに入っても迷惑を掛けるだけだと思っている。
単独での活動が厳しいと分かっているが、リゼは単独以外の選択肢がないのだと諦めていた。
後方から荷馬車の音がするので、リゼは少し草むらに移動しながら歩く。
自分の横を通り過ぎた荷馬車だったが、リゼの少し前で止まった。
リゼは不思議に思いながら、止まっている荷馬車の横と通り過ぎようとする。
「お嬢ちゃん、冒険者かい?」
荷馬車に乗っていた男性に声を掛けられる。
「はい、そうです」
「もしかして、オーリスに戻るのかい?」
「はい」
「俺たちもオーリスに行くから乗っていくかい?」
「えっ、でも……」
思いもよらない言葉にリゼは戸惑った。
「まぁ、荷台に酔っ払いが三人ほど乗っているが、そいつらと一緒でも良ければってことだけどな」
男性は指で後ろの荷馬車を指差すと、荷台から若い女性と老人の男性が顔を出す。
近い距離ではないが、この距離からでも二人が酔っぱらっているのが分かる。
「お嬢ちゃんも乗って行きなよ」
「そうそう、生い先短い老人に楽しい話でも聞かせてくれんかの」
陽気な二人組がリゼを誘う。
「その乗車賃が……」
相手は商人だと思っているリゼは、無料で荷馬車に乗れるとは考えていなかった。
「そんなの無料でいいって」
男性は笑っていたが、自分たちが警戒されていると思い自己紹介を始めた。
彼は”タイダイ”と言い、オーリスに商品を運んでいるそうだ。
後ろの女性は”カリス”、老人は”ナングウ”と名乗った。
二人は旅人で各地を巡ているそうだ。
リゼも自己紹介をして自分がランクBの冒険者だということを告げた。
「さぁさぁ、乗りなさいな」
ナングウが手招きをして、リゼを誘う。
「そうそう、おいでおいで」
カリスも上機嫌で手招きをする。
「俺的にも冒険者がいると助かるしな」
豪快に笑うタイダイを見ながら、「誰かに似ている?」と首を傾げて思い出そうとする。
しかし、荷馬車から下りてきたナングウに手を引っ張られて、半ば強引に荷馬車の中へと誘い込まれた。
「えっ!」
荷馬車の中を見たリゼは思わず声を上げた。
声を上げた理由は荷台の荷物でなく、カリスの格好だった。
体を覆う布は殆どなく、最低限を隠しているだけで肌の露出が多い。
なによりも体型が凄い。
胸は大きく、腰はくびれている。
リゼはカリスの体型が羨ましく思えた。
荷台ではナングウとカリスが永遠と酒を飲んでいた。
近くにいたリゼは匂いだけで酔っ払いそうになるので、外の空気が据える場所へ少しだけ移動をした。
ナングウとカリスはリゼと話をしたいと言ったわりに、話し掛けて来ない。
どちらかと言えば、リゼが話すのを待っている雰囲気だった。
「お二人は、どうして旅をしているんですか?」
たまらなくなったリゼはナングウとカリスの二人に質問をする。
「儂たちが育った場所は閉鎖的な土地じゃったから、外の世界を見たいと思ったんじゃ」
「そうそう、それに美味しい食べ物を食べたいし、酒もいっぱい飲みたいもんね」
楽しそうに答える二人にリゼは続けて質問をする。
「その……危険では無いんですか?」
偏見ではないが老人と女性の二人旅。
危険が多いことには間違いない。
「こう見えても儂らは強いんじゃぞ」
「そうよ」
強さ自慢をする二人だが、リゼには信じることが出来なかった。
しかし、これ以上深く聞くつもりもないので、話題を変える。
「何処に行かれるつもりなんですか?」
「目的地ね……とりあえずは無いかの」
「オーリス経由で行ったことのない場所に行くつもりよ」
「そうですか……」
リゼは自由気ままな暮らしをしている二人の旅費がどうなっているのかが、気になり始めた。
爵位の高い貴族関係者であれば、それなりに遊んで暮らすことは可能だ。
しかし、先程の質問でナングウが「閉鎖的な土地」と言ったことが気になっていた。
突然、荷馬車が止まった。
リゼは何事かと思い、外に飛び出す。
暴れる馬をタイダイが必死で宥めていた。
「どうしましたか⁈」
「急に馬が暴れ始めてね……もしかしたら、魔物に怯えているのかも知れない」
「魔物ですか!」
ここには自分しか冒険者はいない。
護衛をしているわけではないが、タイダイたちを守る必要があると思い、リゼは周囲を警戒しながら腰の小太刀に手を掛ける。
「せっかく、いい気分で飲んでいたのに何事じゃ?」
「本当よね。酔いが醒めちゃうじゃない」
ナングウとカリスが、不機嫌そうに荷台から下りて来る。
「危ないですから、荷台に戻ってください!」
リゼは緊張感がない二人に対して、荷台へ戻るように忠告する。
「大丈夫よ。それよりも……」
カリスは振り向いたリゼに、指を差して前方を注意するような仕草をする。
リゼはカリスの仕草で、急いで振り返ると馬の目の前に地面が盛り上がり、地中からワームが姿を現した。
大きさからして”リトルワーム”だ。
リゼは馬とリトルワームの間に移動して、馬を守ろうとする。
そんなリゼを気にすることもなくワームはリゼに襲い掛かってくる。
地中から見えているリトルワームの大きさは、自分と大差ない。
リトルワームの特性から、一気に襲い掛かってくるに違いないが、攻撃を避ければ後ろの馬に攻撃対象を変えるに違いない。
リゼはリトルワームの攻撃を受ける決心をする。
「お邪魔するよ」
緊張感の無いナングウが横にいたことに、リゼは驚く。
「あっ、危ないですよ!」
「おぉ、この老人の心配をしてくれるのか。優しいの~」
リゼはナングウに「そんなことを言っている場合じゃない」と言いたかったが、意識をリトルワームの攻撃に集中させていたので、話す余裕が無かった。
「【フレイムボム】」
ナングウが火系魔法でリトルワームを攻撃する。
リトルワームの口に直撃して悶絶する。
不利になったと思ったのか、リトルワームは地中に潜ろうと体を戻す。
「残念ね。そうはさせないわよ。【フレイムナックル】」
軽い身のこなしでリトルワームの横まで移動したカリスが炎を纏った拳をリトルワームに当てると、リトルワームの体を突き抜けたのか、炎がリトルワームを包む。
リトルワームが雄叫びと共に動かなくなった。
周囲はリトルワームが燃える臭いで包まれる。
「臭いのー」
「もう、飲み直しね」
何事もなかったかのように、荷台へ戻ろうとするナングウとカリス。
その様子に呆然とするリゼだったが、すぐに我に返る。
「お二人とも冒険者なんですか?」
リゼは、あまりの強さに驚き質問をする。
「いいや、違うかの」
「そうよ。冒険者なんて危険なことしないわよ」
二人とも笑っていた。
しかし今、実際に目の前で起きたことを考えれば、かなり強い冒険者以外考えられなかった。
「二人とも冒険者じゃないけど、かなり強いだろう。酒を提供する代わりに護衛をして貰っていたんだよ」
リゼの疑問にタイダイが答えてくれた。
「そうなんですか……」
腑に落ちないリゼだったが、これ以上は聞いても応えてくれないだろうと思い、納得したふりをする。
「魔石を取っていくかい?」
「えっ! でも討伐したのはカリスさんとナングウさんですよ」
「あの二人は興味が無いんだよ。この道中、俺も二人が倒した魔石で、かなり儲けさせてもらっているんだよ」
「そうなんですか……」
リゼはナングウとカリスは、かなり裕福な家柄の人たちなのだと確信する。
「では、このリトルワームの魔石はいただきます。が、この魔石の買取額で二人にお酒を御馳走させて下さい」
「律儀だね」
タイダイは笑う。
「じゃ、出発しようか」
リゼは荷台に戻ると、すでに酒を飲み始めていたナングウとカリスがいた。
二人にはリトルワームの魔石で得た通貨で酒を奢るというと、喜んでリゼの提案を受け入れてくれた。
奢る先はリゼの宿泊先である兎の宿に決定した。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:三十五』
『魔力:十八』
『力:二十二』
『防御:二十』
『魔法力:十一』
『魔力耐性:十六』
『素早さ:七十八』
『回避:四十三』
『魅力:十七』
『運:四十三』
『万能能力値:三』
■メインクエスト
・王都へ移動。期限:一年
・報酬:万能能力値(三増加)
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